其の壱──山中の楽人──
第一話 昔語り
東と西の二つに分かれた【
妖やら鬼やらがそこかしこをうろついて回る、それはもう恐ろしい所でございました。魑魅魍魎が出るところには決まって霧が立ち込め、迷い込んだら最後、餌食となり戻って来ないといった様子で。
人々はまともな生活なぞできるはずもなく、村はたちまち荒れ果てていきました。生きていくには野盗となる他なく、しかしそれも物の怪に怯えながらのものでした。山々は常に濃い霧が覆い、鬼や妖たちの根城となっており……まともに人が住める場所はと言いますと、はい、都しかなかったのでございます。
帝のご加護により守られた都では、貴族や商人、武士などの人々が暮らしておりました。都の隅には貧しい者ももちろんおりました。妖たちも混じり、窃盗、殺人も日常のように起こりました。安全とは言えませんが、地方よりは幾分かましというものでございましょう。
さて。帝のおはします千古の中枢、
帝は民のため、それはもう多くの策を御提案なさいましたが、貴族達の反対に遭い、その多くが挫折しました。貴族達は自分の力が奪われることを危惧したのです。そして、当時の宮廷貴族は帝をしのぐほどに力を増しておりました。
当時、
白翁帝はご譲位なさり、ご子息の
前口上はこの辺りにしておきましょう。
物語のはじまりは都ではなく、千古の地方のとある山中でございます。
霧に覆われたその山の中に、一つの隠れ家がありました。そこにとある人間の一家がひっそりと暮らしていたのでございます。
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