向こう岸の奴。

@yugamori

おたがいが思うこと。

 俺の家の近くには大きな川がある。そこの河川敷に行くのが俺は好きで、よく夜中や早朝のだれもいない時間に、大きな川と空を眺めるのが好きだ。走っている人間なら見かける。けれど、早朝のあるとき、たまに見かける妙な奴がいる。相手もそう思っているかもしれない。反対岸にいるアイツはなんだと。おたがい顔なじみになっているかもしれない。

 そいつはいつも同じ場所にいる。座っていることもあれば立っていることもあるが、反対岸の草が多い茂った河川敷の先にある、川辺に一番近いコンクリートの部分がある。近くに大きな木があって、その木の枝をかさにするように、その下にそいつはいつもいる。

 釣りでもしているのかと思ったこともあったが、そういう気配もない。俺もよく同じ場所にいるから、向こうも同じように思っているのかもしれない。いる条件といえば、晴れていて、朝の6時頃というくらい。曜日もバラバラで、特に日にちで来ているというわけでもなさそうだ。

 俺はなんとなくぼーっとしたり、考え事があるときに一人でここに来る。あいつはなんであそこにいるんだろう。大きな川だから顔まではハッキリと分からないが、雰囲気から察するに同じ高校生じゃないだろうか。平日でもいるから、学校に行く前にもいるのだろう。ジャージでいるから、朝練の前に寄っているのかもしれない。

 たまに目があうような気もする。とにかくなんとなく、いると気になるやつだ。




 僕の家の近くには大きな公園があります。そこの河川敷に行くのが好きで、気が向いた時に早朝や夜に行きます。学校前に早起きして行くのも好きだし、なんとなく夜更けに来るのも好きです。草の多い茂った先にコンクリートの堤防があって、そこまでくると人は滅多に来ません。その近くに大きな木があって、そこがお気に入りの場所です。

 たまにですが、向こう岸にいつも見かける人がいます。多分、高校生です。もしかしたら学年が同じかもしれません。特にいつというわけでもなく、早朝にフルチンで河川敷に突っ立っています。僕のことが見えないのでしょうか。それとも僕に見せたいのでしょうか。明らかに変質者です。どういうつもりであそこにいるのでしょうか。

 何度も通報しようと思いましたが、顔を見られている以上怖くてそんなこともできません。いつも同じ場所にいる僕だから、ここのお気に入りスポットに来て突然なにかされるかもわかりません。お気に入りの場所が使えなくなるのも嫌なので、通報することができません。

 頼むから早く逮捕されてください。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

向こう岸の奴。 @yugamori

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る