追憶のまち、吉祥寺

らららろろろ

第1話 バーテンダーの恋

毎日私に会いに来る人がいます。

朝6時ごろ。ランニングの途中で、彼はいつも、私に声をかけます。

名前は佑一さん。優しくて、イケメンで、背が高くて。いい声でおいで、と言います。


「おいで、鯉子。ご飯だよ」


私は大急ぎで佑一さんがよく見えるところへ向かいます。私をみると優しく笑って、小さくしたパンを投げてくれます。

私は少し身体が小さいので駆けつけた仲間たちにほとんど食べられてしまうけれど、佑一さんはなんとか私の方へ投げてくれるのでいつも美味しくいただいて幸せな気持ちになります。


「また明日ね、鯉子。元気でいろよ」


佑一さんはまた、走り出します。その後ろ姿をうっとり眺めながら、あの人が幸せになりますようにと、私は心から祈ります。


佑一さんは今年で50歳。

18歳から、この吉祥寺で暮らしています。職業はバーテンダー。ステキな声、ステキなスタイル、ステキな男性です。でも何よりステキなところは、心の優しさです。そんな彼なので、私は彼が付き合った女性を少なくとも5人、知っています。少なくとも、というのは、付き合ってるところまではいってないのかな?という人も入れたらすごい人数になってしまうから。


そんな彼が遭遇した、とんでもない不幸をもたらすダメ女A子の話から、まずは始めたいと思います。

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