第20話 合コンって楽しいんですの?

「合コンって楽しいのかしら」

「……ふぅ」



 まだ早朝の静謐な空気の漂う頃。

 いつも通りの休日はいつも通りの、シュエリアの気まぐれな発言から始まる。

 はぁ、今日もいい天気だなぁ……。



「どうなんですの?」

「……まず、何故そういう発想に至ってしまったのか聞いても?」

「ん? そんなのこれを読んだからですわ」



 シュエリアが手にしている「これ」とは『王〇ゲーム』の漫画。

 うん、おかしい。



「それを読んで合コンという発想に行きつくとかお前ホントどういう思考回路してんだ」

「だって、王様ゲームって合コンでやる定番のゲームって聞きましたわ」

「またお前はアニメの悪影響を……」

「いえ、シオンに聞きましたわ」

「くそっ、あの悪女め!」

「同じ悪影響でアニメとシオンで悪態に差があり過ぎないかしら……」



 そんな事言われても、あの義姉はいつも余計な事ばかりするからな……仕方ない。



「はぁ。で、王様ゲームから、合コンになったと」

「ですわ。それで、面白いのかしら」

「知らん」

「童貞なのに?」



 当たり前のように童貞扱いしてくるシュエリアにツッコみたいところだがここは我慢だ。

 このアホの言葉に毎度毎度ツッコんでいたら話がまったく進まなくなるからな。

 それでも、とりあえずこれだけは聞いておこうと思う。


「なんで童貞なら知ってる前提なんだよ」

「童貞なら結構がっつくかと思って」



 なるほど、確かにそうかもしれない。



「まあそこでがっつかないから童貞ってのもありそうだけどな」

「あぁ…………」



 そこで深い理解を得たような頷き方されるとそれはそれで傷つくな。

 自分から言っといてなんだが、童貞前提とか悲しい話だ。



「じゃあもう、やってみるしかないですわね」

「……知ってるかシュエリア、合コンは男女の数が合わないとできないんだ」

「それもそうですわね。じゃあとりあえず、シオンとトモリとアイネにも声かけてきますわね」

「おーい、話聞いて無いのかー」



 俺がせっかく人数が合わないから無理と言おうとしたのにも関わらず、シュエリアの奴は無視して他のメンバーを呼びに行ってしまい、そして数分もせずに集まるいつものメンバー。

 っていうか集まり良いな、集合早すぎだろ。



「アイネ達だけだと人数が奇数になるから仕方なくリセリアも連れてきましたわ」

「姉様と合コンするために来たのですから、勘違いしないでくださいね」

「あぁ、はいはい」



 なんかほんのりツンデレっぽい台詞を貰ったような気がしないでもないが、台詞の印象だけで、この子がガチでシュエリアにラヴなのは知ってるから全く勘違いなんて起きない。

 というかそんな事より問題なのはシュエリアだ。



「人数を偶数にする前に、男を用意しろとか言いたいが、それはいい」

「あら、この男、男食発言をそれはいいで済ませましたわ」

「そんな発言してねぇよ!! ……そんなことより、なんでお前、男装してんだ」

「似合ってないかしら?」



 そう言ってシュエリアは自分の姿を見下ろし体を捻ったりして確認している。

 そのシュエリアの姿は正しく男性。

 かなり美形なエルフだからこそできるような超美形男装だ。



「これで男側で参加しますわ」

「お前どんだけ合コンに必死なんだよ」

「それだけ聞くとモテない女みたいですわね……」

「というか、お前だけ男装しても女性4人だから足りないだろ」

「それなら既に手は打ってありますわ」



 言うのと同時にパチンと指を鳴らすシュエリア。

 また随分と大げさだが、何かの合図だろうか。

 と、その時ふいに背中に何かの気配を感じた。



「ということで、お姉ちゃん、男装しちゃいました!」

「ぬぁっ?!! なんで後ろに居るんだよ?!」

「実はさっきから天井に張り付いてたんだけどね? ゆう君びっくりさせたくて!」

「それ別に天井に居る意味なくないか?!」

「あはははは」



 俺のツッコミに笑って返す義姉さん。笑い事じゃねぇだろ……。



 ちなみに一応評価しておくと、義姉さんの男装は似合ってはいるし、男性っぽくも見えるがどうしても女性が男装しているという感じが出ている。

 まあ理由は恐らく胸のせいだろう。

 見た感じいつもより無いから、さらしか何かはしているんだろうが、それでも姉さんの胸だとスーツ越しでも割とあるのがわかってしまう。



「ってか、義姉さんは女性側じゃなくてもいいのか?」

「んー?」



 そう、義姉さんといえば俺のことが好きすぎて色々度が過ぎるヤンデレでもある。

 そんな人がシュエリアの暇つぶしとは言え、俺との合コンで女性役を降りるとは思えない。

 それとも、この前のデートの事を気にしているのだろうか……。



「大丈夫だよゆう君、お姉ちゃんはちゃんとゆう君のこと狙ってるから」

「うん、その心配はしてないが、なんで?」

「これはね『本当は男食なんだけど世間体を気にしてとりあえず合コンとか出て女性に興味ある風を装っている男性』っていう設定だから、さりげなくゆう君の隣に座って太股とか撫でまわすから!」

「すっげぇイヤだ?!」



 なんでこんなどうでもいいイベントに無駄に細かな設定なんだよ!

 ちょっと心配して損したわ!!



「シュエリアかこれ考えたの!」

「男性をやれそうなのってシオンだけだったんですもの」

「リセリアとかお前と顔似てるんだからいけるだろ?!」

「あの子は男装とかしないですわ、男嫌いなんだから」

「……そうだった」



 ということは、本当にこれでやるしかないのか……。

 男俺しかいないのに……。



「ということでさっそく合コン始めますわよ!」

『はーい!!』

「……はーい」



 シュエリアの掛け声と同時に上がる元気な声が4つ。

 死んだような声が一つ。俺だ。



「ではとりあえず、なんだったかしら? 自己紹介から始めるものなのかしら?」

「そうだと思うよシュエ……君」



 シュエリアのことを君付けで呼ぶ姉さんの顔は今にも笑い出しそうだ。この人は相変わらず笑いの沸点低いな。

 というか、今男役だからってわざわざ君呼びなのか……。

 そしてそれを聞いたシュエリアがハッと何かに気づいた。



「……凄まじく違和感ありますわね……あるわ……あるな……違和感あるぜ」

「お前のほうが違和感凄すぎるんだが」



 なんで無理やり喋りまで男にするかな……別にいいだろ、どうせ本当に男なの俺しかいないんだし、雰囲気で。



「じゃ、じゃあまずは。男性陣から自己紹介しますわ……しよう……するぜ」

「お前もう普通にしゃべれよ……」

「いや、でも、ほら、ね?」

「こっから先ずっとそれだと話中々進まないだろ? いつも通りでいいよ」

「そ、そうですわね……」

「ぷっ……ふふ……くふふ」



 俺の助言に従って素直にいつも通り喋り出すシュエリア、とこのやり取りを見て既に笑ってしまっている姉さん。

 というかそもそも君付けで呼び出した姉さんはもう既に設定に飽きたのかいつも通りだ。



 そんな感じの俺達の自己紹介は結局いつも通りの自分たちを語っただけで終わり、とりあえず本題に移ることになった。



 その本題とは、シュエリアがやりたかった『合コンっぽいゲーム』である。



「まずは王の名の付く王道ゲーム! 王様ゲームですわ!!」



 シュエリアは勢いよく立ち上がると右手を掲げた。

 その先端には一つだけ赤いマークの付いたものがある。



「この赤いマークの付いた箸を取ったら王様ですわよ。王様は1から5までの番号を指定して、命令をしますのよ。王様の言うことは絶対ですわ。ただし、エロ方面や人権無視したような命令はアウトですわよ?」

『はーい』

「では、始めますわ」



 シュエリアの軽いルール説明と皆の返事の後、シュエリア以外の全員が一つずつ割りばしを握り、一斉に引き抜く。

 ちなみに関係なのだが、この王様ゲーム、実はイマドキではなく若干古い部類に入るらしい。



『王様だーれだ!!』

「……わたし~ですねぇ~」



 記念すべき最初の王様は、魔王様だった。

 これ、この人に当たっちゃいけない奴な気がするのは俺だけだろうか。

 こう見えて結構天然でドSだからな……。



「では~3番の方が――」



 俺がトモリさんの命令に不安を覚えていると、トモリさんから番号の指定が出た。

 俺は5番だ……とりあえずこれで大丈夫そうだな。



「5番の方に~タイキック~」

「どうしてそうなる?!」



 変化球過ぎるわ!! なんでそこでピンポイントに俺に来る?! っていうか俺以外が当てられたら女の子同士でタイキックだよな?!



「その様子だと、5番はユウキですの?」

「い、いや、そうだけど、俺が三番の可能性もあったよな?」

「無いですわよ、わたくし3番ですもの」

「…………」



 おう。これは……。

 一番加減しなさそうというか、痛そうな奴が来たな……。



「大丈夫ですわ、蹴る場所は指定されていないから、痛くないように蹴りますわ」

「そ、そうか」

「とりあえず、ふくらはぎでいいですわね?」

「いやそれ普通にキツイ奴だよな?!」



 タイキック、何処に食らっても痛そうだけど、それだと脚がダメになりませんかね。



「まあまあ、ここでゴネても進みませんわ?」

「そ……そうだな……」



 ……よし、腹をくくろう。

 俺は覚悟すると目をつむり、歯を食いしばった。

 きっと毎年恒例の『田〇タイキック』もこんな心持ちだろうな。



「よし、準備は良いですわね……? ふっ!!」

「っ痛ぁああああ?!」



 掛け声とともに訪れた蹴りは、確かにタイキックっぽくはあった、しかしだ。

 当たった場所が尻だった。

 来ると思っていた場所に来ず、来ないと思っていた場所に来たせいで、その痛みたるや、もうあれだ、尻が割れる。



「――~~っ! おま……ノーコンかよ……!!」

「実は狙ってましたわ。心理作戦の勝利ですわね」

「……俺は何に負けたのか……」

「王様ゲームという、悲しいゲームにですわ」

「……さいですか」

「さいですわ」



 俺は痛みでうずくまっているというのにシュエリアはそんな俺を見て心底おかしいのを必死に堪えているように顔がニヤニヤしている。

 しかも周りの連中と来たら姉さんとリセリアはそのやり取りを見て「いいなぁ……」とか言ってやがるし、トモリさんは恍惚とした表情、唯一味方をしてくれそうなアイネは暴力系は苦手なので観ないように顔を手で覆っている。



 俺に味方はいないってことか……。

 よし、俺が王様になったらやることは決まった。くそ、覚えてろよ。



「それでは次ですわ」

『王様だーれだ!!』

「あらま、お姉ちゃんに来ちゃったねぇ」



 ワザとらしく首をかしげながら「うーん、どうしよ」と悩む姉さん。

 この人もこの人でヤバい命令をしそうだ。

 今更だがこのメンツで王様ゲームとか地獄絵図待ったなしなのでは……。



「じゃあ2番が――」



 ッチ……この人の番で、またしても俺の番号だ。

 しかしまあ、まだだ。まだ俺が酷い目に合うとは決まっていない。

 もしかしたら他の番号に何かするとかかもしれない。



「王様に膝枕!」

「地味に嫌だ!!」



 なんでこういう時に限って微妙に美味しくない事言うかな!

 これならまだ蹴られた方が落ちが付くというものだ。こんなの単に空気が微妙になるヤツじゃねぇか!



「その様子だとまたユウキですの? 狙い撃ちですわねぇ」

「もう既に死体撃ちの域だけどな」



 俺はシュエリアの言葉に半ば瀕死で返事をしながらも、姉さんの隣に座って膝枕をしてやった。



「でゅへへ、お姉ちゃん大勝利~!」

『……ジーッ』

「…………うっ」



 なんだろう、なんか数人から物凄く怖い目で見られてるんですが。

 このままだと時間指定してないからゲーム中ずっととか言われそうだ、そしてその間続くSAN値下がりそうな刺さる視線。



 これは俺の意思じゃないというのに……これは姉さんがたまたま…………ん? たまたま?



「姉さん、これ、俺以外と当たったらどうするつもりだったんだ?」

「ふぇ~?」



 そう、たまたまだったのだ。

 普通に考えたらたまたま当たる可能性はあっても、それは5分の1だ。

 そんな賭けを姉さんがするだろうか。



「姉さん、俺の番号知ってたな?」

「…………あちゃあ、もうバレた……さっきゆう君の後ろに回り込んだ時に仕込んどいた鏡で観てたからね!」

「なん……だと……」



 言われてみると、確かに俺が座っていた位置の後ろ側、タンスの上に手のひらサイズの鏡があった。

 っていうかこの距離でアレに映った箸の印が見えるとかどういう視力してんだ……。



「な、ならっ。反則だから膝枕終了ですねっ」

「ですわね。はいはい、終了終了」

「あぁ……ざーんねん」



 そうは言いながらも姉さんは十分堪能したのか、笑顔だった。

 片や姉さんと俺を引き離そうとするシュエリアとアイネはそこはかとなく機嫌悪そうだが。

 ふぅ……とりあえずこの鏡は回収しよう。



 俺が元の位置に着くと、次のゲームが始まった。



『王様だーれだ!』

「あ、わたしですっ」

「アイネか、よかった」



 王様のくじを引いて顔をキラキラさせるアイネを見て、俺は安堵した。

 アイネならきっと可愛いおねだりとか、ちょっとしたイタズラ程度だろうしな。



「それではですねっ、1番の人が5番の人と……」



 お、今回の番号は両方とも俺じゃない。

 これなら安心――



「一緒に2番の人を胴上げします!」

「まさかの第三の人物っ!!」



 くそうっ油断した! っていうかなんでさっきから俺が狙い撃ちなんだ!!!!

 でもまあ……今回のは本当に運だろう……もしアイネが俺の番号知ってたら自分と何かさせようとしたハズだ。



「その反応、まさか」

「……そのまさかだ」

「おいしいですわねぇ」

「クソくらえだ……」



 確かにネタとしては三度狙い撃ちされるとかオイシイ弄られ方と言えなくもないが、このメンツに弄られると心身に来るんだよ。

 もう、ただの胴上げすら嫌な予感しかしない。



「……で、1番と5番は……」

「わたし~ですねぇ~」

「ッチ……なんで私が男の胴上げなんて」



 わー、すっごく嫌なメンツだ。

 一人は力加減しくじったら殺されそうな天然ドS魔王、もう一人は男嫌いで尚且つシュエリアと仲のいい俺を敵視してる百合エルフ。



 確実に酷い目に合うな。



「では行きます……ねぇ~」

「全力で……かつ大胆に……」

「……既に嫌な予感しかしねぇ……」



 もうこの二人の言葉から最悪の未来しか見えてこない。

 せめて無言でやって……いや、それも怖いけど。



『せっーのっ!』

「ちょまっ?!」



 二人の掛け声と同時に俺の体が宙に浮いた……その感覚は今まで一度も胴上げをされたことのない俺にでもわかる――



「ぬぁあああああああああっ?!」

『バリィインッ!!』



 ――明らかな、人間大砲だった。

 俺の体は縦ではなく横に吹き飛び、窓ガラスを割って外に放りだされ、地面までかなりの勢いで飛んで行った。

 家の庭に着弾した俺は、結構な重症を負わされた……ギャグマンガのようには行かないこの激痛よ……もっとコミカルにしてダメージ無い風にはいかないものか。



「……えげつないですわね」

「に、兄さまに回復魔法掛けてきますねっ!」

「あら……流石にこれは、お姉ちゃんおこだよ?」

「あらぁ……? 横には~投げていない~です~?」

「ちょっとまってくださいシオンさん! わたしだけじゃないですよ?! その顔とヤバそうな拷問器具を向けるのやめっ――」



 この庭からでも彼女たちの喧騒が伺える……というか意識はハッキリしている辺り体は痛いものの意外と平気なのか?

 これもいつもシュエリアの無茶に付き合っているせいだろうか……。体が強くなった気がする。



「兄さまっ大丈夫ですかっ?」

「お、おう、かなりの激痛だが、死にはしないな」

「すみません……私があんなこと言ったから……」

「いや……あれは……アイネのせいではないだろ?」

「でも……」



 アイネはそれでも納得できないのか、泣きそうになっている。

 いや、本当にアイネは悪く無いんだけどな。



「悪いのは今姉さんにシバかれてる百合エルフと力加減間違ってしまった天然魔王だから」

「うぅ……それでもごめんなさいですっ」

「……はは、アイネは優しいな。よしよし」

「にゃ…………ふふっ」



 俺がこれ以上アイネが気にし過ぎないように、いつものように頭を撫でてあげるとアイネはいつもとはちょっとだけ違う笑顔で笑いかけてきた。

 はぁ、全く、この優しさと可愛らしさをもうちょっとあのヤバイ連中にも見習ってほしいな。



「で、戻ってきたんだが」

「あー、ゆう君おかえり! 犯人はちゃんと締め……躾けたから大丈夫だよ!」

「おいまて、今なんて言いかけた」



 俺のツッコミに「え? なんのことかわかんなーい」と首をかしげてとぼける姉さん。

 しかしその横には恐らく「犯人」であるリセリアが正座しており、首にはさきほどまではしていなかったゴツゴツした厳つい首輪がしてある。



「それは……?」

「これは、シオン様が作られた感謝しないものへの試練の首輪です」

「おう、急にスプラッタなアイテム出てきたな」

「これから先のゲームで、ユウキさんに失礼をした場合、首輪が作動して死にます」

「おーい、誰かこのS〇Wみたいなゲーム止めろ?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめんなさい……」

「……これアカンやつだろ」



 ごめんなさいを連呼するリセリアの目は曇っており、これは完全にアウトだ。



「姉さん、やりすぎ」

「うーん、そだね、ちょっとキレてやり過ぎちゃった。てへぺろー」

「そのギャグをここで使うな……」

「うんうん、ごめんごめん。とりあえず洗脳を解除しようね~」

「これ洗脳してんのかよ?!」



 この姉……ど畜生すぎるだろ……クズか……クズだな……?



「……はい。これでリセっちはいつもよりちょっとゆう君に優しいリセっちになりましたっと」

「おい、まだ半ば洗脳してんじゃねぇか」

「まあこのくらいはね? サービスサービスゥ」

「人様のネタを扱う時はもっと丁寧に扱えよ!」

「あははははは」



 以前から思っていたが、この姉はボケとツッコミが雑過ぎる……。

 特にボケに至ってはもうなんというか、本当にてきとうで、落ちとか着地点を考えてない、最終的に笑ってごまかすとか、かなりひどい。



「そんなことより、王様ゲーム、続けないの?」

「あ、あぁ……」



 姉さんに促されて、話が元に戻った気がするが、そもそも逸れたのはこの人の所為な気がしないでもない。 



「どうするシュエリア」

「そうですわねぇ……割と楽しめたし、王様回りきるまでだと被りも考えると長引くし、次のゲームに行きますわ?」

「……次があるのかよ」



 王様ゲームが終るのは嬉しいんだが……うん、次があるのはすげぇ嫌だ。



「で、次のゲームですけれど」

「ん? なんだ」



 俺の問いに、シュエリアはある物を突き出してきた。

 それは。



「ト〇ポゲームですわ!」

「なぜ普通にポ〇キーゲームではないのか……」

「最後までチョコたっぷりだからですわ」

「何処の回し者だお前は」



 いや、まあ。俺も正直ト〇ポは好きだけど。

 でも別に、ゲーム名を関するポ〇キーでよくないか?



「わたくし、これに関して常々思っていましたの」

「……何を?」



 俺の問いに、シュエリアは何か勿体ぶった様子で口を開いた。

 ……どうせまたロクでもないこと言うんだろう。



「両サイドから食べ始め、キスをするかしないかで寸止めするこの自らのセクシャルな部分を賭したチキンレース、一見お互い平等なルールに見えて、実は重大な問題があるのですわ」

「もう既にお前の思考が重大な問題発生中だよ」

「実はこのゲーム――」

「あ、続けんのね」



 俺のツッコミには目もくれず、シュエリアはゲームの説明、その最も重大な問題点とやらを口にした。



「――ポ〇キーゲームに使われる、ポ〇キー……」

「ん?」



 ポ〇キー……? それがどうしたというのか。



「片方にしかチョコが付いていないから反対側から始めたプレイヤーは味覚的に不利を背負うのですわ!!」

『うっわすげぇ(すごく)どうでもいい!!!!』

「どうでもいいってなんですの?! 重大案件ですわっ!!」



 俺達の激しいツッコミに、テーブルを叩いて反論するシュエリア。

 いや、これはこっちが正しくないか?



「チョコ側と生地側を食べるプレイヤー、この格差はまるで兵糧が芋しかない貧乏殿と米を炊き出している将軍様くらいの差がありますわ! そんなことではプレイヤーの士気の低下を招き、生地側を食したプレイヤーが負けることは必然!」

「お前の中のポ〇キーゲームはどんだけ殺伐としてんだよ?!」



 なんでそんな例えからしてもう既に死地に立つ武人のような言い草なんだよ……。



「ポッ〇ーゲームそれは退くことの許されない、ただ前を見据え、突き進む者の戦ですわ」

「言い方が大袈裟過ぎるだろ!!」

「そんなことないですわ! やったことも無いくせにポ〇キーゲームを舐めるんじゃないですわ!」

「お前もやったこと無いだろ!!」



 いや、もしかしたらコスプレ喫茶辺りではやったことがあるのかもしれないが、この語りからしてその可能性は薄いだろう。

 というか、こんな意気込みでポ〇キーゲームなんてして大丈夫なんだろうか。

 俺がシュエリアのテンションに若干の不安を覚えていると、シュエリアがコホンと咳払いをした。



「とりあえず、そんな訳で、両プレイヤーに不公平が無いようト〇ポを使うのですわ」

「……まあ俺もト〇ポ好きだからいいけど」

「でしょう? なら決まりですわね。ということでゲームをするプレイヤーをくじで決めますわよ、ほら、引くがいいですわ」

「はいはい」



 俺達はシュエリアの指示に従いくじを引いた。

 くじ自体はさっきの割りばしと同じで、今回は印の付いたものが2つあるだけだ。



「で、また俺か」

「あらいやですわ。わたくしの相手がユウキだなんて、最初から決勝戦並みの出オチですわ」

「人をオチにするなよ」



 俺の言葉にシュエリアは耳を貸さず「はぁー」と長くため息を吐いた。

 なんつう態度……こういう時ヒロインならちょっとくらい恥じらってくれてもよくないか。

 というか、一応今のシュエリアは男装していて男役のはずなんだが、良いんだろうか、仮とはいえ男同士でっていうのは。



「なあ、一応、今のお前は男なんだが、いいのか? 男同士で」

「いいですわよ、それはそれで面白い事ってあると思いますわ? さて、やるからには本気で行きますわよ!」

「……まあいいか。とはいえポッ〇ーゲームで本気も何も無いと思うけどな」

「ふんっ。言っていればいいですわ。本当の闘いを知らない愚かな男ですわね」



 シュエリアは言いながら、箱からト〇ポをとりだして先端を咥えると、俺にそのまま顔を突き出してきた。

 ……なんだろう、普通これほどの美少女とやろうとしたらドキドキしたりするはずなんだが……。



「ジーーーッ」

「…………」



 相手の美少女がガチの真顔で全く興奮しない。

 なんだろう、むしろ別の意味でドキドキしている気がする。

 これは、殺気?



「……ごくりっ」



 俺はその威圧感に喉を鳴らしながらも、対戦を待つシュエリアの咥えるト〇ポの対岸を咥えた。



「それれは、はひめまふわ」

「お、おふ」



 シュエリアの言葉に返事を返すと同時。

 俺達の戦いは始まった……!!



「カリ……カリ…………カリッ」

「ポリ…………ポリ……」

『…………』



 その戦いは決して激しく無く、むしろ互いに間合いと呼吸を図り、じっくりと詰めていく達人同士の立ち合いのようである。

 そしてこの戦いを見届ける皆の目も真剣そのもの――ということもなかった。



「カリ…………ポリ」

「……ポリ…………ポリ」

『(うわー。地味だなー)』



 なんだろう……ギャラリーの目が冷たいんだが。

 俺達のこの接戦、そんなに変か?



「……お姉ちゃんこんな殺伐とした盛り上がらないポ〇キーゲーム初めて見たよ……普通はもっときゃっきゃしながらやるものだと思うんだけど……」

「兄さま達は本気になる場所がおかしいですからねっ」

「凄く~シュールです~ねぇ~」

「お姉様っあんな本気でキスしようとして!!」



 なんか最後の一人だけ感想がおかしい気がするが、概ね俺達のこの戦いは変だと思われているようだ。



「(しかし……負けるのは凄く嫌だな)」

「んぐ……んぐ……」



 そう想いながら、俺はト〇ポを食べ進める。

 しかし、そうは言ってもこれはただのトッ〇だ。



 特段ゲーム用に長くつくられていたり、強度があるわけではない。

 故に、もうゲーム終盤まで来ている現状では、もはや歯を立てて削るような真似はできない。

 少しずつ、少しずつ、お互いにポッキーを唾液で柔らかくし、前歯で削るように間合いを詰める。



「…………」

「…………」

『(うわぁ……何だろうこの絵面)』



 周りからの痛々しい視線も気にせず、ついにお互いに動けなくなった。

 下手に動けば相手に触れてしまいかねない、そんな距離だ。



「…………」

「…………」

『…………』



 先ほどまで半ば呆れたように見ていた外野も、流石にこの緊張した空気を感じ取り、息をのんで見守っている。

 しかし…………しかしだ。



 これ……終わら無くね?



 今にして思えばこのゲーム、どうしたら終るのか。

 照れて口を話したら負け? この状況でそれはない。

 キスしたら負け? 互いに負けず嫌いを発揮していて心中負けとかありえない。



 では、どうしたら……。



 俺がそう思っていると、シュエリアの様子が変わった。



「…………ふっ」

「…………?」



 この状況で、口を使えないので鼻で笑うシュエリア。

 なんだ……いったい何を……。



「…………ふぇい」

「……?!」



 シュエリアは変な声(恐らくえいっと言ったんだろうが)を出すと、あろうことか――



「……ちゅ」

「っ?!」



 ――あろうことか、キスをしてきた。



 な……なんでこう……なった?



「な、な、なっ!! 何してんのシュエちゃんっ!!!!」



 この状況に一番最初に大声を出したのは姉さんだった。

 その姉さんの声に反応するようにシュエリアは俺から口を離すと、姉さんの方を向いた。



「何って、キスですわ?」

「キスって……な、なんで?!」

「? なんでって、このゲームやったら、そうもなるでしょう?」

「な、な……なっ?!」



 珍しく激しく動揺する姉さん。

 この手の事案でキレずにきょどる姉さんは初めて見るな。



「むしろならないと思ってましたの? なりますわよ、だって『好意のある相手』としているんだもの。普通ですわ?」

「な、でも……ゆう君は違うかもしれないでしょ?!」

「ユウキだって好きでもない娘とやるほどアホではないですわ」

「…………まあ、確かに」

「ゆう君っ?!」



 俺の返事に驚いて俺の目をまっすぐ見つめ返してくる姉さん。うん……。



 姉さんには悪いんだが、正直、好きでもない娘とこういう事はしない人間だ、俺は。

 正直、あのほぼゼロ距離で見つめ合いになった時。こうなるかもしれないくらいには思っていた。



 ただ予想外だったのは。キスに関しては俺の願望で、シュエリアから来るとは全く思っていなかったということだ。



 この前の義姉さんといい、よくキスされるなぁ……俺。 



「これに関しては俺も悪かったな……正直、男としてこの展開をちょっと期待してた感はある」

「ほら、ユウキだって大満足ですわ」

「そこまでは言ってないが……」

「む……むぅ……」



 俺が肯定したことで、姉さんもこれ以上言いにくくなってしまったようで、不満はありそうな顔だがとりあえずは矛を収めてくれた。

 とはいえまあ、それは『姉さんは』である。



「わ、わたひも兄さまときひゅしたひでふっ!」

「おー、見事に噛みまくりだな。落ち着けアイネ」

「ふっ……フーーーッ」

「まんま猫の威嚇みたいになってますわね……」



 シュエリアの言う通り、アイネの深呼吸は怒りを表したように威嚇みたいになっていた。



「……私も兄さまとキスしますっ」

「いや、アレはゲームの流れで、ト〇ポ食った結果であって……」

「じゃあ私も兄さまにト〇ポ食べさせますっ! 口移しでっ!」

「それも違うからな?!」



 アイネは未だ動揺しているのか、ちょっと色々おかしい。



「まあまあ、アイネ、くじをまた引けば、ゲームは始まりますわ?」

「にゃっ……ふぅー……そうですね、兄さまと……ごくりっ」

「……ゆう君……たべ……」

「なんだろう、凄く身の危険を感じる」



 とりあえず現段階で俺は姉さんとアイネに狙われているのは分かった……分かったが。

 実は俺が気になっている、身の危険はそれではない。

 いや、確かに彼女らも危険なんだが。それよりヤバいのが居るはずなのだ……それは――



「ね……さま…………さまが……」



 ――そう、あそこでぶつぶつと何かをつぶやきながら、その瞳が焦点合わずにぐらぐらしている百合エルフ、リセリアである。



 彼女はシュエリアの事を心底愛しているので、これに関しては俺が命を狙われかねない……と思ったのだが。



「姉様は……本気で……そっか……」

「……あれ」



 危険かと思ったのだが、リセリアは暫く危うい様子だったのが嘘のようにどこか大人びた表情になってしまっていた。

 ……逆に怖いな。



「さーて、次のゲームいきますわよ!」

「お前ほんとにブレないな……」

「何がですの?」

「いや……いいけど」



 この混沌の空気を作った本人、自覚無し。

 至って楽しそうに次のゲームを始めようと、笑顔を振りまいていた。



 まあ、しかし。これはチャンスだ。

 ここで俺がくじを引けば皆も引くだろう。そうすれば流れが変わるかもしえない。

 そう思って俺がくじを引くと、案の定、俺とゲームをしたいアイネと姉さんから始まり、皆くじを引いた。



「で、今回は誰でしたの?」

「わ、わたしっ、お姉ちゃん!」

「わたし~もです~」

「…………はは……たのしもー」

「もう既に姉さんが負けたような顔してんだけど……」



 なんだあの全く楽しめない顔……目が死んでる。



「それでは二人とも、ト〇ポを咥えて――」

「はふっ~」

「……んく」


 シュエリアの指示に従い二人ともト〇ポを咥えているが、トモリさんはニコニコ楽しそうだが、姉さんはあまり乗り気でないようだ。



「――ゲームスタートですわっ」



 それでもシュエリアは気にせずゲームのゴーサインを出した。

 そして、分かってはいたがトモリさんはゆっくりとだが、確実に食べ進めていた。



 しかし、俺はここで一つの過ちに気づいた。

 それは――



「…………ガブッ!」

「……んふ~っ?」



 ――姉さんは、勝負事で手を抜かないということだ。

 先ほどまでは目が死んでいたとは思えない程の、圧倒的な攻め。



 姉さんはト〇ポを一気に半分ほどまで頬張った。



「ガリガリガリガリガリガリッ」

「ん……ふ……ふぅ?!」



 姉さんの真顔にその攻めの勢いも合わさり、その様はまさに不退転の覚悟を決めた武士のそれ。

 その勢いに気おされ、あの天然とはいえ魔王であるトモリさんが――



「ぷはっ……ま、負けました~」

「……ガリ……ふぅ」



 ――あのトモリさんが、自ら口を離し降参していた。



「ふぅ……シオン~さん~キスしようと~してません~でしたか~?」

「そうなったらそれまでのことだよ……ね? シュエちゃん?」

「え……えぇ……そ、そうですわね?」



 トモリさんの問いに答えた姉さんに話を振られ、その威圧的な笑みに、シュエリアはたじろいでいた。



 うん、姉さんって本気になるとラスボス感すげぇな。



「それで、次はどうするのシュエちゃん」

「え? あぁ……そうですわね」



 姉さんとしてはまだこのゲームを諦められないのだろう、何しろ勝ったとはいえ、相手は俺ではなくトモリさんだったのだし。

 だがシュエリアはそうでもないようだな……。



「……ぶっちゃけ、飽きたわね?」

「……イラっ」

「……チッ」

「おい、シュエリア、なんか黒いのが沸いてるぞ」

「そ、そうですわね……」



 まだト〇ポを使って俺とキスを狙いたい二名からダークなオーラが出ているんだが……。

 まあ、俺としては終わってくれるとありがたいんだが。



「……次は定番と言われている第一印象ゲームとかしてみたいですわ!」

「第一印象……」



 シュエリアとしては兎に角合コンっぽいゲームをしたいのだろうが、俺らが今更第一印象ゲームって……。

 今更第一印象も何も無いだろうに……。



「まあ、ぶっちゃけわたくし達って第一印象も何もないから、ただの印象ゲームですわね?」

「思ったより本人が理解しているからツッコミの要素が無いという」

「ツッコミたかったんですの……?」

「いや……そういう訳でもないが」



 そういう訳でもないんだが……そこはほら、ボケないと……と思ってしまうのはシュエリアとの付き合いが長くなってきた所為だろうか……。



「ということで、早速始めたいですわ」

「そうだな……ルールは?」



 俺が問うと、シュエリアはふふん、と胸を張ってスマホを出した。

 あぁ……ルール、覚えてないんだな……。



「えっと……まず親を決めて、親がお題を言いますわ? そしたら、メンバー全員でお題に合っていると思う人物を指さして、一番選ばれた人物が罰ゲームを受けますわ」

「なるほど……お題っていうのは?」

「それはまず、わたくしが親になってゲームを始めればわかると思いますわ!」

「そ、そうか」



 まあ、ルールがわかるのはいいんだが……コイツが親なのが決定な時点で、嫌な予感しかしない。



「それでは……こほんっ。まず最初のお題は……一番ツッコミが多い人ですわ!」

「おい待てコラ!!」



 そのお題だと俺が負け確定じゃないか?!

 だがしかし、俺の制止は無視してシュエリアはゲームを進める。



「行きますわよ? いっせーのっ――」



 シュエリアの掛け声に合わせて皆が一斉に俺に指を向けた。



「あらー意外ですわー」

「嘘つけ?! 完全に俺狙い撃ちだろこのお題!!」

「ソンナコトナイデスワー」

「お、おま……」



 い、いや、一回目だし分かりやすいお題って言うのはわかる……わかるが……わかるんだが。



「ということで、ユウキ、潔く罰ゲームですわ?」

「はあ……で、どんな罰ゲームよ」

「これですわ」

「っ……これは……」



 罰ゲームを受ける俺の目の前に出されたのはとてつもない香りを放つ透明な液体……。



「こ……このアルコール臭は……」

「スピリタスですわ」

「アホかお前?!」

「失礼ですわね……合コンと言ったら、お酒でしょう?」

「い、いや……そうだが……そうなんだが」



 いやしかし、これは……ダメだろ?

 だってこれ、度数が90越えてんだぞ……?



「大丈夫ですわ、こう見えて水で割ってますわ」

「……マジで?」



 その割には物凄いアルコール臭なんだが……。



「マジですわ、マジマジ」

「…………おう」



 ま、まあ……流石に大丈夫だよな? こんなの素で飲んだら絶対喉が炎上してのたうち回るだろ……。



「じゃ、じゃあ……ゴクッ…………あ」

「……あ?」

「あぁ……あ…………あ」

「え、ちょ、ユウキ?」



 あー…………これ……ダメだわ。



「これは、酒ではない」

「そ、そんなに酷かったんですの?」



 ちらっと見ると、シュエリアが凄く不安そうな顔で見てる。

 あぁ……一応コイツも危険物だとはわかっていたんだな……。



「……うん、これは……水だな」

「……へ?」

「いや、だから、水」



 俺がそう言うと、シュエリアは何を勘違いしたのか、近くに準備してあったコップに魔法で水を汲んで渡してきた。



「だ、大丈夫ですの?」

「あぁ……いや、そういうことではなくだな」

「??」

「これ……水入れ過ぎて、殆ど水」

「へ。あ、そういうことですの?」

「うん。シュエリアも危険物だから色々考慮していたんだろうけど、ここまでやったらただの水だな」

「あぁ……そうだったんですの」



 俺が余りの被害に言い淀んでいた訳ではないと知ると、シュエリアはホッと胸をなでおろした。

 こんな一歩間違えれば危険な酒を用意しておいて一応まだこのエルフにも心配とかしてくれる程度には常識はあったようだ。



「おう、リアクションに困る内容だったな。もうちょっとうまい具合に割ってくれたら面白かったな」

「水だとわかってからやたら流暢に喋りやがるわね……いっそ喉が焼けただれたらよかったのに」

「そこまで行ったら酸か何かだろ……」



 流石にそんな状態になったらさっきからジーっとこちらを見ている姉さんたちも黙ってないと思うんだが。



「ま、まあ、これでゲームの内容もわかったでしょうし、次の親を決めていきますわよ! はい、くじですわ!」

「はいはいっと」



 俺が適当に返事をすると、先ほどまでの様子を見守っていたメンバーたちもシュエリアに従ってくじを引く。



「これで親になった人から時計回りにしますわ?」

「ふむ、なるほど、俺じゃないな?」

「あ、私ですね」



 声を出して挙手したのはリセリアだった。

 座っている位置から時計回りだと順番はリセリア、トモリさん、アイネ、姉さん、俺、シュエリアだな。

 これもう、シュエリアから時計回りしたのとかわらねぇな。



「それでは私からお題を……お題は、一番美しい人です!」

「……何かしら、嫌な予感がしますわ」

「流石、自信家のシュエリアだな、もう既に自分が一番と思っているのか」

「でもこれ……そういう流れですわよね……?」

「……ノーコメントで」

「…………」



 俺に突き放されて、真っ青な顔をするシュエリア。

 いや、まあ、スピリタス用意した本人がさっそく狙われてしまっているわけだから、わからなくはないが。



「それでは行きますよ、いっせーのっ!」



 顔が真っ青のシュエリアを無視したまま、リセリアの掛け声とともに指がさされる。

 結果はもちろん。

 シュエリア2、姉さん4だった。



「ちょ、えっ! ふぁっ?! なんでお姉ちゃんなの?!」

「いや、そりゃな……」



 正直こうなるのかはある意味わかっていた。

 何故なら俺がシュエリアを指したとしても、精々あともう一人、リセリアが確定しているだけだ。

 シュエリアは当然自分が罰ゲームは嫌だからこの中で一番票が行きそうな人を狙って指さすだろう。



 と、なった時にだ。



 この中で選ばれる確率が高いのはトモリさんか姉さんだ。

 リセリアはシュエリアに似てはいるが、それだけにシュエリアの方が美人というのもあるので可能性は非常に低い。

 そうなった時に、トモリさんと姉さんなら姉さんに票が行くのは仕方が無いのだ。

 何故なら、魔王を選んで魔王にあんな凶悪な酒を飲ませるのは、どう考えても地雷だからだ。



 で、結局、内訳は姉さんとリセリアがシュエリアに、他が姉さんにといった感じだ。



「……ま、まじでお姉ちゃんなの?」

「ふ。ふふ。シオンってキレイですものね! いやあ、負けてしまって悔しいですわぁ」

「ぐぬ……その割には嬉しそうだね?」

「えぇまあ、ユウキがシオンを指したのは絶対許さないけれど」

「えっ?! 俺に飛び火すんの?!」



 な、なぜそうなるんだ……。



「だってわたくしって一応ユウキの嫁ですわよ? それを他の女を指さすって、何事ですの」

「いやあ……それは……なぁ」

「なんですの?」

「お前さしたら、罰ゲーム受けた時に絶対俺に腹いせするじゃん?」

「…………しますわね」

「清々しいクズっぷりだな。否定しとけよ」

「仕方ないですわ。ここでしないと言ってしまうとこの後腹いせできないですもの」

「凄く素直なクズだな?!」



 そこまでして俺に罰ゲームさせたいか……。なんという執念。



「まあそれはさておき、シオン、罰ゲームですわ?」

「ぐっ……ま、まあお姉ちゃんお酒めっちゃ強いから余裕だけどね!!」



 姉さんは何か強がりのようなものを言いながらスピリタスを手に取った。



「ちょ、ま……姉さん?!」

「んぐ……んぐ……」

「う、うわ……」



 姉さんはスピリタスを手に取るとそれをそのままに『瓶』ごと行った。

 そう、あの世界最高度数の酒を、割らずに、瓶ごとだ。



「……ぷはぁ。いやー喉が燃えるねぇ~ふひぃ~」

「……う、嘘だろ」

「マジで平気そうですわね……」

「? だからお姉ちゃん強いって言ったじゃない?」

「じゃあなんで飲むの嫌そうだったんだよ……」

「これ単体だと単純に美味しくないから?」

「お……おう」



 その理由事態はそれだけ聞けばわからないでもないが、スピリタス相手だとそこじゃないだろ! ってツッコミたくなるな。



「ふぅ……さー次行こーすぎぃー」

「お、おぉ」

「そ、そうですわね」



 なんか姉さんのテンションが微妙に変というか、微妙に呂律回ってなかった気がするが、まあスピリタス飲んだ後だし……な。



「次はトモリの番ですわね?」

「そう~ですね~それでは~」



 名前を呼ばれるとトモリさんはソファから立ち上がり少し首をかしげると直ぐに何かを思いついた表情をした。



「では~一番~胸の小さい~方~を~」

「……ピキ」

「…………うん、これは」



 これは完全にアウトだろ……こんなの……100%決まっている……。



「ユウキ……」

「な、なんだ」

「わたくしを選んだら、わかってますわね」

「このゲームで脅しとかダメじゃね?!」



 まあさっきからほぼシュエリア狙い撃ちのようなお題だし……気持ち的にわからないでもないが。



「それでは~いっせ~の~」



 トモリさんの掛け声とともに、皆が一斉にある一人を指さすその相手は……。



「にゃ?! わた、私ですかっ」



 指さされたのはアイネだった。ちなみにアイネはシュエリアを指さしていた。



「にゃにゃんでですかっ」

「いや、シュエリアはまだあるけど、アイネはな……」

「で、でもほら、私子供ですよっ、お酒とかダメですよっ!」

「アイネは見た目は子供、中身は大人でしょう? 大丈夫ですわ?」

「そっ……そうですけどっ」



 まあ、俺としてもちょっと可哀そうだなとか思わないわけではないのだが。

 ゲームだし致し方ない。というかもうスピリタスは無いから、大丈夫だろう、多分。



「実はアイネには度数の低いお酒を用意してあるから大丈夫ですわよ?」

「あっ……そうなんですかっ」

「えぇ――ほら」



 シュエリアは魔法で空中からお酒を取り出すと、注げと言わんばかりに俺に渡してきた。



「ってこれ、ノッキーンじゃねぇか?!」

「? スピリタスより度数は低いですわ?」

「基準値がおかしい!!」



 これも度数90あるアホみたいな酒じゃねえか……これ、飲むのか。



「正直、ポチーンって名前がツボったから買った感は否めませんわね」

「お前本当に最低な下ネタ好きだな」



 いくらなんでもこれをアイネに飲ませるのは……どうなんだよ。



「にゃんかによいでにょってきたんれすらっ」

「おい、もう手遅れなのが居るんだが」

「……マジですわね」



 臭いだけで酔って呂律が回ってない……見た目は子供で年齢は大人とはいえやはり体は子供だったのかもしれない。



「じゃ、じゃあ……一応罰ゲームの為に99%水にして飲ませますわね……?」

「そ、そうだな」

「にゃ?」



 なんかもう、既に酔いが回って猫化してるんだが、大丈夫かコレ。



「ほ~ら、お水ですわ~」

「にゃー、ぺろぺろぺろ」

「皿に注がれた酒を舐める少女って絵面が犯罪臭しかしねぇな」



 アイネの姿は非常に可愛いんだが、人間の姿のままだから顔は火照って赤くなってるし、人の姿で四つん這いで皿から酒を舐め飲んでいる姿はかなり見た目がヤバい。



「と、とりあえず次に行こうと思いますわ?」

「そ、そうだな……じゃあ次は……」

「ふっふっふ……はーっはっはっは!! お姉ちゃんらよ!」

「あぁ……」



 そうか、次はスピリタス姉さんか。

 明らかにいつもとテンションが違う。

 というか相変わらず微妙に呂律が悪いな。



「じゃあね! お題は……一番胸のおっきい人ー!! いえぇっー!!」

「……アカン、この人もう出来上がってる」

「何故こんなことに……」

「お前のスピリタスの所為では」

「…………何故こんなことに」

「オイ」



 コイツ、自分の責任からは目を逸らす気だな……。



「じゃあいっくおー! せーのっ」



 姉さんの掛け声で指を指されたのはリセリアの選んだシュエリアを除いて皆トモリさんだった。

 しかも今回はトモリさん自身自分を指している。

 まあ、そうなるわな。



「ここは妥当な結果だな」

「ですわね?」

「あらぁ~」



 トモリさんは自分が選ばれるのは分かっていたのか、もう既にコップを持って注ぎ待ちをしていた。

 潔いな……この魔王。



「で、次の酒はどうするんだ? アイネと同じのでいいのか?」

「そうですわね、勿体ないし」

「勿体ないでこれをストレート飲みとか絶対にしちゃダメだけどな……」

「じゃあとりあえずコーラで割ってみますわ」



 シュエリアはまたも魔法でコーラを出すと、ノッキーンをコーラで割り始めた。



「お酒を~飲むのは~久しぶり~です~」

「あ、トモリさんお酒飲むんですね」

「はい~よく戦場にでる~前に~部下に~勧められました~」

「そうなんですか……戦場に出る前にね……」



 それはなんだろう、勝利祈願的な物なんだろうか。



「それでは~頂き~ます~……ごくごく」

「……どうですの?」



 コーラで割ったコップ一杯のノッキーンをごくごくと飲むほすトモリさんとそれを見守るシュエリア。

 こんだけヤバい度数の酒用意しといて一応相手の反応を気にするシュエリアを見ていて、なら最初から普通の酒用意しろよとか思うんだが。



「そうですね……これなら私は原液で飲みたいですね」

「そ、そうですの……ん?」

「どうかしましたか?」

「……い、いえ、なんでもありませんですわ」

「おい、ツッコめよ」



 トモリさんの豹変に気づきながらもツッコまないシュエリアにツッコむ俺をジトっと睨んで来るシュエリア。



「ならユウキがツッコめばいいですわ」

「……それはちょっと」

「あら? 何の話かしら?」

『い、いえ、なんでもないです(ですわ)』



 もういっそこれにはツッコむのは止めよう。

 この魔王の喋り方が素になってるのは……。



 もしかしなくてもこの魔王はお酒を飲むと素の魔王素質が色濃く出るのかもしれない。

 だから戦場に出る前にお酒飲まされてたんだろこの人……いつものおっとりじゃ困るから。



「つ、次は……アイネか」

「にぁー……ころころ」

「……これは無理ですわね?」

「にゃんてころ、にゃににゃすっ」

「うん、なんて言ってるか分かりませんわ?」

「なんてことないですって言ってるな」

「なんでわかるんですのっ?!」



 シュエリアは目を見開いて、なんかヤバい奴を見るような眼を向けてきている。なんでこんな扱いなのか。



「いや、なんとなく」

「そ、そう」

「つぎのろらいは……いちばんでれららすごそーなひろれすっ」

「なんて?」

「一番デレたら凄そうな人、だな」

「……あぁ」



 俺の翻訳に適当な返事を返すシュエリア。これを見るにあんまりこのお題には興味ないのかもしれない。

 少なくとも自分が当たるとは思っていないようだ。



「それれは、いっせーろっ」



 今回もまた、親になったアイネの掛け声で一斉にみんなが指を指す。

 刺されたのは……なんと、シュエリア以外の全員が、シュエリアを指した。



「…………は?」

「まさか皆同じ意見だったとはな」

「なんでわたくしですの?!」

「いや、なんとなく?」

「何となくで選ばないで欲しいですわ!!」

「いや、そういうゲームだろ……」



 このゲームってイメージでやるゲームだからそこで文句言われてもなぁ。



「まあ、シュエリアが選んだトモリさんってのも、わからなくはないけどな」

「で、でしょう!?」

「でもまあ、選ばれたのはシュエリアだからな」

「ぐ……ぐぬぬ……」



 シュエリアは悔しそうな顔をしながらもコップを手にして俺に差し出してきた。



「じゃあ酒はさっきのでいいよな」

「えぇ」

「割る?」

「当たり前ですわっ!!」

「えーー」

「あんたホントにはっ倒しますわよ?!」

「はいはい、わかったって」



 いつも調子に乗って阿保ばっかりするシュエリアにちょっと意趣返しとか思ったのだが、まあこのくらいにしておこうか。

 俺はシュエリアに差し出されたコップを受け取りコーラとノッキーンを混ぜた。



「はいよ」

「待って、今の配分ってコーラ6のノッキーン4ではなかったかしら」

「おう」

「めちゃくちゃ強いですわよね……」

「まあ、姉さんとトモリさんなんて素で飲んでるからな、このくらいはしないと」

「ユウキとアイネは激薄でしたわよねぇ?!」

「お前は言い出しっぺだろうが」

「……ぐぬぅ……」

「はいはい、飲んだ飲んだ」



 俺が酒を差し出すとシュエリアは「うっ」と苦い表情をした後、意を決して飲み干した。



「んぐ……うっ……うぐぅ……んぐ」

「お前、もうちょい声どうにかしろよ……」

「ぐ……ふはあっ……し、仕方ないらない。これ、むちゃくちゅあキツイれるわ」

「おう、早速お前も酔うのかよ……」

「よっへらいれすわ」

「……これもうまともなの俺とリセリアだけじゃねぇか」



 もう既にこの人数が酔ってたらゲームにならないのではないだろうか。

 そう思っていると、視界の端にシュエリアの使っていたコップを手に持つリセリアが見えた。



「お姉様と間接キス……ふふ……うぐ……」



 リセリアはシュエリアとの間接キスを狙ってコップに口を付けたが、同時に少し飲み残していた酒を飲んでいた。



「……ひっく……」

「お前も酔うのかよ?!」



 おいおい……これじゃあ酔ってないの俺だけじゃねぇか……。



「次はゆーひの番れすわ」

「う、おう」

「ゆうきゅんがんはへー」

「にいしゃまふぁっきゅー」

「ふふふ……カオスが満ちているわ……」

「お姉様の味の酒……お姉様……お姉様の神酒……」

「ダメだコイツ等早く何とかしないと……」



 姉さんは普通に呂律回ってないし、アイネは呂律回ってない所為で黒い発言してるし、トモリさんは魔王が抜けてない、リセリアは「お姉様の神酒」とか若干意味深なヤバイ発言をし始めているし……。

 ただでさえ濃くて相手が大変な連中なのに更に面倒くさい……ホントにカオスだ。

 とりあえずとっとと終わらせよう……そしてコイツ等寝かせよう。



 と、そこまで考えて思う。



 あれ、俺以外酔っているなら、意外と面白いことになるのではないか、と。



「……お題は、一番SEX好きそうな奴」

『…………』



 いや、正直こんなんどうでもいいんだが、なんだろう、この酔っ払い共が乗ってくるという光景が見てみたい。

 本当にそれだけだ、断じてこういうエロい話題を美少女に振って悦に入っているわけではない、ないぞ。



「じゃあいくぞ、いっせーの」



 俺の掛け声で皆が一斉に指を指す。

 内役はシュエリア3、俺2、トモリさん1だった。



 いやまて、サキュバスのトモリさんが居るのになぜに俺に2票も来るんだ?

 というかトモリさんを指してるのが俺だけってどういうことだよ。



「おいシュエリア、お前なんで俺を指してやがる」

「……らってー。一番せ〇くすしたいあいれっれいうから……」

「お題から聞き間違えてやがる?!」

「ふへへ……ゆーひー……にへへ」

「ちょ……おまっ」



 シュエリアは俺にすり寄って頬ずりしたり臭いを嗅いだりと、いつもアイネがするように甘えてきた。

 ……どういうことだってばよ。



「ゆーきと、したいれすわ」

「よし、お前はもう寝ろ」

「や」

「……じゃあ酒のめ。罰ゲームだろ」

「……や」

「いや、罰ゲームはやれよ……」



 まあ正直、これ以上罰ゲームとかする必要ない気もするけど。



「や」

「や……って。お前な――」

「……むぅ……ろませてくれらきゃ、や」

「……飲ませろと?」



 俺が問い返すと、シュエリアは子供みたいにコクンと頷いた。

 ……今気づいたけど、コイツはもしかして、酔うと子供っぽくなる感じなのか?



「うーん……仕方ないか」

「??」



 俺は諦めてコップに酒をかなり薄めて注ぐと、シュエリアの口に差し出した。



「ほら、これでいいだろ」

「……や」

「なんで……」

「ちゅってして」

「……は?」



 ちゅってして……って、何。



「意味が分からん……」

「ゆーきゅうん、それはれー、口移しがいいんらよー」

「そーれすよっ、ちゅっれするんれすっ」

「……マジで?」

「(こくこくこく)」

「……マジかよ」



 シュエリアの方を見るとこくこく頷いている。

 うーん……それは、流石に……?



「流石にそれは無……」

「(うるうる)」

「…………はぁ……仕方ない……か」



 まあネタ的には美少女とキスとか美味しいんだが、酔っている相手に、しかも口移しとか若干アレなプレイするとか、倫理的にダメな気がする……。

 しかし……まあ、相手が望んでいるんだし……いいか。



「シュエリア、こっちこい」

「……ん」



 シュエリアは俺の方に近寄ると口を突き出した。

 うーん……可愛い、可愛いんだよなぁ……顔だけは。



「はい、じゃ……」

「チュ」



 ……うん、本日二回目のキス。

 さっきは物凄く急だったからビックリしたが、これはもう単純にお互いするとわかっていてしているキスだから結構緊張する。



「……ふぅ……満足したか?」

「……(こくん)」



 シュエリアは酔っているのもあって顔が真っ赤なままにしおらしい態度を取っているので別人みたいだ。

 何というか、凄く違和感あるな。見た目の可愛さと態度の女の子らしさがが一致しているはずなのに非常にモヤモヤする。



「ってか、罰ゲームで満足してちゃダメだよな……普通」



 とはいえ酔っ払いに真面目な事言っても仕方ないよな……。



「ぎゅーっ」

「おおぅ……シュエリアさん何故に抱き着いてきます?」

「や、なんれすの?」

「……嫌ではないが」

「にーさまっわらひもー」

「わたしもゆーきゅんー」

「……暑苦しい」



 前からシュエリア、左からアイネ、右から姉さんに抱き着かれる俺。

 全員酔っているせいで妙に酒臭いし……はぁ……とっとと寝てくれ……頼むから。



「ふふふ……ゆーきー……らぶいれすわ」

「にーさまなれなれしれくらはいっ」

「ゆーきゅんお姉ちゃんのことぎゅってしれ?」

「もっと強いお酒はないのかしら……ねぇユウキさん、無いのかしら」

「お姉様……お姉様が男好きにぃ……」

「…………はぁ」



 これはシュエリアの番は無理だよな……。



 俺以外の全員が酔ってしまったこの状況、こうなったらやることは一つだ。

 俺はシュエリアの持っていた紙袋から酒を取り出し、コップに次いだ。



「……ふぅ……よし。ごくごくごくっ」



 俺は意を決して酒を飲んだ。

 こんな時にシラフでいるからダメなんだ……俺も酔ってしまえば問題ない。



 そう思い俺は一気に酒を飲んで酔いが回る……と思ったが、俺は一つ忘れていた。



 俺、かなり酒に弱かったんだった……。



「ん? ゆーき?」

「にーしゃま?」

「ゆーきゅんっ?」

「…………(バタン)」



 俺は……酒を飲んだ勢いでそのまま倒れ込んでしまい……シュエリアに体を揺すられたり、アイネに顔を舐められたりしながら、気を失った……。




 翌日、俺が目を覚ますと部屋はめちゃくちゃ、何人かは全裸だったり、落書きされていたり……余りの惨状に俺は思った。



 コイツ等には一生酒は飲ませないようにしよう、と。

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