第299話
マルス帝国が求めるような力があるように思えない。後ろの守護獣のおかげなのだろうか。いや、炎王は確か言っていた。
『光の神を降臨できることが巫女としての最低条件』
だと。シェリーははっきり言ってこの程度で女神が応えてくれるとは思えなかった。神が特別な個を好むことはある。特定の種を好むことはある。だが、何も突出するものがない集に対して神が応えるなんてありえることではなかった。
「葉月さん」
シェリーがそう女性を呼んだ瞬間、女性はビクッと体を揺らした。
「は、はい」
「ルーチェ様の降臨をお願いしてもよろしいでしょうか?」
「わ、わかりました」
何故か巫女長の女性はシェリーにおびえているのか炎王とシェリーの間で視線を揺らしていた。そして、意を決したのか手を組み目を瞑って祈りを捧げる。
「『シュはワレワレをミていてくださいます』」
片言の日本語?
「『シュはワレワレをアザワラい、ミクダしていらっしゃいます』」
は?シェリーは思わず炎王を見る。その炎王は遠い目をしていた。ということはこの言葉を教えたのは炎王ではないとい言うことだ。
「『しかし、ヒカリのカミはワレワレにジヒをおアタえになります。ヒカリのカミにエイコウをシュはジゴクにオちろ!ヒカリのカミ。ルーチェさま。このモノにジヒをおアタえください』」
あ、アリス!絶対にこの言葉はアリスだ。あの白き神を貶す言葉を日本語で教えている時点で、アリスしかいないだろう。
そして、銀髪の女性の後ろには金色に光る美しい女性が微笑みを浮かべて、降臨していた。
シェリーは思った。これはあの白き神への嫌がらせで、あの言葉に応えているだけなのだろう。やはり、女神ルーチェの性格は悪い。
『それで、何かわかったかのぅ?』
女神ルーチェは微笑みながらシェリーに問いかける。
「ええ、貴女の性格が悪いということがよくわかりました」
シェリーのその言葉に銀髪の女性もここに案内をしてきた3人の巫女たちの顔が血の気を失ったように真っ白になった。
『ホホホ。われの性格が悪いとな?』
女神ルーチェの言葉に炎王が慌ててシェリーの側に寄り
「佐々木さん!光の神の前ではその口の悪さは抑えてくれないか」
と小声で懇願する。その炎王の言葉に答えたのはシェリーではなく当の女神である。
『良い良い。それは
女神ルーチェはふわりとシェリーの前に降り立つ。微笑みを絶やさないその顔をシェリーに近づける。だが、その目は笑ってはいない。今までもそうだった。慈愛ある笑顔を人に向けているが、その目の奥は笑ってはいなかった。
『が、われは人々に慈悲を与えておる。優しいであろ?』
「ええ、そうですね。ですが、彼女たちはただの人ですよね。貴女が応えるほどの力はない」
『そうであろう。われは優しい。可哀想なアリスの頭を撫でてやり、われを慕う子らに慈悲を与えておる。われを慕い敬い崇める子らには優しくあろうぞ』
ホホホっと笑い声が響き渡る。やはり、神というものは人が思っているようなモノではないのだ。
「帝国が貴女の力を望んでいるようですが、ご存でしょうか?」
『知っておるが、あれはわれの趣味じゃない。安心せよ。われが慈悲を施すことはない』
「そう言っていただけて、安心しました」
『ホホホ。そうかえ?安心かえ?ふふふふっあはははは』
笑い声が響くなか、女神ルーチェは消えていった。今までの慈愛を浮かべた笑顔ではなく、心底可笑しそうに笑いながら消えていった。
「あ?佐々木さん!あれは誰だ!光の女神様じゃないだろう?何かが化けていた?」
シェリーの側で呆然としていた炎王が意識を取り戻した瞬間、シェリーの両肩を掴んで揺さぶっている。知っている女神ルーチェの姿とあまりにも異なっていたからと言って誰かが化けているとは、面白い発想だ。
「炎王、痛いです。あれはルーチェ様御本人ですよ。神なんてあのようなものです」
「いやいや!あの御方が·····」
炎王が何かを言いかけたが、後ろに飛び退きシェリーから距離をとる。
「初代様!」
リオンがシェリーと炎王の間に入り、炎王の手を払い除けようとしていたが、その前に炎王の方が距離をとった。なぜなら、炎王に触れようとしていたリオンの手は青い炎を纏っていたのだった。
「リオン。それは流石に室内では駄目だろ」
炎王は最もなことを口にする。
「抜刀はしていませんよ」
そもそもリオンの刀は粉々に砕けて、存在していないので、振るう刀自体がないのだが、室内で刀を抜く事を許されるのは道場ぐらいではないのだろうか。
「初代様、何度も言っていますが、シェリーに近づかないでいただけますか?王后様じゃないですが、二人は仲が良すぎますよね」
「普通だ」
「普通です」
リリーナに問われた時と全く同じ答えを炎王とシェリーは口にするのだった。
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