第21話 大検(高認)を「飲み込んだ?」広域型の通信制高校

 大検は、高等学校にそもそも入学したことのない者、あるいは中退(転編入)した者の他、定時制高校や通信制高校に在籍している者にも受験の門戸を開いていた。

 それぞれの本来の目的を考えてみれば明白。

 どれも、何らかの事情で全日制の高等学校に通うことができない者の救済のための制度であったからだ。それゆえ、私の受検した頃はまだ、休学中であっても、全日制高校に「在籍」しているということであれば、大検の受験資格はなかった。全日制高校と大検、定時制及び通信制高校の間には、一種の超えられない「溝」のようなものがあったわけだが、そもそもその溝の向こう側とこちら側では、存立目的が初めから違うのだから、ある意味当然のことではあった。

 だがその後、全日制高校休学中の生徒にも、大検(高認)の受験資格が認められるようになったから、この手の制度のそれぞれの立ち位置が、微妙に、しかし大きく変わってきたことは間違いない。


 「中卒東大一直線」の影響もあって、大検の存在は世間に広く知れ渡った。やがて、大検を利用して大学に行く人も、少しずつ増えていった。もちろん、大学進学率が30%代の時代の大学で、戦前の帝国大学ほどではないものの、それなりの学力のある層の話だから、別段、定時制高校や通信制高校を利用する必然性はなかったし、大検さえ取得できれば、後は大学入試に向けて淡々と勉強すればいいことだった。


 しかし、そんな成績上位層ばかりが「大検」に向かったわけではない。

 高校をドロップアウトするような生徒には、中低位の学力層のほうが圧倒的に多い。そのような生徒の受け皿としての役割を、定時制高校や通信制高校が担ったことは事実だが、そこにも、専門学校や大学・短大などに進学希望する者はいつの時代にもいるし、実際、彼らを受け入れる大学なども少なからずある。大学によっては、推薦枠を設けているところさえある。

 

 大検だけでは合格要件がいささか厳しいし、そうかと言って定時制や通信制だけでは、これまた手間だ、時間もかかりすぎる、という場合、どうすればよいか。

 そこで考えられたのが、大検と「通信制高校」の併用である。こちらは、相互に乗り入れることができるようなシステムに、幸いなっている。通信制高校で必要な単位をとりつつ、大検受験で合格科目数を増やしていく。中退する前の全日制の単位があればなおいい。そうして全体として、単位数を大検合格の要件に合わせていけば、大学受験で求められる受験資格が得られる、というわけである。

 この手法は、大検がより一般的になっていくとともに、高校中退者数の増加が社会問題化してきた1990年代半ばから、少しずつ、社会に広まった。

 ある意味大学進学を強く意識した学力上位層しか取込み得なかった大検(高認)は、学力レベルを問わず、最低3年で高卒資格も得られる「通信制高校」に飲み込まれていったような印象さえ受けるほどである。

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