やかん飛行

ジュン

第1話

私は不思議なやかんをもっている。空飛ぶやかんだ。そのやかんは、水を入れて火にかけると、当たり前だが水が熱くなっていき、最後には沸騰する。そうすると、やかんはガスコンロから浮いて、宙を漂い始める。そして、魔法瓶に、ひとりでに沸いた湯を注ぐ。なんて利口なやかんだろう。まだある。そのやかんは、ありとあらゆる場所に飛んでいき、湯が欲しい人に湯を分け与える。まさしく、魔法のやかんだ。

「また、やかんのはなしが始まったぞ」

「適当に受け流せよ」

「わかってる」

「やかん以上に彼自身が熱くなりすぎて、沸騰するせいか熱い血が騒ぐみたいだ」

「でも、彼を責めるなよ」

「ぐれても厄介だからな」

「やかん非行になっても面倒だ」

実は、彼は自分の「やかん妄想」に気づいていたのです。しかし、彼は妄想を語り続けた。なぜか?

「だって、『ほら吹きケトル』があったっていいじゃないですか」


終わり

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やかん飛行 ジュン @mizukubo

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