第15話
「おかえり、あなた今夜は随分遅かったのね」
「ああ、仕事の付き合いだよ。お前こそなんだこんな時間まで起きてるなんて。なんだ?健太郎は、今日もまだ降りて夕飯も食べてないのか? 」
「ええ、もう何度も呼んだんだけど……」
「まったく。どうしようもないな。塾講師のバイト辞めてから、まだ一度も働き先見つけてないんだろ? 何か行動してるのか? あいつは」
「えっと……。あなたが健太郎のパソコンを取り上げてしまったので、なかなか難しいみたい。私のパソコンを借りて、今は探しているようだけど」
「だけど? 」
「……なかなか手につかないみたいで」
「なんだ? まさかまたアイドルか? いい歳こいて現役女子高生がなんだ、そんなのは時間の無駄だ。だったらパソコンを触らせるな。ハローワークにでもなんでも行かせろ! 大学受験はもうやめにしたんだろ」
「だけど、あなた……あの子」
「いいか、こうなったのはお前が健太郎を甘やかしてきたからだ。食事をしに降りてこないのだって、お前が上げ膳据え膳してやったせいだろ? 浪人だってもとはあいつの希望で猶予を持たせたのに、お前があいつのためだとぬかして何の計画もなく塾講師を進めたから、結果勉強も疎かになって、挙句は教え子同様のアイドルに入れ込むなどと」
「あなた、そんな言い方は……! それに、あなただって、以前若い子と連絡を取り合ってたじゃない……」
「なんだ? まだ根に持ってるのか? 所詮、水商売の女だろう。仕事の付き合い上仕方なかったんだよ」
「だって、メールには高校がどうとかって話が……それは犯罪じゃない」
「だいたい! その話は、今、健太郎の話となんの関係もないだろう! 何が言いたいんだ、まったく親子揃って馬鹿ばかりだ。少しは自分の娘を見習えばどうだ? 最近は仲の良い子が勉強ができる子だからって教えてもらっているそうじゃないか。全く、これだから反省しない奴は進歩できないんだ。誰に似たのか、血筋だな。全く、チャラチャラして中身のないまま親になった奴はこれだから」
「………………」
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