子どもを消した君

 いつしかひとりだった。

 置いてかれた。懐かしくなって君の子どもを探しに行ったけど見つからなかったから、君に聞いたんだ。そしたらあんな黒歴史はもう消したって君はからから笑った。なんだか寂しくなってもう消えてしまった君の子どもを泳いで探したんだけど見つからなかった。どこにいるんだろう。君の頭蓋にいるだろうけどもう会えない。

 ぼくは作っては作っては海に流しているけど、かつてぼくの隣にいた君もみんなも気づいた時にはいなくなっていた。それでもひとりで作った。

 楽しそうな笑い声。

 からからからから。

 からからからから。

 みんなは忘れたのだろうか。もういなくなって忘れてしまっても生きている。不思議。ぼくにはできないこと。

 そういえばノートを開いたら君の子どもの残骸を見つけた。ぼくの子どもの残骸もあった。君はもう忘れてしまったのだろうか。君とぼくとで坂を登りながら話したここではない向こうの話。君の子どもの話。ぼくの子どもの話。彼らは見えなかったけど確かにいて、ぼくと君と、大切な子どもだった。

 君の子どもは消えた。君が消した。君の頭蓋の中にいるというなら、もう一度会わせて欲しいけどきっとそうはならないって気がしている。いつかそれだって消える。

 君に久しぶりに会ったらゲームの話をしてくれた。楽しそうにからから笑った君は子どもの話はもうしてくれなかった。でもぼくは、海に子どもを流しながら時々君の子どものことを思い出して、また君が隣にいてくれることを願っている。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る