第27話 境界線の消滅 ~ 教育機関の「グローバル化」

 変貌しているのは、高校ばかりではない。

 塾や家庭教師会社などの教育産業にしても同様である。

 

 以前は、塾といえば集団授業、家庭教師といえば1対1での個人指導というイメージがあった。それは今でも、必ずしも間違いではない。

 だが、その境界線は、以前ほどはっきりとしたものではなくなった。

 講師1人に対して数人の生徒の学習指導を巡回して行う個別指導や、1対1の「個人指導」を実施する学習塾も増えた。その逆に、家庭教師会社でも、1人の講師が複数の生徒を教える「塾型」の授業を実施している例もある。

 境界線があいまいになったのは、塾と学校、特に私立の中学・高校(以下特に必要ない限り「私学」とする)の関係もまたしかり。さすがに塾と家庭教師ほどではないが、学習塾経営者が学校経営に乗り出した私立高校(岡山県では創志学園高校や倉敷高校など)もあるし、そうでなくとも、私学と学習塾・家庭教師会社の交流の規模は、世間が思っている以上に大きくなっている。

 学校にもよるが、私学の多くは、学習塾対象の「学校説明会」を年に1ないし2回、表題こそ「入試報告会」「入試説明会」などと学校によって、時期によって若干違うものの、この手のイベントを行い、受験生や入学者の獲得に余念がない(最近はやや縮小傾向にある)。

 かつて塾は学校関係者から敵視されていた時期もあるが、そこにはもはや、そんな意識は双方ともない。具体的な状況を書くことは控えるが、塾関係者は学校関係者より、その会場では、下にも置かれぬ扱いを受けている。

 

 最近では、「広域型の通信制高校」に在籍する生徒を受け入れ、レポート添削や受験対策の指導を行っている塾や家庭教師会社が増えている。

 先ほどの概念からすれば、これらは「サポート校」という位置づけになる。

 正式な「学校」とは言えないが、これも「広域型の通信制高校」の概念には十分該当する組織であるとみてよい。岡山県北部を主たる証券としている備作教研のように、X高校通信制過程の「提携校」となっているパターンもあれば、大手家庭教師会社のトライグループのように、広域型の通信制高校である日本航空高等学校の本校と提携しつつ、自らは「トライ式高等学院」と銘打って通信制高校に在籍する生徒を受け入れ、家庭教師指導などを通して生徒の面倒を見るというパターンもある。


 知人の学習塾関係者には、体力などの関係で塾を閉鎖し、家庭教師指導をしつつ、同業者の先生とともに、昼間に通信制高校に在籍する生徒たちの学習指導をしているという人もいる。

 広域型の通信制高校は、その手の「サポート校」に業務を丸投げしているとか、卒業要件を実質的に「低く」している学校もあるという。

 そのような課題があるにせよ、これらの「学校」は、生徒やその保護者らにとって「救いの場」であることは間違いない。

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