第12話 親友に転移のこと告白してみた

再会したオレとヒデは、朝っぱらから宴会を始めた。


「それにしても、今までどこに行ってたんだ?」


「うーん…どう話せばいいのか…」


ヒデに異世界に行っていた事を話すかどうか迷っていた。


あいつとはこうやって酒を飲み、毎回の様に妄想話で盛り上がっていたから、信じてもらえるとは思うのだが…


「貴重品置いて突然いなくなっちゃったもんだから、異世界に転生したかと思ったよ!ハハハ…」


「ぶほぉっ!!」


口に含んでいた酒を盛大に吹いてしまった…


「ゲホゲホ!いきなりぶっこんで来るなよ!」


「悪い悪い!冗談だよw大丈夫か?」


ヒデはそう言うと、真面目な表情に変わり


「正直言うとさ、あんな書き置き見たら自殺したかと思ったぜ…」


「書き置き?」


「いなくなる前に置いていっただろ?どこにあったかな…」


ヒデは部屋を出て、その書き置きを探しに行ったみたいだ。


そんな物を書いた記憶はない。酔っぱらって気づいたら森の中だったからだ。


「あった!これだ」


部屋に戻ってきたヒデから1枚の紙を渡された


「書いた覚えはないんだがなぁ…」


紙にはこう書かれていた。


-長い長い旅へ出ます。探さないで下さい シュウ


「うん…なんか…ベタだな…これは死ぬわ」


「だろ?でもシュウは自殺出来るような正確じゃないし、信じたくなかったからさ…」


「心配かけちゃってごめんな」


「俺信じたくなかったから、割とガチで異世界に転生したんじゃないかと思ってた。いや思い込ませてたな」


苦笑いしているヒデを見て、本当に心配してくれていたんだなと、悪い事してしまったなと思ったのだが…


「でもさ…やっぱり俺こんなの書いてないんだよ。しかもオレこんなに字が下手じゃないし!」


「じゃあ誰が?」


「わからん…この日は酔っ払ってて全く覚えてない…」


「…やっぱり自分で書いたんじゃないの?酔っ払ってて字も上手く書けないだろうし…」


「う!…そう言われれば…そうかもしれない…」


当時は仕事が大変で精神的に参ってたし、人生投げやりになってた。


酔った勢いで自らを殺める行為を行う事を考えてもおかしくない状態だった。


その行為がトリガーで異世界転移したのかもしれない…


オレは意を決して告白した。


「でも…ヒデが言ってる事は半分当たってるんだけどね」


「……本当に自殺しようとしてたのか?」


「それはわからん…オレが言ったのはそっちじゃないんだ…」


「どう言う事?」


「…オレさ…異世界に行ってたんだ…」


静寂な時間が数秒続いた。ヒデが口を開く


「シュウ…飲みすぎだ。そろそろ寝たほうがいい」


まあそうなるわな。流石に本当か?スゲー!と言うわけないよな。 


ちなみに酔っ払ってはいない。お互いに酒好きな為、なかなかのペースで飲んでいるのだが、今日は全く酔わない。


どうやら超回復のスキルのおかげでアルコールを分解しているみたいだ。


ヒデはと言うと、酒に強くて性格も全く変わらないので、酔っているのかの見分けがつかない。

本人曰く、いい感じに酔っているとの事だ。


「マジだって!オレが消えた日は酔っ払ってて覚えてないって言ったが、目が覚めたら異世界だったんたよ!」


ヒデがこれまで見た事がない位心配な顔をして見つめている。


「今まで記憶喪失で入院してて、戻ってきたとかじゃないよな?」


「違う違う!」


このままじゃ埒が明かない。


「わかった!証拠を見せる!」


オレはそう言って、人差し指を立てた。


『ファイア!』


オレが心の中で念じて、指の上にロウソクの火の様な、炎を作った!


「うわ!」


驚くヒデを見てドヤ顔になってしまった。


「シュウ…マジシャンにでもなったのか?」


「あーもう!わかった!じゃあとっておきのだ!」


オレはメニューを開き、異世界転移スキルを選択した。


「なに手をカチャカチャ動かしてるんだ?」


「メニューをいじってる」


「メニュー?なんじゃそら!?」


「まぁ見てなって…」


シュ!


「き、消えた!?」


オレは驚くヒデの背後にテレポートした。


「驚いた?」


「ぎゃあ!」


慌てて暴れるヒデ。いやあ…見てて楽しい!


「お、お…お前消えたよな?ど…どうやって…」


「スキルを使ったんだよ」


「スキル?マジかよ…」


親友が驚愕している姿は笑えるし気分がいいな。


「ふふふ…どうだね?ヒデ君」


「開いた口が塞がらん…」


「だろう?…よし!もう一個とっておきだ!準備するからちょっと待ってて!」


「お、おう…」


「ちゃんと待ってろよ!」


ヒデにそう告げると、オレはフィリーミの宿屋へ転移して、昨日買った豪華な装飾付きの装備一式を身に着け、再び自宅へと戻ってきた。


奴の驚く顔が楽しみだ。この姿は中2病の彼の心をくすぐるだろう…。オレはニヒルな笑顔を作り


「ただいま…っておい!なにしてんだ?」


目の前には、ヒデがスマホ片手に立っていた。  

 

「おかえり!いや〜テレポートしてくる瞬間を撮りたくて…マジですげーな!」


「ワタクシは動物園の見世物小屋じゃあないんですが…」


そんな事お構いなしに、ヒデは今撮った動画を確認している。


「すげーなぁ。本当に異世界に行ってたんだな…そうだ!これマナブに送ろう!奴も心配してるだろうし!」


マナブとはもう一人の親友で、彼も幼馴染だ。


確かに連絡を取るのはいいのだが…


「連絡を取るのは大賛成だけど、動画は送らないほうが…」


「なんで?」


「いや、事情を知らない彼は馬鹿にされてると思いそうだよ…」


「大丈夫っしょ!…よし!送った」


「何て送ったの?」


ヒデが送った内容はこうだ


-シュウが帰ってきたよ!

-異世界から!

-[動画]


「これ完全に馬鹿にしてるだろ…こんな装備で『ただいま』とか完全に喧嘩売ってる!マナブに向けた言葉じゃないのに…」


憂鬱になってきた…


「お!すぐに返信来たぞ!」



-今から向かう。覚悟しとけ



…ボクもう転移していいですか?

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