第9話
ミソスクのメンバーが協会を出ていったのを見て、大きくため息をつく。
彼らが残していった報告は間違いないのだろう。だが、その内容が不穏すぎる。
もう何度目を通したか分からないそれをもう一度読み直すが、当然のごとく内容は変わらない。
「先ほどの『
「ああ。気になるなら読んでみると良い」
「では、お言葉に甘えて」
秘書のリズは滅多に変えることのない落ち着いた表情を、報告書を一行読むごとに崩していく。
「これ、本当なんでしょうか」
「そこら辺の冒険者がする報告書ならまだしも『先見』の報告書だ。間違いないのは、きみもよく知っているだろ」
リズは押し黙ってしまう。彼女はミソスクの名が轟くことになった始まりの事件を担当した職員だ。以降もその活躍を耳にし続けてここまで昇進してきたのだから、あの男の見通す力については嫌というほど分かるのだろう。
「協会長、失礼を承知でお尋ねしたいのですが……」
「リズの言いたいことは分かる。だが、『先見』がああ言ったんだ。間違いないだろう」
ダンジョンに日夜挑み続け、ダンジョンの魔力を吸収し続けているあいつらと、もう何年もダンジョンに潜っていない俺では身体能力の差は歴然だ。さらに言うのなら、あのパーティーは上級を超えた超級パーティー。それが少しは苦戦したというダンジョンの調査に、しかも、メンバーを貸せるなら貸したいとまで言ったものに、中級3つと上級1つとはどういうことなのだろうか。
「無事に戻ってきますよね?」
恐る恐るといったリズの声に、ゆっくりと頷いて、自分にも言い聞かせるように言葉を紡ぐ。
「『先見』が読み違えることはないんだ。それに、報告書の通りなら、実験の結果生まれたであろう一番厄介な魔物は、すでに仕留め終わっているんだ」
「実験があったってことは疑わないんですね……。それも『先見』の言葉だからですか?」
「いや、冒険者時代にそういう施設を見たことがあってな。まあ、ダンジョンが従来の社会システムを破壊して、生活や各国の国力に直結してるんだ。そういう話が出てくるのもおかしな話じゃない」
もっとも、俺がその施設を目撃したのは、皇国ではなくこの国でなのだが。
「そう、ですか……」
「まあ、こういうダンジョンの暗黒面に触れることもある。ダンジョンの魔力を吸収しやすい異世界人を召喚するなんて話もあったくらいだ」
「そんなことが……」
それでも、恩恵の多さというのは分かっているだろ、と軽く口止めをして、協会長室を後にする。
友人のパーティーにお情けで入れてもらっただけなのに、巷では最強と謳われていた件 夜依 @depend_on_night
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