ディーサイド・ブラッドボーン ~ 神を殺すもの ~
武論斗
序章
渇欲の魔女
行き場を忘れた死者
この地方では見たこともない
そんな
――It's showdown!!
――――――― 0 ―――――――
知らぬ訳ではあるまい?
その知識がなくとも、息絶えるその時まで、本能が“これ”は危ないと、危険信号を全身に流しているはず。極度に水や日の光を恐れ、“それ”には寄り付きもしないだろ?
だと
――向かってくる。
身体への危機に勝る本能、
――
空腹を満たすため?
そんな生易しいものじゃない。
崩壊を、
そう、そこだけは
生き存えようとする生命体としての意志が、毒の血としての種の存続をも上回る瞬間。
故に――
彼らにとって致命的な陰鐵の刃を握っているにも関わらず、わたしの肉を、骨を、
「いちっ!」
――ザシュッ!!
太刀を
動物の革を切る感触とは微妙に違う。
鱗のしっかりした魚を刻む感じ。
そう、肉を斬った時とはまるで違う
そして、確信する――こいつは紛れもなく、カバネラ、だと。
ボゥッ!――
火花が散り、炎を吹き、燃え上がる。
肉が? 皮が? 骨が?
違う、それらは
強烈な燃焼はそう、血、で起きている!
陰鐵に触れた
カバネラの体中、隅々迄行き渡った毒の血は
――ボンッ!!
爆発霧散。
周囲の感染者達に、
もう手遅れなんだ、そこにいる者達は。
分かり切っていたこと。それでも、願わざるを得ない。
だって、そうだろ?
助けられないのであれば、こうするしかないのだから……
「にっ! さんっ! しッ!」
――ザッ! ザスッ! ザンッ!
やがて、血の持ち主達は炎に包まれ、悶絶、
ボッ! ボフッ! ボンッ!
軽妙な爆発四散に、心ばかり重くなる。
「き、きさまッ! ディーサイドか!?」
そんな分かり切ったこと、今更
いや、訊ねた訳ではない、か。
――恐れ。
常に捕食者である
恐らく、その“化物”にとって、初めて感じるであろう負の意識。生命の存続、いや、個体の維持、か?
四人もの感染者を作り出したその
被害者達の恐怖心は、それどころではなかった
「――そうだ、と云ったら?」
一瞬の沈黙、いや、覚悟を決めた
「……くっ、くくくっ、
バキッ、バキキッ!
皮膚が変色し、四肢が伸び、頭髪は抜け落ち、躰の様子が著しく変貌する。
――
姿を現したな、化物。
さぁ、どこ迄変わる?
来い、
「ブァ~ハッハッハーッ! どうだッ! 驚いたか、ディーサイド!」
2メートルを優に超える
――キシャーッ!
「――それだけか?」
「……だけ??」
「
「? ……なにを云ってやがるッ! ブチ殺してヤルッ!!」
だが……
ドン!
「ぎゃヒッ!」
声にならない音節を発し、
こいつら特有の色素の薄い桜色の血液は、急速な酸化で真っ赤に変色、グラデーション
この感覚、腹の底から、
恐らく――
わたしの限界も、
――近い。
―――――
――ない。
達成感も、正義感も、
手掛かりも、
わたしがわたしで在り続ける存在理由を、わたし自身が証明出来ない。確固たる意志とその論拠はあれど、その全てを証明し得ない、し切れない。
何よりも、答えられない、説得できない、納得できない。
なにも、ない。
この時のわたしは、確かに強くはあったのだけれど、それ以上に
――そう……
わたしは、弱くなる。
元より、決して強くはないのだけれど、それでも強くあろうと意地を張っていたし、何よりそれを欲し、望んでいた。そんな自分の意志こそが生きる
……にも関わらず。
弱さの向こうに強さを知るなんて。
ああ、神よ!
わたしは決して、おまえを
それでも
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