第26話 開店前夜2
「…俺達もこの世界に稀人を連れてきたいんだ…ビジネスとして」
◇
「異世界紹介業とは…すごいよ…」
「まったく…おもしれーこと考えやがって!」
フィルとマイルスはニヤニヤした顔で、前のめりで話を聞いてくれた。
マナブが上手く話してくれたおかげで感触は良さそうだ。
やっぱり異世界好き同士だからかな。二人とはとても気が合いそうだった。
三人の話を聞いていたヒデがオレに話しかけてきた。
「何でフィル達はいっぱい稀人を連れてきたいんだろうね」
それに気づいたフィルは説明をはじめた
「ああ…簡単に言うと、僕らが弱いからなんだ」
「弱い?マイルスなんて、とても強そうだけど…」
「いや…魔物の強さに比べたら、俺達なんてただの雑魚なんだよ」
「そう…魔族の力はとても強力で、マトモに戦えば敵わない相手だ。だけど我々人族は、知恵と防御がものすごく長けているんだ」
「知恵と防御…」
「そう。長い間我々人族は知恵を駆使して、魔族に侵攻されない様々な対策を取っていたんだ。だけど魔族の力はどんどん増していき、遂には人族の領土に攻め込まれてしまった。このままではラインバールに攻め込まれるのも時間の問題…」
「そうか!そんな時に現れたのがシュウだったんだ!」
「冒険者ギルドのランクを瞬く間にSランクまで上り詰めた男がいると…聞けば稀人だとか。それがシュウだったわけ。あとはどうなったか知ってるよね?」
「悔しいけど…勇者になって魔王を倒した」
「うん。稀人の勇者が魔王を倒した。恐らく全魔族に伝わっただろう…ちなみに過去にやって来た稀人はシュウを含めて全員伝説に残る位の力を持っていて、魔族に恐れられていたらしいんだ…」
ここまで話を聞いていたマナブが口を挟んだ
「なるほど…つまり稀人がいるだけで、魔国に対する抑止になると」
「その通り!僕達は何も攻め込もうとしている訳ではないんだ。魔王を倒された魔族は今まで以上に稀人を恐れている…だから稀人が居てくれるだけで攻め込まれる可能性が低くくなるんだ」
「まるで…核兵器だな…」
「核…兵器?」
「い、いや!何でもない…続けてくれ」
「理由としてはこれがすべてさ!」
マナブは安堵の表情をした
「理由がわかってよかったよ。これで俺達も後ろめたい事なく紹介が出来るな!」
「そうだな!…ところで俺達の紹介業は認めてくれた…でいいんだよな?」
「お願いする以上認めないわけないじゃないか!但し公には出来ない。黙認する形で頼む。僕に何が出来る事はあるかい?」
「よっしゃ!取り敢えずは俺達が何をしているかを認知してくれただけで大丈夫だ。あとは俺たちで何とかするよ」
「わかった。…だがしかしな…シュウは皆に顔がバレてるだろう。厄介になりそうだね…」
「確かに…あ!そうだ!」
オレは徳ポイントのアイテム交換から、変身キャンディを探した。だが一覧の中にとんでもない物を発見してしまったのだ…
「ま、まさか!こ、これは!」
「なんだ?どうした?」
「マナブ…ヒデ…若返り薬…あった…」
「なんだと!?寄こせ!早く!」
「シュウ様!ギブミープリーズ!」
「わ、わかった…」
オレは3人分の若返り薬を交換した。
目の前には小瓶3本が現れた。いつもより神々しく輝いている…気がする。
オレはその小瓶を手に取りラベルを確認した。
「これか…なになに…」
『若返りドリンク ウェーイウェーイ卍』
「ふざけた名前だな…」
マイルスも苦虫を噛む様な表情をしている
「ああ…意味はわからないが何故か殺意を覚える…」
「えーと…20歳の自分の姿に戻れます…服用後は自分の意志で元の姿と20歳の姿に切り替え可能だって…シュウこれ相当怪しいよ…」
「これ1本1000ptしたんだぞ!?効果なかったら泣くわ…魔王3人分だぞ!」
「1000pt!?それは泣くな…とにかく飲んでみよう…」
オレ達は意を決して、小瓶の液体を一気に飲んだ
「…何にも起こらないな…」
「う、嘘だろ!?」
オレは無駄遣いをした事に涙目になっていた。
「なんでだろう…切り替え可能って事は、頭の中で想像すればいいのかなぁ…」
ヒデがそう発した瞬間
-ボブッ!
音と共にヒデの全身は蒸気に包まれた。湯気が無くなると、そこには若々しい20歳の姿であろうヒデが立っていた。
「うおお!ヒデ!若返ってる!」
「ほ、本当に!?鏡!鏡!」
ヒデは鏡の前に立ち、容姿を確認している
「うひよ〜!若返ってる!」
ヒデの変身に、オレとマナブは色めき立った
「お、俺も!」
「オレも!」
-ボブッ!
「若返ってる!シワが無い!」
はしゃぐ二人をよそにオレは感動していた。
黒く光り太い髪の毛…シワ一つなくプリップリの肌…
全身から過剰なパワーが漏れ出している様だ…
-ボブッ!
「やっぱり想像すれば元に戻れるね」
-ボブッ!ボブッ!ボブッ!…
オレ達はあまりの嬉しさに変身、解除を繰り返して遊んでしまった。
気がつくとフィルが呆れてこちらを見ていた
「フィルすまん!嬉しくってつい…」
「シュウ…こんなアイテム見たことないよ!…君達まだ隠してる事があるね?」
フィルの鋭い目が突き刺さる。徳ポイントについては言ってしまうと何でも頼られてしまいそうなので、出来れば隠しておきたい
「ふふふ…手の内を全て教えたら商売あがったりですよダンナ…企業秘密って事で!」
「チッ!…まぁいいや!とにかくこれで目立つ事はなくなったね」
「ああ、早速仕事をさせてもらうよ!」
「よろしく頼む!目星はついているのかい?」
「ああ、最初のお客様はもう決めていたんだよ」
「そうか!それはありがたい!」
「最初のお客様は………フィル!マイルス!君達だ!」
「「ぼ、僕達!?」」
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