なろうケイ

red-panda

第1話 未知なる異世界

 高校二年生の夏。 

 いつもの帰り道。

 交通事故。 

 これらの要素でだいたいの展開はわかったはずだ。

 異世界転移。

 ただ、俺の場合は一人ではなかった…・・・


 幼馴染というか腐れ縁の由美子とともに、今期のアニメはどれがおもしろいなんて他愛のないことを話し合いながら歩いていた。

 代り映えのしない日常に少し退屈している。だが、これが平和というのだろう。今ならそう思える。

 後ろの方からざわめきが聞こえる。

 なんだろう?

 気になって振り向く。

 そこには、車線を無視してこちらに猛スピードで向かってきている車がいた。

 車はもう目の前。

 気づいたときには、叫び声をあげる暇すらなかった。

 背筋がゾクっとなった瞬間。

 俺の意識は途絶えた。


 こうして、現代での人生は終了した。

 これから、由美子とともに異世界の人生を歩んでいく。

 女と異世界転移できてリア充爆発しろなんて思っている奴がいるだろう。

 正直、由美子がいて助かった部分は大きい。

 だが、俺は腐りきっている女は嫌いだ。これだけは言っておく。




 目を覚ます。

 最初に感じたことは寒いだった。

 ぼんやりとした意識の中、周りを見渡たした。

 部屋の中は石造りで鼠色だ。床には星やらよくわからない文字が書かれていて、召喚陣みたいだ。部屋は薄暗く、ろうそくの火しか光源がない。

 黒いローブを着た人たちが俺たちを召喚陣の外から囲むように立っている。フードを深くかぶっているためどんな人相かはわからない。

ただ、その中に一際目立つ存在がいた。

 赤いマントを羽織って、頭には冠を被った人間。 RPGに出てきそうな王様の格好をしている。

 隣には由美子が横たわっていた。ケガをしている様子はないし、肩が上下に動いているので生きていることは間違いない。

 俺は上着を脱いで、由美子にそっと掛ける。

 そして、転がっている通学カバンを引き寄せる。中にはスマホが入っている。スマホを持つと安心するのは現代人の性だ。


「ううん・・・・・・」

 

 由美子が目覚めたようだ。


「おはよう」


 寝起きの挨拶と言ったらこれだろう。


「うん、おはよう」


 由美子は目をこすりながら挨拶を返す。


「あれ、ここどこ?私たちって車に轢かれたよね」


「ああ」


 由美子はあたりをまじまじと見る。

 そして、口を開いた。


「あれだね」


「あれしかないだろう」


二人口を揃えて言う。


「「異世界転移だ」」

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