その十一 料理をしようその1

 本日は家庭科の授業です……自慢じゃありませんが僕は料理なんてできませーん、OL時代もコンビニ弁当がメインでした!

 そんなこんなで我が班のメンバーは僕、ニーナ、クレア、ユリアーナ、ライネス、ヨルシダ君です。

 ヨルシダって誰だよ? と思われますが、うちのクラスにいるとある貴族の次男坊くんです。名前の響き的に僕は心の中で吉田と呼んでいます。


 そして女性指導員の指導のもと授業が始まったのであった。


「で、うちの班は何をつくるんだ? というかこの中に料理経験者は?」

「私が料理なんてするわけないじゃないですの」


 うん、ユリアーナなんかには期待していない。


「カナード王子、安心してほしい、ボクはパンにジャムを塗ることができるんだよ」

「そんなもん僕でも出来るわい」


 コイツも論外だ。


「私は少しだけなら、母の手伝いで多少覚えている程度ですけど」

「少しだけでも出来るなら有難いよ」


 流石はクレア、このゲームの主人公。


「ふっふっふ、お任せください王子! 最近私はお母さんに料理を習ってるんですよ!」

「流石はニーナだ! えらい!」


 僕のお付きは良くできる子で良かったよ。

 吉田君は無言でアタッシュケースのような箱を出すとケースを開いた。

 無言でうなずきながら中身を取り出す。


「な! マイ包丁だと?」


 素人でも高そうな包丁だということが分かる、高級な作りの包丁を出し頷いている吉田君、ぽっと出の脇役のくせに、まさか最大戦力だというのか?


「あら? それってあの有名な刀工でもあるクリス・アシュフォード作の包丁ですの?」


 ユリアーナが吉田君の包丁を見て驚きつつそう言った。


「ユリアーナ、それってお高い包丁なのかい?」

「ええ、下級騎士の一年分の賃金くらいはしますわね」

「たっか! 包丁たっか!」


 確か下級騎士の年収は金貨でいうと約五十枚、下級とはいえ騎士は一般的な収入のご家庭の倍はあるのだよ。

 ユリアーナの説明にニヤっと笑って親指を立てて応える吉田君。


「これは期待出来そうだな……」

「そうですわね」

「王子! 私の包丁も見てください!」


 なに? ニーナもマイ包丁だと?


「こないだ銅貨五枚で買ってきましたよ!」

「うん、いいんじゃないかな?」


 安いよニーナ……今度もっと良い奴をプレゼントしてあげよう。

 この国の銅貨五枚って日本で言えば五百円くらいなんだよねぇ、まあ百均の包丁よりは高いか。


「ふふふ、まさかこんなに早く出番があるとは思いませんでした」


 ニコニコしながら包丁に頬ずりするニーナ。

 そんなニーナを温かく見つめる僕とクレアとユリアーナ。


「カナード王子、ニーナさん可愛いですわね私にくれません?」

「お断りだコノヤロー」

「でもニーナさん凄く楽しそうですね」


 ライネスの野郎はナプキンをし、すでにテーブルに座っていた。


「ふ、なかなか楽しみですな。カナード王子」

「お前、何やってんだよ、まだ始まってすらいないだろうが」

「やだなー、カナード王子ボクは食べ専ですよ」

「ええい、戦力外か! 皿でも並べてるんだ」

「ラジャー」


 で? 何を作るんだろう? 


「うちの班は何を作るんだい? 肉じゃが?」

「ニクジャガ? 王子なんですかそのメニューは?」


 そうか、そういえばそうだった肉ジャガなんてこの世界には無いんだったな。


「あー、えーっと前に本で読んだことがあるメニューなんだ」

「カナード王子、それ面白そうなメニューですね」


 料理を勉強しているというニーナと優秀なクレアは肉じゃがに興味津々。

 戦力外二名はほうっておくとして……吉田君はというと……頷いていた、要するになんでもいいようだ。


「なら肉じゃがにしよう」


 ……思い出せ肉じゃがのレシピ!

 運のいいことにこのゲームは設定が結構ザルなので、何故か醤油もみりんもあるのが救いだ。

 えーと、確か豚肉、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、えんどうまめ、醤油、酒、砂糖、みりん、寿司、すきやき、天ぷらだったか? ……最後の三つはいらないな。

 細かい分量が思い出せないが一か八かでやってみるか。


「確か、昔本で読んだ本には豚の肉、じゃがいも、ニンジン、玉ねぎ、えんどうまめ、砂糖、しょうゆ、料理酒が必要だったはず」

「わかりました王子! それらをもってこればいいですね?」

「ああ、細かい分量までは覚えてないけど、何とかなるはず」


 こうして僕たちは食材を集めに向かった。

 数分後戻ってきて食材を確認する。


「王子! えんどうまめだけ有りませんでした」

「カナード王子、豆は重要な食材なのでしょか?」

「いや、色味の意味合いが強いようだから無くても問題は無いかな」


 えんどうまめ以外は何とか確保できたが……


「なんだこれ?」

「トリュフですのよ知りません?」

「知ってるよ」

「ユリアーナ、君は僕の話を聞いてたのかな?」


 肉じゃがにトリュフとか無いから。


「聞いていましたわよ」

「僕はトリュフなんて一言も言ってないから、返してきなさい」

「高級素材ですのに」

「高級とか関係ないから」


 トリュフを返しに行くユリアーナと入れ替わりにライネスがやってきたが……


「返してこい!」

「な、まだボクは何も言ってないんだが」

「その手に持ってるものは使わん!」


 何で食パンとバターなんだよ、お前はトーストでも作る気か?

 ライネスはトボトボと食材を返しに行った。


 さて、クレアとニーナは真面目に食材を確保してきてくれたのでこれで作業に移れるな。

 では調理開始といこうかね。

 ……僕も料理できないけどね!

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