27.対峙九
不意に、もぞりと唇の狭間へ、ぬめりとした酷く熱を持った何かが触れるのを
柔くぬめりとしたその感触に、
「え……?」
何故そのようなものをと思い、戸惑って言葉が漏れるとともに、小さく開いた唇の隙間へと、するりと
「あっ……。」
ぬるりとして唇以上に柔い肉の塊が
ぞくりと背中に痺れのようなものが走るのを感じて、ふるりと
「ふぁ……。駄目です……。」
口を吸われた時ですら、感じたことのないほどに気持ち良かったのに、それ以上の心地好さを感じて
きゅうっと指先を握りしめ、咄嗟に
舌腹のざらざらとした
するすると二人の舌先が触れあった。
おずおずと
滑らかな、舌の
「んんぅっん……。」
堪えきれず、びくりと体を跳ねさせて
頬は既に真っ赤に染まり、目端には涙がにじみ始めて、堪えきれずにとろりと
きゅうっと
もう立って居られない――
と、
絡みついていた舌はするすると強く擦り合いながら、ついっと唾液の糸を引いて離れていく。
蜘蛛の巣に絡まった滴のように、垂れた綺麗なその糸を
「
ゆるりと笑みを浮かべて
目を細めて
「はう……。」
「
どこか
「い、いえっ。大丈夫です……立てますから。」
「なれば良いです。」
しっかりと
そのするりと掌が離れていく感触に、なぜだか物惜しい感じがして、すっと
何故そんなことをしようとしたのか、自分で困惑しながら、
べっとりと粘り気の強い唾液が指先へと絡みついた。もう口元は唾液塗れになってしまっていて、それに気が付いた
「もう、口の周りがべとべとです……。」
軽く
「それでも、痛くはありませんでしたでしょう?」
言いながら
何をするつもりなのかと眺めながら、
「痛くは……それは確かに、痛くはなかったですが、何なのでしょうか。変な感覚が体に走りました。痺れるような、切ないような、お腹の奥が疼く感じがして……。」
指先を伸ばして
そこが何故だか熱く甘く痺れている感じがしてしまう。
「心地好いというのですよ、それは。」
その言葉に
「心地好い……のですか?これが……なんだかそわそわして妙に胸が急く感じがしましたが。」
「ええ。心地好い、ですよ。その感触は。なに、そのうち病みつきになります。」
自分の感じたものが、心地好さと言われて
こういうことは、好きな相手とでなくては気持ち悪いだけと友人から教えられていたことが頭をよぎっていく。それなのに自分は、
と言うことはと、
自分は彼女のことを好いているのだろうか、そう思ってしまうと、
「あのっ……私は
「はぁっ?」
一体何を言っているのかと、正気を疑うかのような眼差しを浮かべている。その表情があまりにも呆れかえって見えるので、
「
「いえ、その……友人にこういうことは好きな相手とやらなければ気持ち良くないと……。
「
「え……えっと。」
真面目に尋ねたつもりの
一方で
「ふふ……
「いえ……いままでそう言う覚えは。」
「では、今
斬られた髭男の胸元を弄っていたかと思うと、
じゃらりとした音から、それが銭袋だということは明らかだった。
「
「それは良いことなんでしょうか?」
「どうでしょうかね。これだけ金をかけたということは、まだ追手が来る可能性もございますし、これで金が尽きて、もう追手は来ない可能性もございます。」
「じゃあ、まだ、追手が来るかも……って言うことですか?」
「ええ。もしかしたら。来るかもしれませんね。」
草原に風が流れて草がさわさわと音を立てた。
その中のどこに人が居ても不思議ではなかったし、遠く広がる闇夜の中に潜んでいる追手がいるようにも思えて、途端に
「まあ、そう殊更に気構えても仕方ありますまい。たとい、追手が居たとしても追い付かれぬようにすれば良いことです。さっさと先に行ってしまいましょう。」
気軽にそう言って、
「あの……そういえばなんですが……。」
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