29.小休止二
「
「いえ、
立ち上がりかけた
それでも、木立の間からがさがさと葉っぱを踏みしめる音が響いてきて、そこに
「
森を染める闇の中から、
「そうですね……葉の細い木は火付きは良いですが、
「なるほど。葉の広い木ですか。」
途切れの無くがさりと葉の擦れる音がして、
「
「ほうほう。まあ、落ちている枝が何の木であるかなど、私には分かりかねますが。」
「私も良く分かりません。」
相手の姿が見えないせいか、それが
「こちらから
どこに向かって言うでもなく
「なるほど……それは面白いですねえ。私からは
「そりゃそうでしょうけれどね。」
「ただ、そう言うことで言えば
「しょうじょう、ですか?いえ、存じないですが。」
「そうですか。
「へえ……。」
と、軽く頷いた後、
「なぜ今そのような話を……。」
「いえね。ちょっと……。」
くすくすと小さな笑い声がした。
その声がどこか闇の中で妙に響くように聞こえて、
「あのう、
微かに
瞬刻、周囲は酷く静かになって、
慌てて周囲を見渡すが、焚火の灯りのせいか近くの木々の姿は良く見えても、遠くに何があるのか分からなくなってしまい、歩んできた道筋すらも真っ暗に見えて、
ふるりと
不意に、がさりと林の中から物音が響いてきて、びくりと大きく体を跳ねさせると、慌てて音のした方向へと体を向ける。
やにわに
腕にはそれなりに太い枝を幾つも抱えながらも、軽々と
「おや、
へなへなと疲れた様子で項垂れた
眉を八の字にしな垂れさせて首を振るうと、
「
「怖かったですか?」
気楽な声で尋ねる
「怖いですよ。言ってしまえば、今でも誰か襲ってこないか怖いです。」
「そうでございましたか。いやはや、楽しうございました。」
「もしかして、わざとやりました?」
「ええ。ちょっと
くすりと笑いながら、
数秒ほど、新しい木に遮られて火が弱くなったが、しばらくするうちにパチパチと音を立てて中へと入れた枝に火が移り始めていった。
「……
「よく言われますよ。」
腕に抱えていた枝を地面に置くと、
二人の間に赤々とした炎を立ち上らせながら、
揺らめく炎の先端は常に形を変えて面白く、それを飽きずにじいっと見つめていた
「あの……そう言えば
いきなりの問いに、
「はて……なんのことでしょうか?」
「襲ってきた男達中で、最後に残った男、あの髭面の男が最後に
そう尋ねる
額を軽く掻きながら
心当たりはあったが、目の前にいる彼女に対して、それがなんであるかを言うつもりはなかった。
どうせ僅か数日、たったそれだけ一緒に居る間柄であろう相手に、自分のことを深く教える心積もりが
目を瞑って、軽く首を振るって見せる。
「さあて、私は何も知りませんよ。あのお方が何か勝手に勘違いして仰ったことなのではありませんか。」
素知らぬ顔をして
その代わりにと、
「それで、いつまでここで休むんですか?」
「しばらく休みますよ。差し当たっては日が開けるくらいまででしょうか。ですから
そう言いながら
灰となった木片が崩れ落ちて、中から赤い火の粉が飛び出すと、一層に火の勢いが強まっていく。
言われた方の
「いえ、そんな寝れませんよ。あんなことがあったのに……もし寝ている間に襲われたら……。」
自分で言いながら寝ている間に殺されるところを想像したのだろうか、
やれやれと
「寝ている間は私が守りますから大丈夫でございますよ。それよりも
「いや、それは……。」
言い淀んで
「信用できないと言えば、ちょっと信用できませんが……
言っている言葉の意味が良く分からずに
「それはどういう意味でしょう?ちょっと意味が分からないのですが。」
ちょっと言いにくいかのように、もじもじと掌を重ね合わせて
「あの……
思わず
「またそういうことを、私は
ひらひらと掌を軽く振るって言って見せると、それでも
「本当ですか?」
「ええ、本当ですよ。約束いたします。何なら指切りでも致しましょうか?」
「指切は良いですけれど。約束ですよ。」
ええ、と
「まあ寝ませんけれど……。」
最後にそう呟いて
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