トークオブトリップ -信頼できない語り手のTRPG-
水白 建人
序章
第1話
多くの物語において超越的な存在として描かれる神様すら
擬態や鳴きまねをする動物など言うに及ばず、もしかすると北欧の
だからこそだ。その物語を動かせる最後の生存者として、
「
「《言いくるめ》は交渉技能です。よって自分自身には使えません」
教室の机に両肘をついた小6女子がしらけたようなまなざしを真向かいの僕に注ぐ。
薄紅がかった黒い長髪をたくわえた、いやに
「キーパーとはなんぞや?」という人には
「でもほら、生きてる
「SANチェックの時間よ。10面ダイスを取りなさい」
「ままま待ってくれ。僕は極めて真面目に探索していたわけで、不用心なことはなにもしてないのに引き出しを開けただけでとんでも
「ドラえもんだって引き出しから出てきたじゃない。いったいなにが気に入らないのかしら」
「名作を盾に取るな! 反論しづらいだろ!」
過激派ファンにアンチ認定でもされてみろ。PCより先に
――さて、不平を鳴らすのはこのぐらいにして現在の状況を語ろう。
僕はゲームクラブ顧問の
しかし、出てくる敵やトラップが
(SANチェック……成功率26%とか低いなあ)
僕は圧倒的権限で殴ってくるキーパーに観念して、アクリル製の10面ダイスふたつを机に放る。かっから転がり、上向いたのは『60』と『3』で、数値に直すと『63』。26%を超えているので、残念ながらSANチェックもとい《正気度》ロールは悪い方向に処理されることとなってしまった。
当てようとしても当たらない。4分の1の確率なんてしょせん、こんなもんさ。
「次は正気度の減少値を求めなさい。ため息をつかなくてもいいのよ? 同じダイスで26未満を出せばかろうじて生き残れるのだから」
「あいにくだが79だぞ」
「そう。残念ね」
すると桜花は対岸の火事を
『――いかなる切り札をやつは隠したのだ? 捨て置かれた反乱軍のアジト、その一室を物色するパラメキアは、さびついたその引き出しに手をかけ、しかして目を奪われた』
僕のPCに降りかかった災厄をキーパーとして語り始めた。
『――
『なッ……ああ!?』
僕はゲームの決まりに従い、いかにもPCらしい
『――それは渦を成し、闇を吐き、音階なき
『なんだ!? なに、がァ……!?』
『――邪神の息吹が。
『うぼあああァァ…………!』
「――正気度がゼロになりました。永久的発狂につき
人の不運をせせら笑うかのように、桜花は淡々とゲームセットを告げる。セッションが始まってからわずか1時間後の出来事だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます