第9話 小さな女の子

朝がやってきた。

一番に目が覚めたのは弟のローイだった。

「兄さん、兄さん。」

「うん?もう朝か。はやいな。おはよう、ローイ。」

「おはよう、兄さん。今日から開店だね。

楽しみだよ。お客さん、たくさん来てくれるといいなー。」

「そうだな。頑張らなくちゃな。よし、さっそく開店準備しようか。」

「うん。頑張ろうね、兄さん。」

二人は開店の準備を始めた。

すると店を通りすがりの人が話しかけてきた。

「君たちはここでお店をしてるのかい?」

弟のローイが答えた。

「はい。僕達ここで食堂をしてるんです。

昨日この街にやってきたばかりです。前いた街で初めて食堂をオープンさせました。

小さな食堂なので将来は大きな食堂にするのが夢で頑張ってます。よろしくお願いします。」

「そうだったのかい。きっと大きな食堂になるさ。頑張っておくれ。」

「はい。ありがとうございます。」

通りすがりの人はその場を去っていった。

兄のローザーがカレー作りをしている。

カレーのいい香りがしてきた。

弟のローイも手伝い始めた。

「よし。これで準備完了だ。今から開店するぞ!頑張ろうな、ローイ。」

「うん、頑張ろうね、兄さん。わくわくするよ。早くお客さん来ないかなー。」

店が開店して1時間が経った。

それでもお客さんはやって来ない。

店を通り過ぎる人たちはチラリとこちらを見るが、足を止めようともしない。

「兄さん、お客さん全然来ないね。」

「そうだな。でもまだ初日だからしかたない。少しずつお客さんくるさ。そんなにしょんぼりしなくてもいい。俺たちの作るご飯は最高だって、前の街にいたじいさん言ってたし、自信持たなくちゃいけないよ、ローイ。」

「そうだよね。自信持たなくちゃだね。よーし、頑張るぞー!」

「そうだ。その勢いだ。いいぞ、ローイ。

あ、お客さんきた。」

「え?ほんと?」

ローイが振り返ると小さな女の子がやってきた。

「こんにちは。君一人?」

ローイが話しかけると

「うん。わたし一人で来たよ。美味しそうなカレーの良い香りがしたから。カレー作ってるの?」

「そうだよ。カレー食べる?美味しいよ。君はこの街に住んでるの?」

「ううん。違うよ。少し遠い街から来たよ。お母さんにおつかい頼まれてるの。この街のお野菜を買いにね。」

「そうだったんだねー。偉いね。君何歳?名前は?」

「わたしの名前はナシャ。5歳だよ。よろしくね。」

「うん。こちらこそ、よろしくね。僕の名前はローイ。あ、僕兄さんがいるんだ。紹介するね。おーい、兄さーん。」

「なんだー?ローイ。」

「この子ナシャって言うんだ。少し遠い街から来たんだって。」

「へー。よろしくな、ナシャ。俺の名はローザーって言うんだ。カレーちょうど出来上がったんだ。よかったら食べていってくれよ。

「ローザーさんよろしくね。うん、カレーひとつください。」

ローイがカレーを持ってきた。

「はい、熱々のうちに召し上がれ。」

「いただきます。」

ナシャがカレーをひとくち食べた。

「少し辛いね。私は甘いのがすきかなー。でもこのカレーおいしいね。野菜の味がたくさんして。」

「良かった!甘口のカレーも準備したほうが良さそうだね。また食べにきてね。」

「うん。じゃあ、またくるね。バイバイ。」

ナシャはカレーを食べ終わると店を出ていった。

ローイが後片付けをしているとサイレンが鳴リ響いた。

「なんだろうな。心配だな。ちょっと様子見てくる。」

ローザーがサイレンの鳴る方へ走って行った。

少ししてローザーが帰ってきた。

「さっき放火事件があったんだって。犯人はまだ逃走中らしい。怖いよな。俺たちも気をつけないといけないな。」

「そうだね、兄さん。気をつけようね。あ、そうだ、さっききた女の子のナシャがお礼にって果物をくれたよ。美味しそうだね。見たことのない果物だね。仕事終わったら一緒にあとで食べようよ。」

「ナシャは優しいな。そうだな。あとで一緒に食べよう。」

外を見るとすっかり夜になっていた。

もう店じまいの時間だ。

ローザーが店じまいを始めた。

「ローイ。今日はお客さん一人だったけど

いいお客さんで良かったな。また来てくれると嬉しいな。」

「そうだね、兄さん。明日もまた頑張ろうね。」

「おう。」

店じまいが終わり、二人は食事を済ませ寝ようとしていた。

するとニャ~と猫の鳴き声がして扉をカリカリする音がする。

「あ、猫だ。兄さん猫がきたよ。どうする?いれてあげる?かわいそうだよ。」

「でも、どうすんだよ。飼うっていってもエサ代もないのに。」

「そうだよね。残念。」

「そのうち、どっかに行くさ。よし、今日はもう寝よう。おやすみ、ローイ。」

「おやすみなさい、兄さん。」

二人は静かに眠りについた。

明日はどんなお客さんが来るんだろう。

期待に胸膨らませながら明日を待つのであった。


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