第46話 現在最も有効な通信制高校ガイド

あなたのお子さんには通信制高校が合っている!! 通信制高校のお得なところ

山口教雄 著 河西哲郎 イラスト 学びリンク 刊 2018年2月


通信制高校という「可能性」に注目する時は・・・


 かつて通信制高校と言えば、勤労青少年の学ぶ場所の一つとして認識されていた。 普段は仕事で学校に通えないが、日曜にはスクーリングが行われていて・・・

そんなイメージだった。それは確かに、今から30年ほど前まではそれで間違いでもなかった。


 しかしその頃から、大検が普及し、通信制高校と大検を併用することで大学受験資格を早期に得られることを提唱する人たちが出てきた。それまであまり着目されておらず、関連書籍もほとんどなかった「高校転編入」の情報が、この頃になって、ようやく一部の識者によってまとめられ、広く公表されるようになってきたのである。

 高校中退者や全日制高校などになじまないで不登校や成績不振などになっている若者たちやその両親はじめ保護者達への新たな道への第一歩を、これらの埋もれていた「情報」が、後押しするようになってきた。もともとは、大検も通信制高校も定時制高校も、ともに勤労青少年のための制度であった(大検だけはやや性格が異なるが)。だが、登校拒否(現在の不登校)、高校中退、引きこもり、いじめ、等々、様々な教育問題との絡みで、これらの制度は、否応なく、変貌を遂げざるを得なくなった。まずは大検が、あるドラマをきっかけに普及し、定時制高校もまた、高校受験に失敗した者や中退者、そして不登校を経験した青少年たちの受け皿の一つとして認識されるようになった。

 通信制高校もまた、定時制高校同様、いやそれ以上に、通学の柔軟さが幸いしたためか、これらの問題で社会からスポイルされかけた青少年たちの救済の場として脚光を浴び始めた。しかも、定時制高校と通信制高校の最低修業年限が4年から3年に短縮されたのを機に、通信制高校は、その柔軟性を注目されてか、ますますの躍進を遂げた。従来ながらの通信制高校ばかりでなく、株式会社立の通信制高校(中には元大検予備校として有名だったところもある)や高校のサポート校としての役目を持つ塾や家庭教師会社なども含めて、通信制高校の在籍者は、現在では定時制高校の倍近くにまで伸びている。そしてその存在感は、全日制の高校の経営者にとっても無視できない存在となりつつある。


 通信制高校は、全日制高校や定時制高校のような、「進級・卒業」をベースとせず、基本的に単位制をとっている。小学校や中学校のような硬直した「クラス制」ではない。その気になれば、高認との併用で難関大学受験のための「足場」的にも使える。自らの手で、通信制高校を「究極の進学校」に変えることだって十分可能だ。それで難関大学に進学していった若者も多数いる。そこまでの学力のない若者にとっても、しっかりとレポートとテスト対策をこなせば、「高校卒業」の資格もうまくやれば3年で得られる。無理なくやろうと思えば、数年かけてゆっくり学んでもよい。途中で休学を入れるのもありだ。しかもその間、勉強に専念するもよし、アルバイトや資格取得に力を入れるもよし、芸能活動などでがんばるもよし。これは定時制高校や通信制高校でこれまでにもよく見られたケースであるが、そのようなケースにも、十分対応できる。

 「学校」に行けば、先生もいれば他の生徒もいるから、人とのつながりも維持できるし、そこでは「学校行事」だって用意されている。行こうと思えば週5回通うこともできるし、1回だけにしておくこともできる。実に、一人一人に合わせた柔軟な対応のできる「学校」なのである。


 本書は様々な事情で全日制高校をはじめとする従来からの「進級・卒業」をベースにした高校になじめない、あるいは行けない生徒やその保護者各位、さらには進路指導をする教育関係者各位に対し、適切な情報を与えてくれる。まさに、私が高校生の年代の頃の「大学入学資格検定便覧」と同等、いや、それ以上の価値のあるデータ集であると申し上げたい。


 通信制高校という「可能性」に、大いに注目すべき時。それは、「今」。

 進路選択において、通信制高校がこれだけ注目されているが、そのうち、大学や大学院などの通信制過程が今以上に注目されるようになる可能性も十分あるだろう。


2018年8月21日記事


 本書が、現在の通信制高校事情を知るうえでもっともよくまとまったものだと思われる。いささか分厚さを感じる本ではあるが、サクサク読めて、何度も読み返せる。情報を確実に得たければ、ぜひご一読願いたい。

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