メークミー・サンドウィッチ
第489話 メークミー尋問開始
統一歴九十九年五月六日、昼 -
ドアが二度ノックされ「入れ」と返事をするとドアが開き、まず兵士が入り、来客の名と身分を告げてジョージ・メークミー・サンドウィッチをウンザリさせた。
「
「また、貴公らか…何度も言うが話すことは無いぞ。」
メークミーは入室してきたカエソーとセプティミウスの顔を見るなり面倒臭そうに言い放った。
「そのような態度は困りますな、サンドウィッチ様?
御自身のお立場をもう少しお考えになられた方がよろしいでしょう。
さあ、どうぞお掛けください。」
メークミーに宛がわれた部屋は
その中央に
「話を聞きたいと言うのなら私の持ち物を先に返していただこうか!?」
メークミーは立ったまま腕組みし、二人を見下ろしながら要求する。それに対してカエソーは冷静に答えた。
「武装と
「武装と魔道具もだ!
アレらは私のものだ。すぐに返して欲しい。」
ゲーマーが《レアル》に残していった
だから返却を要求すれば返してくれる。いや、返さざるを得ない…メークミーはそう思い込んでいた。
「それはできませんな。」
「何だと!?
あれら魔道具は正しき持ち主以外の者が持って良い物ではない!
大協約にそう定められているはずだ!!
サウマンディア伯爵は世界の至宝たる魔道具を不当に
「略取はいたしません。
大協約に従い、ムセイオンに直接送り届けます。」
「なっ!?」
予想外の答えにメークミーは言葉を失い、思わず腕組みを解いて、目を見開いた。メークミーの驚き様はカエソーの予想以上だった。そしてカエソーは素直に驚き返すように目を丸めると、いったい何をそんなに驚いているのかと言外に滲ませながら続ける。
「大協約によれば、聖貴族ではない者が入手した魔道具はムセイオンに送り届けるよう定められております。正規の手続きですが、何か問題でも?」
「問題だ!問題だらけだ!!
持ち主が目の前に居るのだぞ!?私だ!私が持ち主だ!!
持ち主に直接返すのが筋ではないか!?」
信じられない…そう言うように両手を振りかざし、メークミーは立ったまま訴える。が、椅子に座ったままカエソーは小さく首を振って答えた。
「残念ながら貴殿は大協約に反し、ムセイオンから脱走した上に降臨を起こそうとした容疑がかけられております。
大協約に反した者に魔道具を渡すことは出来ません。」
目を見開き、口をあんぐりと開けて無言のまま一、二秒カエソーを見つめたメークミーは首を小さく振りながら口をパクパクさせ、そしてガバッと目の前の、メークミーが座るために用意されていた寝椅子の背もたれに両手を突いて身を乗り出した。
「待て!待て待て待て!
そんな条文知らないぞ!?
いや、そんな条文あるもんか!!
私は大協約は習ったんだ!」
「サンドウィッチ様、確かに大協約にそのような文言はありません。
ですが、必ず持ち主に直接返さなければならないと言う規定もありません。
『許可を得た正しい持ち主が持たねばならない』というのと『許可なき者が入手した魔道具はムセイオンに提出しなければならない』というのがあるだけです。」
「な、なら私に返すだけで済む話ではないか!!
持ち主が目の前に居るのだぞ!?
わざわざ手間暇かけてムセイオンに送る必要がどこにある!?」
「サンドウィッチ様、大協約は降臨の阻止を最大の責務としております。
御忘れですか?」
「し、知ってるさ、それくらい!!」
「最初に言ったでしょう?
御自身のお立場をもう少しお考えになられた方が良いと…そして、貴殿には降臨を引き起こそうとした容疑がかけられていると。
貴殿にあれらをお返しすれば貴殿は降臨を引き起こそうとするかもしれない。
だから、私共は大協約の要求する責務を果たすため、貴殿にあれらをお返しすることが出来ないのです。」
メークミーは背もたれに手をついて乗り出していた上体をバッ引き起こすと、両手で頭を抱えた。
「そんな!!
アレは御爺様の形見なんだぞ!?
返してくれ!返してくれないと困る!!」
目に涙を浮かべ、両手を突き出すように懇願するメークミーにカエソーは呆れたようにため息をつき、首を振った。
「我々に大協約に反することは出来ません。
ともかく、あれらはムセイオンにお送りしますので、返してほしければムセイオンで手続きをおとりになられることですな。」
カエソーがあえてメークミーから目を逸らしてそう言うと、ずっと黙っていたセプティミウスが横から口を挟んだ。
「ご安心ください。
貴殿の事もムセイオンにお送りしますよ。
ただし、魔道具とは別の便でお送りすることになりますが…」
それを聞くとメークミーは言葉を失い、またもや口をパクパクさせた後でガバッと寝椅子の背もたれに掴みかかり前のめりになるとセプティミウスに罵声を浴びせた。
「ゴ、ゴブリンが生意気な!!」
セプティミウスは何でもないと言うように無言のまま眉を持ち上げ、上体を背もたれに預けてわずかにふんぞり返って見せた。同時にカエソーがメークミーに向き直り落ち着いた口調で
「彼はホブゴブリンです、サンドウィッチ様。」
「う、うるさい!大して変わんないだろ!?
亜人の分際で人間に、しかも聖貴族に対してそんな口を!!」
バンッ!
カエソーがテーブルを叩いてメークミーを黙らせる。
「…な、何だよ?」
あまりの気迫に
「サンドウィッチ様、我がレーマ帝国では種族の違いは身分に影響しません。
平等です。
異種族を不当に
そしてそれは、ムセイオンでも同様の筈ですが?」
メークミーの実年齢はカエソーよりもカエソーの父親であるプブリウスの方に近くずっと年上だ。だが
「その…それは…うん、すまなかった。」
てっきりこのまま激昂するかと想像していたカエソーとセプティミウスは表情には出さなかったが、あっさりと素直に大人しくなったメークミーに驚いていた。が、そんなことを表に出さずに利用するのが大人のやり方である。自分たちはまだ許してないぞという
「では、お座りいただいてお話を伺いましょうか?」
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