なぜかカンナの花に結びつく

肥後妙子

第1話 私が妹と暮らす様になった訳

 四コマ漫画家としてデビューして、順調に仕事は軌道に乗った。ありがたすぎるほど順調だ。現在私は二十六歳。両親と妹が暮らす実家を出て、マンションの一室で一人暮らしをするようになってから二年弱経つ。

 

 ただ、最近仕事が忙しく、家事が大変になってきた。そこで、妹を家事係として、マンションに呼ぶことになった。妹は私より五つ年下。私が実家を出る半年くらい前まで、引きこもりだった。

 でも、今はすっかり元気になって、単なるニートをやっている。妹が引きこもりからニートになった頃合いを見計らって、私は家を出たのだった。なんか、元気そうになったから、私が居なくても我が家は大丈夫かなーと思って。

 で、私も仕事が順調なお蔭で生活に余裕が出て来て、今度は妹に労働の喜びを教えようと思った訳だ。少なくとも、家事係を任命しようと思った理由の半分はそれだ。

あとの半分は私が息抜きしたかったからだけど。


 妹に連絡してみた。

「ねえ、お金をちゃんと払うからさ、うちで家事やってよ、絢乃」

「んー……お金くれるのかあ……。じゃあ、とりあえず三か月くらいを目安にしてなら、いいよ」

 

 こんな風にあっさりと姉妹二人の同居は決まり、ひと月が過ぎた。季節は盛夏から晩夏へ移っていた。そんなある日、私は実家に顔を出しに行った。九月の敬老の日に

姉妹二人で両親に何か美味しいものをご馳走するよと告げる目的もあった。妹の絢乃

に合いカギを渡して、私は日傘をさしてアブラゼミの鳴き声の中を実家へ向かった。


「まだ敬老って年じゃあないわよー」

「だって、休みの日じゃないとお父さんいないじゃない」

「お前たち二人が作ってくれるのか?清美」

「ううん、出前を頼む」

「なんだー」


とりあえず敬老の日にささやかな家族の宴会をすることになった。


 汗でべとつく肌を持て余しながら、マンションの前まで帰ってきた。暑い。もうすぐ中に入れる、と思った時に絢乃の声が聞こえた。なんだアイツも外出してたの。ところで誰と話してる?きょろきょろしながら探すと、どうもマンション横の細い道から聞こえてくるのが分かった。近付いて、ん?と私は思った。聞こえてくる妹ともう一人の女性の声は、会話というより言い争いだったからだ。


 「とぼけないでよ」

 妹じゃない声は音量を抑えつつ、怒りに声を震わせているのが分かった。


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