地上への帰郷

布団カバー

地上への帰郷


対隕石用砲台が見えて来て、長い宇宙生活の終わりを感じる。

20代からずっと宇宙で生きていた俺が地上暮らしを始めようと決めたのつい先日。

俺はある日に昔の映画で地上で隠居生活をするシーンを見てから今まで考えていなかった地上での生活を想像するようになった。

それからはあっという間で宇宙生活から地上生活へ移ったときのリスク対策に関して調べたり、旅行で見てみたい場所を探したりとその準備も楽しく充実していた。

どの星にするかは迷ったが、結局「地球」にした。

人類発祥の地だが今ではあまり人がいない寂れた星である。

しかし、俺は発祥の地というのが気になったので、その星に決めた。

宇宙船が砲台を通り過ぎ地表へ降下する中、俺は外の景色を見る。

そこには緑に包まれた廃墟と居住区の町という荒廃と繁栄の二面性がある光景が見えた。

俺はその光景に心を奪われた。

地球関連のグッズやお土産品がある港に出ると商業施設が建ち並ぶ商店街があり、その先は静かな住宅街があった。

どの住宅も一戸建てであり、宇宙ではよく見かける実用性重視の大量生産マンションとは違ってそれぞれの家に趣向や生活感が感じられ見ているだけで楽しめた。

周囲の散歩を満足した後、自分がこれから住む我が城へ赴いた。

我が家は事前にVRで下見をしていたため外見や内装は分かっていたが、実際に現地に来て見て感じるのは別格に良く思えた。

家に入って荷物が指定された配置あるのか、念のために確認して終わるとお茶を入れて一息ついた。

そして家の温度、重力などを操作し地上用スーツを脱いだ。

長い宇宙生活は俺の体は変化させ、スーツなしでは調節されていない地球の環境は死に直結する。

生まれてずっと地上で生きてきた人たちはどのようにこの星を感じて生きているのだろうかと疑問に思う。

環境はもちろん価値観も異なる。

おそらくまったく違う感じ方をしているのだろう。

そんな事を考えているとチャイムがなった。

我が家の初客人は町の管理ロボットだった。

「ようこそ地球へ。あなたは宇宙生活が長いと聞いています。

なので、安全のために子機を置いておきます。

なにかあればすぐにご連絡を。わからないやお願い事もこちらへ言ってください。

では、良い生活を」

「ありがとう。なにかあったら連絡するよ」

「どういたしまして。それでは失礼いたします」

ロボットは礼儀正しい一礼して出ていった。

もらった子機を見てみる。

さっきほどのロボットをそのまま小さくした言葉通りの子機だった。

子機はこちらを見てじっとしている。

「君は名前はあるのか?」

「私は親機共々ジェントルマンと呼ばれています。どう呼んで頂いてもかまいません」

「それじゃあジェントルマンと呼ぶよ。よろしく」

「こちらこそよろしくお願いいたします」

同居人に挨拶してから軽く食事を摂った。

俺は新しいことだらけで今日は疲れたので、きょうは早めに寝ることにした。

布団に入って天井を見ると見慣れない木の天井で違和感を感じたが、気分は良かった。

今までの数十年変わらなかった生活とそして今後ある新しい生活を考えて思い巡らし目を閉じる。

終わり

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