引っ越し

 コーヤはいつも自分より先に起きている。今日は朝から家中を片付けていた。


「出張いくん?」

「いえ、引っ越しっす。俺が朝メシ作ってる間に自分の片付けといてもらえないっすか。大きいのと重いのは俺がするんで置いといて下さい」

「うちのせい?」

「大人のめんどくせー都合ですよ、そんな顔しないで」


 『そんな』顔をするのは、いつもコーヤの方なのに。


「今度どこ行くん」

「そうすね……思い切って北の方に行ってみましょうか。前にかまくら作ってみたいって言ってましたよね」

「うん。でも作り方、全然知らへん」

「大丈夫っすよ、手伝うし作り方わかるんで。中でお鍋パーティでもしましょうか」

「お餅も入れて」

「はいもちろん」


 バックミラーに、二週間くらい住んでいた家が映っていた。

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