第9話
「と言うわけで私達は今、福井の丸岡城へ来ています!」
「何言ってんの……解?」
楓が冷めた目でこちらを見ている。
「いやぁ久しぶりに丸岡城に来たもんでテンションが上がって。時に楓さん今日一段とお洒落してますね? 似合ってますよ!」
褒めるの慣れてなくて恥ずかしいから敬語になるあるある。
「え、べ、別に普通でしょ?」
あの銀行強盗の事件から3日後、俺達は福井にある丸岡城へ遊びに来ていた。
ちなみにこの丸岡城、元々日本最古の天守閣がある言われていたものの、昭和23年の福井地震で天守が倒壊しまう。
それでも元の通り組み直して、これまでは(事実上)最古と言われていた。
だが近年の調査で実は元々最古でも何でもないと言う事が分かり、福井県に戦慄が走った。
ちなみにへぇボタンがあるのであれば86へぇ並の情報だ。
(弄ばれて可哀想な丸岡城…けど俺の中でお城No.1は間違いなく君だよ……)
「テンションが上がっているって言った割に何だか黄昏れた顔してるわね」
「おっと! 外に遊びに行くがてら、これからの事を話そうとしてたんだったな。あっちの池の鯉に餌あげながら話そう!」
「静かになったり、やけにテンションが上がったりほんとに大丈夫なのかな……」
楓が心配そうにこちらを見ている。
……
……………
…………………………
俺達は鯉の池に着き、餌を購入して鯉に餌をあげながら話し始める。
「んで、解はこれからどうするの?」
「やけに漠然とした事を聞いてくるな。そうだな……俺はこの3日間、テレビやネットの情報を集めて色々と考えたけど……世界は〈天啓〉によって、これまでの常識では考えられない様な事が今にも起ころうとしてる、と思う」
銀行強盗の事件は瞬く間に世間に広がり、〈天啓〉についての色々な憶測が今も飛び交っている。
幸いにも〈天啓〉を酷使して死亡したという噂が抑止力となり日本の犯罪数はそこまで増加してなかった。
ダンジョンを知らない人達は“〈天啓力〉は回復しない”という考えが自然だったのも大きかったんだろう……。
だがその抑止力はいつまで持つか分からないし、力に任せて人々が暴徒と化すかもしれない。
俺はそんな事を考えながら話を続ける。
「こんな世界になっていつ理不尽な事が起こるか分からない、俺は自分や自分の大切な人達を守る為に力をつけないとだめだなって思ったんだ」
もちろん大切な人の中に楓がいる事は言うまででもない。
「だから俺は……俺だけ使える鍵でこっそりと特別なダンジョンに潜る事にするよ」
楓は静かに俺の話を聞いていた。
少し間があった後、楓は意を決した様な顔つきになり俺をまっすぐ見て口を開く。
「解、私も一緒にダンジョンに潜るよ」
「!? ……駄目だっ、もし楓に何かあったらどうするんだ!?」
俺は慌てて楓の意見に反対する。
「もし立場が逆だったら、解は私が1人でダンジョンに潜る事を何もしないで見てられる?」
「……」
俺は反論出来なかった。
そんなの放っておける訳がない、もし1人で潜ってしまったと知ったら気が気ではないだろう。
「だから私も一緒に潜るよ、てゆーか私がいないと解は何も出来ないじゃん!」
楓はいつものように冗談っぽく笑って腰に手を当てて胸を張る。
(やっぱり楓には敵わないな)
「分かった、だけどやるからには万全を期して挑むぞ!」
「もちろん! 私考えてたんだけど、まず大事なのは戦う為の装備だと思うんだ!」
(確かに……ボススライム戦も武器と防具があれば簡単に倒せていたと思う……けど。)
「この日本で武器になるような物を高校生が手に入れれるのか……?」
「うっ……そこなんだよねぇ」
俺達は2人して肩を落とした。
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