その六 この時が来たか。
更に時は流れた、この頃にはほぼ魂も体に引っ張られ安住祥子の記憶を持つカナードという青年になっていた。
僕は初級、中級部を終えついに上級部へといくことになった。
「王子、私たちもこれで最上級の上級部一学年へ進学ですね」
この頃になるとニーナはあどけなさも残るが、かなりの美少女へと成長していた。
僕はそれがとても誇らしかった。
「ああ、そうだね。ニーナとはもうずっと一緒にいるね、これからもよろしく頼むよ」
「はい、王子」
僕とニーナは上級部の制服にそでを通し馬車へと向かった。
「カナード様にニーナ嬢ちゃん立派になられましたなぁ」
「ヘンリーは毎年それを言ってるなぁ」
「あはは、ヘンリーさんは私達のお爺さんみたいな方ですね」
「ええ、そうですとも二人とも孫のように思っております」
そう言いつつ馬車の扉を開けてくれるヘンリー。初級部の時からなのでもう七年目になるのか。
そして、上級部。そろそろだな、この僕が生き残るための本当の戦いが始まるのは。
ゲームではクレアがこの学園に来るのは来年、僕が上級部の二年になるころだ。
初級部、中級部時代は何故かずっと同じクラスだったためかクラスのメンバーとは悪くない関係を気付けたと僕は思ている。
そして、ソニアの方はと言うと、権力を盾にやりたい放題。
彼女のせいで学園を去ることになった者も数名いたようだ。
ソニアは割と狡猾なためか、表立って事を進めない性格であった。
「いやー、第二王子おはようございます。また同じクラスですね、今年もよろしく」
「ああ、ライネスか。こちらこそ」
前髪をくるくるいじりながらライネスが僕に挨拶をしてきた。
「ニーナ君もよろしく」
「はい、ライネス様。よろしくお願いします」
ライネスはアホだが決して悪い奴ではなかった、長い物には巻かれろ的な所があるが、いざというときは自ら決断できる強さももっていた。
この強さがゲーム内のエンディングでは裏目に出てしまっていたのだけどね……
「あら? またカナード王子にライネスさん達と同じクラスですの?」
「ユリアーナ君も一緒か、はは。もはや腐れ縁だね」
こんどはユリアーナだった。この子も根っこは悪い子ではないのだけど、嫉妬深く幼い部分がありしかも無自覚系の同性愛者だ、それゆえにクレアに一目惚れしてしまってからはクレアに意地悪をすることになるのだけど。
ゲーム内で書かれてる彼女は嫌な奴になっているけど、僕が今まで見てきたユリアーナはそこまで嫌な娘ではなかった、ただニーナにセクハラするのだけはやめてほしい。
あと僕はこのユリアーナにはライネス以上の接触をしている、なにせ僕が失敗した時の保険なのだからね、彼女が潜在的な百合っ子だということを知っているから、イケメンに言い寄られても全くなびく様子が無いのも救いだった、今では友人に近い距離を保てている。
打算的で嫌な考えだが、本当にこの世界があのゲームと全く同じであれば僕の保身のためそして国のためにも必要なことになる。
全くクソゲーすぎるのも考え物だね。
さて、入学式や挨拶などは問題なく進み無事に終えることができた。
そして僕たちは上級部へと無事進むことができたのであった。
「さて、いよいよ本番が近づいてきたか。カナード王子のシナリオの細かい部分が分からないのは不利な話だけど、他の四キャラに関しては……覚えてる、祥子の記憶は生きているか」
僕は、改めて自分の安住祥子としての記憶を確認した。
自分があの時どの選択肢を選んだか? そしてどのルートに進んでいたかを覚えている、まさかオタクだったことの知識がこんな形で役に立つなんて誰が想像できようか? いや、できまい。
「カナード王子? 考え事ですか?」
「ん? ああ、ついに上級部なんだって思ってね」
「そうですね! また三年間頑張りましょう!」
不思議とこのニーナとならば成し遂げることが出来るような気がする。
僕のような何の取柄もない王族には過ぎたる従者だよ、しかし今はまだ彼女に甘えさせてもらうことにしよう。
問題が解決したら今度は僕がニーナの力になれることを探そう。
ソニアの動向にも注意していかないといけないな。僕が知ってるゲーム通りならこの年の最後辺りで彼女も『水の巫女』候補になるだろうからね。
おっと、水の巫女ってのはこの国の中心的な役割を担う重要な役職なんだ。
この国は国の中心に大きな湖『サントゥーア湖』というのがあってね、この国は水の国と言われている、祥子の記憶にある滋賀県という地形に似ているかな。その湖の神霊様の声を聴く役目を持つのが水の巫女と言ってね。これは神霊によって神託で候補が数名選ばれる、そして最終的にその候補から巫女が選ばれるんだ。
この水の巫女は王族と同じくらい重要な地位に就くことになる、そんな重要な役割の候補にあの極悪令嬢のソニアが選ばれてしまうのが厄介な話なんだよね。
そして主人公のクレア、彼女も水の巫女候補になったことによりこの学園に来ることになるんだ。
ソニアが候補じゃないのならもっとマシな結末になるんだろうけど、このゲームのシナリオライターはよほど乙女ゲーに恨みがあると見える。
――
――――
そして、この年の冬にやはりというか、ソニアが巫女候補となる知らせが僕たちの元へも届くのであった。
やはりゲームと同じようになってきたな。
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