第19話 あの後どうなったんだろう
「このYOURって誰のことだと思う?」
ブッシがドライブに聞いた。
「誰のとは書いてないからな…誰のでもいいんじゃねぇか?」
「軽い問題じゃねぇんだけどな」
レーダーが紙をクシャッと丸めてポイッと捨てた。
足元に散らばる手術道具やら大工道具やらを興味なさそうに見回す。
「コレでココから出れねぇもんかね~」
ノコギリを手に取って眺めてみる。
「せめてチェンソーでも落としてくれればな~」
ブッシがメスを手に取る。
「無理だろ…電源がねぇ」
ドライブは壁伝いに部屋を一周している。
(暴れてどうにかなるもんでもねぇか…)
レーダーの脳裏にふと『JC』と『オニィ』の姿が過る。
(都合よくってわけにはいかねぇだろうな~)
ガンッ‼
壁の向こう側から伝わる振動、鈍い音。
3人は壁の1点を見つめる。
ガンッ…ガンッ…ガゴッ…
なにやら、壁の向こう側から金属的な打撃音が聴こえる。
ガンッガンッガンッ‼
音の感覚が狭まっている。
「イライラしてらっしゃるような…」
呟くレーダー脳裏に暴れる『オニィ』の姿が鮮明に浮かんでいる。
ドギンッ‼
ガラッ…ガラガラ…
壁が崩れて小さな穴が開いた。
ヌッと突き出た金属バツト。
「なんだろう…不思議と懐かしい」
ブッシが嫌な顔で呟く。
壁が崩れ落ち、ホコリの向こうから姿を現す学生服の男、手には『く』の字に曲がった金属バット。
「オニィ…さま」
ドライブが思わず様を付けて呼ぶ。
「何をしている? サッサとメモリーを差し出せ…」
オニィがイライラしているのが口調で解る。
「メモリー?」
「お前ら、JCを追うんだろ?」
「……そうだ」
しばしオニィの問いかけに答えられずにいた3人、レーダーが覚悟を決めたように返事した。
「ならば、体は置いていけ‼」
オニィが金属バットを振り被り飛び掛かってきたことは視認できた。
そのあとの記憶がない。
身体を棄てろとは死ねということなのだろう。
つまりJCも死んだのだろうか?
それを追うと決めたのはなぜ?
ただの後追いなら、こんな所に来ちゃいない。
俺は、追うと決めて…それから病院に来て…。
死ぬためじゃない。
俺は…俺は…
何を求めてココに来たんだろう?
いつからこんなことを考えていたのか?
ついさっきのような気もするし…随分と長いこと、こんなことを考えているような気もする。
「白い…白しかねぇ…な…この場所には」
(俺は…俺達は、あの後どうなったんだろう?)
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