村人転生~最強のスローライフ番外編

タカハシあん

サプル編第1話 あらまあ、転生ですか

 あらまあ、転生ですか。


 ……驚いているようで全然驚いてないね。


 そうですね。そう言う話は溢れてましたから今さらでしょう。


 ……いや、創作物と一緒にされても困るのですが……まあ、理解してもらえるのなら幸いです。


 まあ、事故の瞬間も走馬灯も見ましたしね、自分が死んだのは嫌でもわかりますよ。


 ……君もあっさりしてるね。


 そうですか? まあ、短いとは言え、そんな大した人生じゃなかったし、悲しむ人もいませんから。


 ……君を育ててくれた人や友達は悲しむよ。


 そう言われてしまうとなにも返せませんが、人はいつか死ぬもの。そして慣れて行くもの。時間が解決してくれますよ。


 自分も家族が死んだときは悲しかったけど、生きてるうちに段々と慣れてきたもの。皆もそうなるわ。


 ……まあ、人それぞれだけどね。


 そうね。確かに人それぞれね。私がたんに淡白なだけね。


 ……君が自分の死をどう思おうと、君の死はこちらの過失。責任は取らないとね。


 律儀ですね。誰も知らないんだから事故死で片付ければいいじゃないですか。


 ……そうもいかない事情がいろいろあるんですよ。こちらにも。


 そうですか。大変ですね。


 ……同情されたのは初めてですよ。まあ、それより貴女には償いとして三つの能力を進呈します。


 三つの能力ですか。随分と大盤振る舞いですね。たかが人間の死ぐらいで。


 ……たかが人間。されど人間。いろいろとあるのですよ。


 そうですか。大変なんですね、そちらも。頑張って下さい。


 …………。


 どうかしましたか?


 ……いえ、なんでもありません。それで、どんな能力にしますか?


 その前に転生する世界はどんなところなんですか?


 ……魔法や魔術が発展した世界で、貴女がいた世界よりは未発達な世界ですね。


 所謂、剣と魔法の世界ですか。テンプレですね。


 ……まあ、貴女の世界ではそうでもその世界は現実。それをちゃんと理解しておかないと大変ですよ。


 まあ、どんな世界だろうと生きるのは大変。過度な期待はしませんよ。


 ……それで、どうしますか?


 三つの能力じゃなく、生まれる環境の選択、と言うのは可能なんですか?


 ……そうだね。転生先はあちらが決めることですが、ある程度、なら可能です。曖昧なのは許して下さい。あちらの摂理に干渉するのは難しいので。


 いえ、無理を言ってすみません。たんに、私を守ってくれる家に生まれたかっただけですから。


 家族の死に慣れたらとは言え、やはり家族の死は辛いし、忘れられない悲しみだ。それに、剣と魔法の世界で生きて行く自信など私にはない。なにより、お風呂とかトイレとかないなんて生活なんてイヤすぎる。王様とか貴族とは言わないけど、普通の家で普通の生活ができるところに生まれたいわ。


 ……たぶん、になるけど、その願いは叶えられるかもしれないね。ただ、それだけだと弱いのであちらに干渉させる能力を付けないとならないね。


 干渉、ですか? 能力で?


 ……そう。あちらが君の願いに干渉させるために、ね。


 さっぱりわからないのですが?


 ……君の世界で言うところのチートを選べばあちらが干渉するかもしれないよ。あちらはそう言うのを一ヶ所に纏めてしまう傾向があるからね。


 よくわかりませんが、チートですか。なににしましょう……。


 冒険とか魔王退治とかはやりたくないし、波瀾万丈など結構です。平々凡々がなによりだわ。でもまあ、なにがあるかわからないのが世の常。ないよりはあった方が良いか。使わなくて済むなら使わなければいいだけだしね。


 では、あらゆる才能の成長率を人の十倍上げて下さい。


 ……随分とおもしろいこと願うね。でも、十倍では低いから五十倍にした方が良いよ。


 そうですか? ならそれで。


 三つ目は、幸運値を高く、でも高すぎない幸運をつけてください。


 ……ふふ。君はおもしろいね。わかった。叶えましょう。


 いろいろ無理を言ってすみませんでした。


 ……いや、君の願いは簡単で助かたよ。まあ、彼には申し訳ないがね。


 彼?


 ……いや、こちらのことさ。では、転生させるよ。


 はい。お願いします。


 ……よき来世を。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る