第6話
冒険者に文句は言えない。
それは彼らの身分は冒険者であり、彼らに人殺しの是非を問うのは無駄であったからだ。何せ、彼らは人を殺す必要のある者もいたから。
個人の恨みを持ち込むような者もいたが、それは結局のところどこまで行っても個人の問題であったということに変わりはない。
ただ、それも行き過ぎれば犯罪というものが姿を現す。
「エイデン……!貴様、貴様がカシウスとやらを冒険者にしたんだな!?」
ギルドに現れて、ギルド長を呼べと言われた受付の女性は、怒りを浮かべた男に内心、臆病風に吹かれながらも、急ぎギルド長の元に向かった。
ギルド長に依頼が入っていないことも確認済みであり、彼に訳を話すと、すぐに受付の前に現れた。
その瞬間に男性は責め立てるような言葉を、エイデン、ギルド長の胸ぐらを掴みながら浴びせかける状況になったという訳だ。
「離せ」
エイデンが胸ぐらを掴むその腕に右手を乗せる。
「ふざけるなよ、エイデン!」
「……離せと言っている」
その瞬間に男性は本能的な恐怖を感じてか、その手を離した。
「カシウス・オウル……。彼には処刑魔法しか使えないという欠点があった。あのような死にたがりがいたとはな」
「ふざけるなよ!このギルドでも死人が出たそうだな!」
「あれは自殺だ。そう聞いている」
エイデンがそう言えば、ギルドにいた誰もが目を逸らした。
酒気も吹っ飛ぶような感覚だった。
今もまだ、記憶に新しい。カシウスをからかっていたはずのものが突然に剣を自身に突き立て血しぶきを上げて死んだのだ。それを実際に見ていた者たちは、あの光景を思い出してしまう。
冒険者であったとしても、人が死ぬということに対して良い感情は抱かない。
彼らだってそこまで、倫理を外れてはいないのだ。
「それで、何が問題だ?」
「アイツを野放しにするつもりか!」
「野放しも何も、彼は冒険者だ」
「危険すぎる!」
男性は顔を怒りで赤く染めながら、受付台を強く両掌で叩いた。
「アイツは人殺しだ!」
「殺したくば殺せ。冒険者が死のうと誰も気にする事はない」
それが冒険者だ。
エイデンは本気でそう思っている。
「アイツは殺さなければならない!」
男性は顔を歪ませてそう言った。知っているのだろうか。
いや、その男は梟の手法を知っていた。
それが彼の中でカシウスが梟であることを決定付けたピースであった。
「お前は必ず、殺す」
それは復讐である。怨嗟の炎は揺らめいて、彼の真っ赤な瞳に宿る。
赤い髪の男性はそのギルドから去っていく。誰もがその背中を見送った。
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