26.対峙八
「え……?口を?何ですか?」
言葉の意味するところが全くに理解できず、
「口を、吸うのですよ。吸わせていただけませんか?」
「口を吸う……んですか?どうしてそんなことを。」
「どうしてと……
「
やにわに
その態度に
「おや、まさか
感心した口調で言う
「いや……あの……うあぅ……。」
余りの恥じらいで
「
「数えで十五を越えました……。」
「十五を越えて
「えっと……その……やっぱり、この歳で
「いえ、そんなことはございませぬよ。いやはや、むしろ良いというものですよ。いや、宜しい。」
酷く嬉しそうに言う
「駄目なら駄目と言っていただいた方が気が楽です……。」
「なに、
ふふっと声を上げて、
その表情は屈託がなくって、まるで童が遊びを知ったときかのような酷く
ただそれは、
「しかし……そうも笑われては嫌な気持ちにもなります。」
口を拗ねらせて
「笑ってはおりませぬよ。ただ嬉しいだけです。男を知らぬのなど私からすれば素敵なものですよ。穢れておらぬということでしょう。」
「物知らずと言われてる気しかしませんが。その……口を吸うなどと言うのも良く知りませんし……。」
「まあ、なに難しいことではありません。単に唇を吸うだけでございますよ。口の中を舐めたりもしますが。」
「舐め……!?な、なぜそのようなことを?」
「心地好いからですよ。それはねえ。
交合の前準備と言う言葉に、
「交合の前準備って……あのそれは、
それは単純な疑問であった。
初心である
実際に見たと言うわけでもなかったが、そういうものだと聞かされてきた。好いた男とまぐわうのは心地好いと友人から教えられもした。一方で好きでもない者とするのは苦痛でしかないとも教えられ、この世界に生きていくならば、そう言う目にも合うだろうと、憐れみの目でもって言われもした。
だからこそ、女同士で交合をするものなどと聞いたこともなく、それが気持ち良いのだというのも信じられず、なによりどうやってするのだと言うのも全く想像がつかなかった。
「私はね。
「そ、そう言うものなのですか……。」
力強くそう言った
「なにより
そう
「だから、
甘い声で問いながら、そっと
するりと頬を撫でて徐に
徐々に、徐々に、と近づいていく顔に
「うぁ……。」
余りに
月の明かりに照らされた
ぎゅっと手を握りしめて、
「あ……あの、それは痛くありませんか?」
「傷つけぬようには致しますがね。もし
「い、いえっ。痛くないのなら……。
身を投げ捨てる思いで
好きでもない相手とするのは苦痛でしかないとも言い説かれていたが、傷がつかぬのなら別に良いとも思えた。なによりも、ここまで命を助けてくれた
言葉を聞いた
受け入れられると思っていなかったのか、一瞬目を軽く見開いて、
「そうですか。そうですか……それは嬉しうございます。」
そう言った
背中を包んでいた手をするりと放すと、
「顔を上げて下さい。」
促されるままに
薄っすらと
仄かに桜色をした
「んくっ……。」
唇に酷く柔らかいものが触れる感触に驚いて、
それは想像していた以上に余りにも柔らかく、そして温かで厭らしかった。
僅かに口の端が荒れていて、ささくれ立っている所はあったが、それでも驚くほどに心地よい感触だった。
微かに震えて快感に痺れた
下唇へとちゅうっと吸いあげて、軽く唾液の交わる音を立てる。
口の中へと吸い込まれた肌は、緩くはむりと唇に挟み込まれる。
ぴくりと
途端、腰へと
「あふっ……ふぁ……。」
小さな吐息が
全身を温かくそして優しく抱かれて、唇の快感だけでは無い奇妙な安堵感を感じてしまい、柔和に包まれていく感触に、次第と
はむっと
喉に溢れる唾液に溺れそうになり
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