第21話「ジョジョ」が「ジョジョ」であるために
―名礼祥ターン
ドラフト二日目!私はこの三人の様子を全て見ている!教室では目立たないこの三人だが、実に面白い!
だが、私はこの物語の大事なナレーション役!ここで一度話を整理しておこう!
アムロ行きます君は冷静沈着。そして不気味なほど余裕を持っている。家賃を払う高校生であり、危険な?怪しい?大人のそうめんさんとも対等な関係を持ちながら自分の力だけでこの『ドラフト』に挑んでいる。
しょじょさんも同じく自分の力だけで『ドラフト』を戦っているが、幼い頃からおじいちゃんに叩き込まれたボードゲームやカードゲーム、テレビゲームの能力を駆使しての独自の奇抜な発想は見事なものだ。また、彼女自身が持つ特殊能力『バランス』を極めるほど頭が冴える能力は土壇場で何かものすごいことを起こしてくれそうである。
おおそうじ君もブレーン的な存在として漫画家のうそーんさんがいるが、敢えて自分の力で(うそーんさんもそれを察してアドバイスはしない)勝利を目指している。この三人の中では指名作品も全て強い能力もの漫画とアニメのみと偏った超巨大戦力を編成したがその全てをしっかりと使いこなせるのか?
正直、現時点での私の予想では………、うーん、分かりません!いったいこの戦いを制するのは誰なのか?
おや、休み時間で戦いが再開されるようです。ではこの記念すべき『ドラフト』二日目の様子を見てみようではないか。
「アムロ行きますでもしょじょでもいいぜ。俺様に攻撃して来いよ。今日は全部『ジョジョ』で跳ね返してやるよ」
いつもの軽口ではないおおそうじ君の言葉と表情。落ち着きと余裕が同居した表情。
「だって。どうする?アムロ行きますが行きます?」
「しょじょさん…、それ言いにくくない?」
「だってアムロ行きますはアムロ行きますだもーん。あたしの日本語おかしい?」
「いや…、まあいいや。でも『ジョジョ』は…」
「そうそう、どうせ『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』でぜーんぶなかったことにしちゃうんでしょー?」
「ん?俺様の『ジョジョ』が『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』頼みだと思ってるの?俺たちはこの昼休みにお喋りをするために集まってるのか?」
「………三年間そうだったんじゃない?」
「うるせーーー!いいからかかってこーい!」
「それじゃあ、あたしからいくわ!いきなり終わらせるわよ!ラインそおしーーーん!」
しょじょ「『ドラえもん』の『ソノウソホント』を装着し『スタンド能力が全部使えなくなる』と言う」
「問題なし」
そう言っておおそうじ君がライン送信。
おおそうじ「『ジョジョ』のスタンド『トーキングヘッド』でしょじょを攻撃。嘘しか言えなくなる」
「アムロ行きます。判定」
「これはおおそうじ君の勝ちだね。『ドラえもん』の『もしもボックス』、『ソノウソホント』、『ウソ800』あたりは厄介だと思っていたけれど。なるほど。その能力も声に出さないと発動しない。その声を考えていることの逆のことしか言えなくなるスタンド『トーキングヘッド』はまさに恐ろしい能力だね」
「ええええええーーーー!あたしの『ドラえもん』最強の呼び声高い『ソノウソホント』が効かないのおーーーー!?」
「うーん、どうだろ?『トーキングヘッド』は頭の中で考えたこと、言おうとしたことの逆のことしか言えなくなるからね。それを見越して言いたいことの逆のことを考えることは不可能だし。何かしら対応策を考えつかない限りおおそうじ君に『ドラえもん』の最強系の能力は通じないってことになるかな」
うおおおおおお!!なんということだ!!私も『ドラえもん』なら『もしもボックス』や『ソノウソホント』などの道具はかなり強いと思っていたがそれを発動させる言葉を封じるとは!!すごい!すごいぞ!おおそうじ君!
「でもさあ、おおそうじには効かないけれどアムロ行きますには効くってことは変わらないよね?」
「さあ?それはどうかな?」
「声がダメなら書けばいいのよ!あたしにはこれがある!」
またもしょじょさんがライン送信。
しょじょ「『UNO』の『ホワイトワイルドカード』に『ジョジョ』のスタンド能力は無効となると書き込む」
「いぜん問題なし」
おおそうじ君がライン送信。
おおそうじ「『ジョジョ』のスタンド『ジェイルハウスロック』を発動。しょじょは三つまでしか記憶出来なくなる」
「アムロ行きます。判定」
「えーと、『ジェイルハウスロック』は三つのことしか記憶出来なくなる。そうなると…、しょじょさんが『ジョジョのトーキングヘッドの能力を認識する』、『声がダメだからUNOを使うと考える』、『UNOのホワイトワイルドカードは書いたことが全て叶うと認識する』、『ジョジョのスタンド能力を無効にする』。うーん、最低でも四つになっちゃうね。このどれかが欠けても対応出来ないからこれもおおそうじ君理論の勝ちかな」
「ちょちょちょ、ちょっと待て―――――!アムロ行きますの考え方おかしくない?なによ!その認識とかって!『UNO』の能力は十分に知ってるから!」
「だからその知ってること自体が記憶の数に入るってことだよ」
「えー?ちょっと待ってよ…」
そう言ってしょじょさんがぶつぶつ言い始める。いつものように椅子をゆらゆら揺らせながら目を閉じている。誰かが軽く押してしまうと後ろにすぐにひっくり返るんじゃないかっていうぐらいの絶妙なバランスである。
「…相手の能力を認識して…、あたしの能力を認識して…、ちょっと待てえー!『声がダメだからUNOを使う』はいらないんじゃないの!?」
ゆらゆら揺れながらしょじょさんが反論した。
「うーん。これは僕も迷ったんだけどさあ。アイデアとしてすごく面白いってことで応援の意味も込めての判定かな。でも分かりやすく言うと他にも記憶しなきゃいけないことはあるからね。そこに『まずUNOで誰を攻撃するか』も入ると納得するんじゃないかな?」
「…おおそうじを攻撃する、UNOの能力を把握する、相手の能力を把握する、うーん。つまり、おおそうじには『ホワイトワイルドカード』が効かないってこと?」
「『ジェイルハウスロック』がある限り勝てないってことになるかな。まあ、『UNO』がまったく使い物にならなくなったとは言わないよ。使い方さえ工夫すればめちゃくちゃ強い能力だからね」
「判定もいいけどさあ。お前も来いよ、アムロ行きますよ。『アザトゥース』にだって俺様は勝つぜ」
おおそうじ君が人差し指で手招きしながらアムロ行きます君を挑発する。
「そうかい。じゃあ全力でいくよ。最強の呼び声高い『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』。この能力を使える奴が僕のチームにはいるんだよ」
スマホの画面を見ながらそう言ってアムロ行きます君がラインを送信。
アムロ行きます「『キン肉マン』のミスターVTRでおおそうじ君を攻撃。『状況予測装置』で結果を編集。『ジョジョ』のいかなるスタンド能力も結果を編集して敗北の結果に編集する」
「ミスターVTRは『キン肉マン』ではチートキャラなんだ。時間系能力以外にも使える能力を持っててね。中でも未来の結果をVTRのコマを切り取ることで『ジョジョ』の『キングクリムゾン』の時飛ばしと同じ能力を、さらには結果、つまり未来を好きなように変えることが出来るんだ。これは永遠に真実に到達しない『ゴールドエクスペリエンス・レクイエム』を超える能力だと思わないかい?」
そのアムロ行きます君の説明を遮るようにおおそうじ君が言う。
「いぜん問題なし」
アムロ行きます君の言葉を聞いている間にスマホを弄っていたおおそうじ君がスマホの画面から顔を上げライン送信。
おおそうじ「『ジョジョ』のスタンド『クラフトワーク』でミスターVTRの顔を別方向に固定」
「しょじょ。判定」
「あんたの勝ち。それより何よー!ミスターVTRって!そんなことが出来るのに何がチートキャラなのよー。そんなの視界に映らなければいいわけでしょ?あたしだって勝てるわよー。なにそれー。それがアムロ行きますの全力ぅ?」
「まいったなあ。じゃあこれならどうかな?」
しょじょさんの挑発にも乗らずスマホの画面を見ながらアムロ行きます君が続けて攻撃する。ライン送信。
アムロ行きます「『キテレツ大百科』の道具『忘れん帽』を被せて『ジョジョ』のスタンド能力を忘れさせる。移動は『真っ黒衣』で完全に気配を消しているため気が付くことも不可能」
「シブイねえ…、まったくおたくシブイぜ」
おおそうじ君の言葉に思わず俯いて笑うのを堪える二人。そしておおそうじ君がすぐさまライン送信。
おおそうじ「『ジョジョ』のスタンド『グリーン・グリーン・グラス・オブ・ホーム』で近付くものはどんどん小さくなり、そして決して目標に辿り着くことは出来ない」
「しょじょ。判定…するまでもないか」
「そうね。すごいじゃん!おおそうじぃーーー!てか、『グリーン・グリーン・なんとか』って緑色の赤ちゃんでしょ?あれってどうやって本体に触れたんだっけ?確か近付けば近づくほど比例して小さくなるんじゃなかった?」
「なんだよ、しょじょ。覚えてねえの?調べれば分かると思うから言っちまうけど、あれは緑色の赤ちゃん自身が関心を持った存在だけはその効果が発動しないんだぜ。アムロ行きますが『キテレツ大百科』の『真っ黒衣』で気配を消せば関心の持ちようがないじゃん。確かに『忘れん帽』を被せられたらヤバいけれど俺様の『グリーン・グリーン・グラス・オブ・ホーム』がある限り俺様に普通じゃ近付けないし、触れられないと思っておきな。もう一度言うぜ。『グリーン・グリーン・グラス・オブ・ホーム』だ!」
おおそうじ君が『グリーン・グリーン・グラス・オブ・ホーム』の部分を強調して言う。
「そんな能力があるのに何故『グレンラガン』も指名したの?あれって銀河系ぐらいの大きさじゃなかったっけ?」
「アムロ行きます君だっけ?立ってるのもなんだからここ座んなよ。お茶でも飲んで…。話でもしようや」
「いや、立ってるのはおおそうじ君の方じゃない」
「『グレンラガン』の本質は大きさじゃねえぜ。まあ、俺様への攻撃はちょっと工夫を凝らさないと届かないってことだ」
すごいぞ!おおそうじ君!『とある魔術の禁書目録』の『一方通行』よりもある意味厄介な能力である!これは瞬間移動で触れようとしたらどうなるのだろう…?そのジャッジもまたこの三人が公平に判定するのだろう。有言実行。『ジョジョ』のスタンドのみで二人からの攻撃を論理的に即座に跳ね返すおおそうじ君。君はすごい!
「ちょっとちょっとちょっとぉーーー。どうなってるのよーーー。『ジョジョ』はこういうアイデアを使い尽くしているからすんごく弱い奴が意外と厄介な能力持ってるとか多いのよねえ。緑色の赤ちゃんに光線系とかは効くのかな?『ドラクエ』の『ギラ』とか」
「うーん。流石に光線系、と言うか認識出来て普通じゃないようなもの、魔法攻撃みたいな明らかに関心を持つだろうものなら防げない認識でいいと思うよ。全員何かしらの攻撃を避ける、普通じゃ当てられない能力を持っているだろ?この戦いはまず『攻撃を当てる』ことを第一に考えるべきだね」
「あたしには『攻撃を当てる』ことが出来ても『ラッキーマン』がいるからねー」
「『ラッキーマン』ねえ。俺様の『ドラゴンボール』には『ミスターサタン』もいるからな。魔人ブウの攻撃を避けるんだぜ。いくら『ドラクエ』で会心の一撃を連発しようと全部避けることも可能なんだからな」
なるほどなるほど。これは三人それぞれ言ってること全て正しい。この戦いは一体どうなるのだろうか?
面白くなってきたのに休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴り先生が教室に入ってくる。
「どおして三十分だけなのよおー」
「それ俺様の」
「じゃあ続きはまたすぐ」
そしてそれぞれが自分の机に散っていく。
おおそうじ君が『ジョジョ』だけでアムロ行きます君、しょじょさんの攻撃を全て防いだ見事な攻防戦であった。
(うそーんさん。俺様、やったぜ!)
ん?おおそうじ君の声が聞こえた気がした。
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