第28話 血
……数分後、水月の間……
「2人、起きないね……。」
「で、どれくらい吸ったの?」
「これくらい。」
「全然多くないじゃない。」
「そうだよ、ちゃんと加減したもん。」
「ご、ごめんってば💦勘違いしてごめんね💦」
香錬はふてくされ続ける。
「💦」
「こいつ、貧血なのか?」
「いいえ、普通よ。」
「じゃあおかしい、それぐらいで死に掛けるはずがない。」
「何処か、怪我してるとか?」
「血の匂い、しな……ちょっとだけする?」
「何処ら辺だ?」
「え~と―――」
香錬は仰向けで布団の中で眠ってる夏雅璃弥に近付き、布団を捲る。舞姫達も近寄り、見守る。
「……ここ?」
香錬が夏雅璃弥の右脇腹を軽く突けば夏雅璃弥の顔が苦痛で歪む。
「ビンゴ。」
「傷の具合、見てみるか……。」
孔醒は夏雅璃弥のTシャツの裾をゆっくりと捲る。そこにはズボンの継ぎ目から上へ15㎝くらいまで赤く滲んだ包帯が肌着越しに見えた。
「「「!?」」」
「れ、麗菜……。念の為に夏雅璃弥抑えてろ。」
麗菜は能力で黒い触手を出現させ、夏雅璃弥の両足と両手、包帯よりちょっと上を拘束し、布団に縫い付ける。
孔醒は肌着を捲り、包帯を解き始めるがなかなか解けない。
「こいつ、きつく巻いてるな……💢」
「しかも一重ぐらいじゃなさそうよ?」
翠は白い猫耳、尻尾の猫娘姿になり、人差し指の爪を細く、長く伸ばして少し包帯を切る。
「ありがとう。」
孔醒はそのまま包帯を解いていくも解いても解いてもきりがない。
「どんだけ巻いてんだよ……💢」
「いっそ、全部切っちゃう?」
「そっちの方が早いな。」
翠は慎重に包帯を切って行く。しばらくすると包帯の血が黒ずんでいた。
「酸化してる……。」
「どれくらい前の傷なのよ💧」
「……!?」
翠は包帯を全て切り終える。そこには剣か何かで深く抉られたバッテン傷があった。
「「「……!?」」」
「何だこれ……!?」
「酷い……。」
麗菜、櫂麻、渓御は口を塞ぎ、涙を流す。
「お、おい……。こ、これ、何だ?」
朴滋は傷口から見える、白くて丸い円柱を切断されたような物を指差す。
「人体の構成物で白いのは「骨だけ……。」
「こ、これで生きてるのか……!?」
「化け物か……!?」
「止血だけ……。」
櫂麻と渓御、由優は傷口に手を向け、回復魔法を唱え続けるも夏雅璃弥の顔が苦痛で歪み続け、少し藻搔く。
「うっ、ぐっ……!!」
「回復魔法が、痛い……?」
「どんだけ深いんだよ……!?」
夏雅璃弥がゆっくりと目を開ける。
「夏雅璃弥!」
「孔、醒……?どうした……。化け物でも見たような顔し……!?なっ……!?ま、まさか―――」
夏雅璃弥は何とかして右脇腹を見る。巻いていた包帯が解かれ、大きなバッテン傷が顕わになっていた。
「お前等、無理矢理解いたな……!?辞めろ、今直ぐ隠、せ……」
夏雅璃弥は触手を壊そうと力んだが、傷が酷くなり、力が抜ける。
「お、おい!!」
「はぁ……はぁ……。」
夏雅璃弥は少し目を閉じ、口元から少量の血を渡しながら息切れをする。
「ああ、クソ……。隠し通すつもり、だったのに……。何で、気付いた……。」
「その前にこの傷は何だ!!いつ、何処で、誰にやられた!?」
「……ふっ、そんな物答えてやる意味は「2日前。格技室。……
「なっ……」
夏雅璃弥は無意識に力を入れてしまい、目眩に襲われる。
「お、おい……?」
九尾姿で右眼の横に刺青の稲妻がある雷神の力を纏った状態で眠っている真梛羅が寝返りを打ち、夏雅璃弥の左腕にくっ付く。
「真梛羅……?一体何―――」
夏雅璃弥の体に電気が走り、完全に力が抜ける。
「いっ、てぇ……。っ……クソ……。体が、動かねぇ……。」
「感電させられたわね💧」
「どうした?」
「痛くない、感覚がない……。」
「どんだけ強くしたのよ💧」
真梛羅は少し強く腕に抱き付き、尻尾で夏雅璃弥の頬を撫でれば夏雅璃弥の目が黒く陰り、全体的に弛緩し、酷くぼーっとしてしまう。
「お、おい!?しっかりしろ!!」
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