第1章 大検から大学へ、そして・・・ 私の青少年時代

第2話 真鍋照雄氏のこと

 去る2018年8月13日(月)、私は岡山市南区に住む真鍋照雄さん(以下「真鍋氏」)の御自宅を訪れ、この数十年来の大検や高校中退、さらには不登校などの問題について昔話を含めて数時間にわたりお話を伺った。


 真鍋氏は三井造船の企業城下町でもある玉野市に生まれ育ち、定時制高校を卒業後、青森県にある国立弘前大学に入学したのも束の間、諸般の事情で中退し、その後紆余曲折を経て、玉野市内の自宅で学習塾を開いた。基本的には近所の子どもたちに勉強を教える塾なのだが、大検が社会的に認知され始めた頃から、その状況が少しずつ変わり始めた。

 1980年代半ばより、不登校や高校中退の問題に加え、大学入学資格検定(「大検」。現在の「高認」こと高等学校卒業程度認定試験の前身)が社会的に大きく認知され始めた。この頃から真鍋氏は、大検の普及を皮切りに、不登校、高校中退者の支援など、既存の全日制高校や定時制高校になじめない若者たちのための支援を初めた。マスコミに取り上げられる機会も多く、全国的に有名となった。


 その間、活動を通して知り合った高校中退者や大検経験者などを中心に、「もうひとつの青春 高校中退者短歌」という短歌集を自費出版で刊行。後に彼(彼女)らのその後ということで、再度自費出版で刊行した。どちらもマスコミに大きく取り上げられた(後者のプレスリリースをマスコミに送ったのは、実は私です)。

 その間、不登校に悩む生徒やその親御さんたちに向け、全国18大学の学長から寄せられた「手紙」を掲載した「学長からの手紙」という冊子も自費出版で刊行し、こちらもマスコミで大きく取り上げられた。蛇足ながら、私もこの冊子の校正を幾分お手伝いした。他にも真鍋氏は、「大検の集い」と銘打った集まりを各地で再三催し、全国から多くの人たちが真鍋氏のもとに集い、大検やそれにまつわる高校中退や不登校、家庭のトラブルなどの解決策をみんなで模索するきっかけを作っていった。「集い」は所詮その日限りの要素もあるが、この取組をさらに恒常的に継続していくために、単発的な集会だけにとどまらず、「不登校・高校中退110番」という電話相談ができる場を、全国の協力者を募って立ち上げた。

 

 もとより真鍋氏は学習塾の主催者であるから、不登校の子どもたちにとって一番大事なことが何かというと、それは学習支援であると考えていた。かくして、不登校の学習支援などにも力を入れていかれたほか、「高校中退通信」というミニコミ紙も創刊し、数年にわたって刊行を続けた。これらの取組みについては、改めて詳しく述べていく。

 こうして真鍋氏は、全国の高校を中退した青年たちに、大検という制度があることにはじまり、それはどういう趣旨の制度であるか、どのような試験でどれだけ勉強すれば合格できるか、もし大検だけではリスクがあるならば、通信制高校を併用して大検合格の要件を満たせば大検合格となり、大学などの受験資格が得られることを、懇切丁寧に、社会に発信した。さらには、大検と通信制高校の併用による大学受験資格の早期取得、不登校生への学習支援など、次々と問題解決への「手法」を生み出し、世の中に広めていった。

 いきおい真鍋氏のもとには、北海道から九州まで、さまざまな場所から高校を中退した青少年たちが訪れてきた。不登校や全日制高校を休学中の人もいた。単独で来た人もいれば、親子そろってきた人たちもいた。


 うまくいかなかった例もないではないが、真鍋氏との出会いがきっかけで大学や短大、そして社会人へと道を切り開いていった若者も少なくない。不本意な進路を余儀なくされた若者たちに対する真鍋氏の取組が、広域型の通信制高校の隆盛や不登校生への支援に与えた影響には、計り知れないものがあるといえよう。


 後に改めて述べていくが、私自身も大学入試が終わって後、真鍋氏と直接お会いする機会に恵まれ、ここでもご紹介したように、真鍋氏の仕事を手伝うこともあり、大いに学ばせていただいた。真鍋氏のご紹介でテレビなどの取材を受けたことも何度となくある。そればかりか、ご家族ぐるみで懇意にしていただき、現在に至っている。

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