第83話
アイラのステータスの変更された項目の一つは称号だ。
称号
異界の魂をもつ者、世界のヒロインだと思い込んでいる者、世界のゴミ
『面白そうだったから観ていたけど、もういらないよ。』
世界から捨てられてしまったようだ。あの謎の生命体の何か勘に障ったのだろう。
そして、もうひとつ。これは・・・シェリーは微笑んだ。アイラに向かって心から微笑んだ。
「なによぉ。気持ち悪いなぁ。」
「アンディウム師団長、さっさとスライムの討伐を終わらせて、王都に帰りましょう。その、世界のゴミはどこかに保管しておいてください。使い道がありますので」
「せ、世界のゴミ?」
アンディウムが不思議そうな顔をしている。シェリーは小声でアンディウムに伝える。
「アイラ嬢の称号の変更が行われ、この世界から見棄てられました。」
はっ。と緊張感がはしる。
「え?なに。なに?ゴミがどうしたのぉ?」
アンディウムはアイラをつまみ上げ、馬車に放り込み外から鍵を掛ける。「ちょっとぉ。アンディウムさまぁ。どうしたのぉ」と馬車の中からバンバンと窓を叩く音が聞こえる。
「シェリー、何があったの?」
カイルが近づきて、聞いてきた。スーウェンとオルクス、そしてヴァン・リヴィーニ中隊長もこちらにやって来た。
「先ほど、アイラ・クォード嬢のステータスの変更が行われました。」
「あ?ステータスの変更ってなんだ?なんでわかる。」
オルクスが聞いてきた。
「そういうスキルです。そして、2つの項目の変更が行われました。一つは称号です。『世界の監視対象者』から『世界のゴミ』に変更されました。世界から見棄てられたようです。」
「「「世界のゴミ・・・。」」」
「はい。それではスライム討伐行って来て下さい。」
「もう一つは?」
「アンディウム師団長、ヴァン中隊長。引き受けた仕事はしましょう。」
「シェリーさん、流石に気になるのですが。」
「わたしの通訳の仕事は終わりました。話し合いは教会を交えなければなりませんから後日ですね。」
「討伐の手伝いはしてくれないのですか?」
「わたしの仕事はここまでです。とても有意義でとても無駄な時間でした。」
シェリーは仕事が終わったとばかりに背を向けた。
アンディウムはここぞというときに使うようにと広報のサリーから渡された物を取り出し
「そういえば、サリー女史からまだ配られていない、これを渡されたのですがいりますか?」
シェリーが振り返り、目を見開きそのものを凝視した。
「最新版の王立騎士養成学園の広報紙なのですが、いりますか?手伝ってくれるのなら、差し上げますよ。」
「いる。」
シェリーは手を伸ばして広報を取ろうとするが、さっさと仕舞われてしまった。
「手伝ってくれますよね。」
とアンディウムが尋ねると
「よろこんで!」
どこぞの飲み屋のアルバイト並の笑顔で答えたのだった。
その笑顔のシェリーを見たオルクスは「話に聞いていたが、マジであの無表情が瞬間に変わるのか。」と一人納得していた。
そして、手分けしてスライムの討伐に向かうことになったのだが、ここにまだ意識の戻らない御者と世界から見棄てられたアイラ嬢を放置しておくにはいかず、第10師団第一中隊長の部下数人で王都まで護送することになった。
流石にそのまま地道を馬車で帰るのには時間がかかりすぎるため、騎獣用のワイバーンが第10師団の駐屯地にいるためそこまで馬車で行き、駐屯地から大型のドードー鳥だけはずし馬車をワイバーンに掴ませて行こうという流れになった。流石に会ったばかりであるヴァンもアイラ嬢の異常性を見て外に出すのはダメだと判断したらしい。
後は師団長に任せると言いきった。ヴァンも関わりたくないようだ。
そして、残りの第一中隊の特殊班8人とヴァン中隊長、アンディウム師団長の班とシェリー、カイル、グレイ、スーウェン、オルクスの班に別れて討伐を行うこととなった。
イアール山脈の木々が生い茂る中、歩きまわるが一向にスライムに出会わない、シェリーのマップスキルは10
周りの探索に出ていたグレイが戻ってきた。
「なんか、イアール山脈にしては、魔物が少ない気がする。」
確かに山脈に入ってから、2度襲撃があったぐらいで、数が少なすぎる。
その時、シェリーのマップスキルが真っ赤に反転した。Sクラス級の魔物を感知したときのアラート表示だ。
「10メル西方向、Sクラス級感知。」
シェリーがそう叫ぶと皆が一斉に向かっていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます