雪を溶く熱――ルートマイナスエックスな彼と量子的な彼女――

魔女っ子★ゆきちゃん

1 overture(オーバーチェア)

『おまえたちのむすめあずかった。かえしてしくば、吾々われわれ要求ようきゅうんでもらおう』

 わたしたち夫婦ふうふもとに、そのような脅迫状きょうはくじょうとどいたのは、むすめ行方不明ゆくえふめいになってから8時間後じかんごのことだった。

 おそらくは組織そしきものちがいない。

 警察けいさつなどのえる相手あいてではない。

 世界征服せかいせいふく目論もくろみ、悪行あくぎょうかぎりをくすあく秘密結社ひみつけっしゃ

 何故なぜそんなことがわかるのか?

 わたしたち夫婦ふうふも、幼少ようしょうころより組織そしきそだてられ、暗殺あんさつ殺害さつがいのいろはをたたまれたころだったからだ。


 おっと秋人あきひと脅迫状きょうはくじょう指示しじしたがい、いえていった。

 そして音沙汰おとさたのないままに、一週間いっしゅうかんぎた。

 むすめは、おっと無事ぶじなのか? ひとときも心休こころやすまるときはなかった。

 そのよるは、しんしんとゆきよるであった。

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