今日のラブコメはやめた

立花戦

テーマ1駆け込みラブコメは混沌を呼ぶ

第1話―津島はラブコメを知らない―

思春期の真っ只中ただなかに求められるものは……恋。

高校生にもなれば運命の

異性と出逢であえる可能性は高いと愛読書に書いてはいたが僕はまだ恋人をしたことがない。


「おーい、修治しゅうじ

私の話を無視しないでよ」


「隣に歩くのは生産性の無い内容で会話を繰り返す幼馴染のヴァージニア・ウルフだ。金髪ショートヘアは美しく、汚れを知らない純粋な碧眼へきがんのJK美少女。

今朝もヴァージニアの笑顔に明るい天気よりも眩しく目を細める僕」


「えへへ、そんな事はないと思うんだけどなぁ・・・って待ってよ。何を私の容姿とか名前や幼馴染を何もいないのに?誰に語っているの!?キモっ、キモイんだけど」


まったく、通学路の坂を登る7月の暑さで参っているというのに奴は騒ぐ元気はあるようだ。

ともかくキモイという暴言は傷をつくから言わないでほしい。

っと言うっても他人に吐くほど品位が欠けた奴じゃない。逆にいえば親しい人なら辛辣しんらつな発言をしてくるわけでもあるが。


「・・・ハァー。決まっているであろう。僕は小説志望者だ。

常日頃から小説を考え一喜一憂している生き物なのだ。キャラ描写のトレーニングをしているのだよ」


「ねぇ修治しゅうじ。ほとんど外見描写だったよね。急にそんなしゃべりしたら誰でもビビるから!」


「安心せよ、お主だけじゃよ」


こんな頭のおかしい発言を他の人にできる訳がない。無茶を付き合えて許せてくれるからこそ。

彼女は精神的な疲労からのため息を大きくする。


「別にいいんだけどねぇ

・・・今さらだし」


「さすがは理解者」


「はい、はい。それよりも

私の事はヴァージニアじゃなくて乙女おとめって呼んでて何度も

言っているじゃない!」


非難を込められた鋭い眼光を向けられた僕は、これも描写のためであると喉から留めることにした。

やぶから蛇になるのが容易につく。

乙女ヴァージニアは自分の名前には、あまり好きではない。単に可愛くないという理解に苦しむものだった。ヴァージニア・ウルフカッコイイじゃないか。

イギリス人のとある偉人に出てきそうな名前だから。そしてヴァージニアはイギリス生まれなのだが

かたくなに日本生まれと主張していて、断固として認めようとしない。こだわりを否定するつもりはないので、どうでもいいが。


「おっと、危ないぞ乙女おとめ


僕は乙女の手首をつかみ俺の方へ引く。並列している僕らも悪いのだろうが、まさか自転車で坂を下りながら、ながらスマホとは自殺願望でもあるのか。通り過ぎた大学生ぐらいの男性は?


「し、修治・・・近いんだけど」


「んっ?・・・あっ、すまぬ。

こんな触れる距離にするつもりは無かったのだ。気分を害しないでほしい。違う、偉そうな謝罪を

してすまぬ」


もしかすると気持ち悪がられているかもしれない。乙女との距離は

ほとんど無いに等しいほど密着している。

他者から見れば僕が強引にハグを

敢行をしているように見えるかもしれない。


「べ、別にいいわよ。私を助けてくれたのに謝るのって、おかしいからねぇ!」


元の隣に歩く距離まで離れていく乙女は何があったのか白磁な頬を赤らめている。

暑さで、やられてしまったのか。

指摘していた乙女だったが柔らかい表情をする。


「ありがとう。ぶつかっていたら今頃は大怪我をしていたんだろうね」


「そんなわけがなかろう」


速度と鉄の塊である物体からの衝突を素早く計算という考察して

乙女の言葉には外では否定して、内側は間違いないと呟く。

それからは日常の再現のように動き出すのみであった。


明暗めいあん高校はそれなりに偏差値が高く、ギリであるが

なんちゃって進学校ではないと思いたい。乙女には、いつものように理由を告げて放課後は

図書館で調べごとをする。吹奏部すいそうぶの楽器音とは別の方向から聞こえる掛け声のサッカー部をBGMに

本をめくり文字を追っていく幸福感。今日も図書館には

人がいなく、こんな楽しい空間を

足繁く向かわないのは人生の損だと本気で考える。


(さて、そろそろ帰らないと小言を食らうことになる)


カバンを持ち、本をたなに戻して僕は図書館を後にする。

4階にからスーパーインドアの貧弱な足で階段を降りないといけないと思うと肩をすぼめる。


「大好きです。付き合ってください!!」


うおっ!?驚いた。危うく曲がってしまい告白場面を突撃をする所だった。図書館の利用が皆無だからこそ、踊り場で告白する場所に

決めたのだろうが忖度そんたくしないといけない僕には

甚だ迷惑でしかない・・・いや、これは研究対象だ!

壁に隠れ見つからないよう、極力と顔を出して覗く・・・なんだか

ストーカーみたいだなぁ。


(ほう、ほう。イケメンと美少女でありますか)


告白を口にしたのは男の方だ。

中性的で端正な顔立ちをしている。

そして告白をされた美少女は慣れているのか大きな反応は無く、ぎこちなく困った笑みをしている。

あー、結果が見えてしまったなぁこれは。髪は耳から上を左右にたばね長さは肩ほど。それ以外は後ろに長く伸ばしている、いわゆるツーサイドアップの髪型。つややかな髪の色は栗色。


「その、気持ちは嬉しいですけど・・・・・ごめんなさい!」


丁寧に頭を下げて真摯的な返事をする。


「・・・そう、ですか」


どんな反応を期待していたが、やっぱりリアルは虚構のようにはいかず地味だった。


「けど、気持ちは嬉しかったよ。それじゃあねぇ」


あの美少女には普段の明るさを知らないが気配り、より一層と元気に振る舞ったのは一部始終を

見ていた僕はそう思った。

軽く手を振る美少女を振られた相手は著しく気を落としながらも懸命に明るく振る舞っているのが痛々しい。

美少女は階下に降りていったのか手を振るのやめた彼は失望と諦念の息を吐く。


「はあっー・・・」


俺は少し駆け足で降りて彼の前で足を止める。


「少し話があるがいいか?」


「なっ!?それって一部始終を影で見ていたってことか?」


まさか目撃された事に驚きと羞恥で戸惑い始めている。

落ち着まで余裕がないので単刀直入に行く。


「振られた感想を聞いてもいいか?」


「はぁ!?」


「いや、だから振られた心境。

イケメンが振られる場面を見逃す僕ではないので。よろしいですか?」


俺はポケットからメモとペンを取り出して言葉を発するのを待つ。


「・・・ふざけんなあぁーー!」


彼は激昂した。まぁ、振られたばかりのターゲットの機嫌は最悪冗談であると、メモを書き記した。

それから質問を嫌々ながらも答えてくれた数分後。


「いやー。振られた悲しみで、どうにかなりそうだったけど話をしてスッキリしたよ。

ありがとう・・・えぇーと名前は?」


暗澹あんたんたる気持ちにあった彼は話をしていくにつれ

ストレスが発散したのだろう。

優しげな彼はお礼の言葉をして

途中から言いよどむ。


「僕の名は津島修治つしましゅうじ

いつかは最強の小説家になることだ」


僕は思春期の真っ只中にあるのだが恋を知らない。そんな辞書の定義によるものであるなら知っているが理屈ではない胸が高鳴り

踊る感情を知らない、感じていない。

だから僕はラブコメを研究したい。

そして知るんだ。好奇心のままに走り出し、学んだそれはラブコメにして書くために。

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