あーちゃんの短冊
久世うりう
あーちゃんとの待ち合わせ
「待った?」
声をかけられて顔を上げると、むすっとした顔のあーちゃんが立っていた。
あ、浴衣かわいい。明るい色合いの、お花の柄の浴衣だ。
まとめて上げた後ろ髪が、普段のあーちゃんとは違った印象で、どきりとする。
「ううん、いま来たところだよ」
あーちゃんと並んで、オレンジ色に染まった商店街を歩き出す。
あーちゃんとわたしが住む町内では、夏の初め頃に、七夕まつりが開催される。
開催される、というのも大げさなくらいの、ささやかな規模のお祭りだ。
毎年、笹の葉が飾られた商店街を、あーちゃんと二人で歩いている。
わたしは、あーちゃんのことが大好きだ。
遠くから見ると背が低くてかわいらしい印象だけれど、いつもむすっとした表情をしている。
さらに、会話をしてみると、言葉が少ないうえにストレートで、少しトゲがある。
あーちゃんのことをあまり知らないと、近寄りがたい子だな、と誤解してしまいそうだけれど、わたしから見たら、あーちゃんはむしろわかりやすい方だ。
たとえば、今のあーちゃんのように、気分が高まっているときには、まばたきの頻度が少し高くなる。
他にもいくつかクセのようなものがあるけれど、いずれにせよ、あーちゃんは見た目ほどむすっとはしていない。
あーちゃんのことを知っていると、むすっとした表情は、近寄ってはこないけれども尻尾を立てている小さな子猫のようにも見えて、チャームポイントにすら思えてくる。
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