Color a Gazer

カラーアゲイザー

プロローグ

その世界に天と地は存在せず、


『敵対者観測できず、残存数十八』


その世界に武器と呼べるものは存在せず、


『残存数十五、継承者と行動せよ』


その世界につながる道は存在しなかった。


『残存数十、敵対者からの逃走を優先せよ』


故に彼らは脅かされず、戦う術を持たなかった。


ただひとつの例外を除いて


「……」

「……」


少年と少女は空間を走っていた。

地面と呼べるものはなかったが、その足は空間を蹴り、確かに進んでいた。

彼らの表情は無そのものだったが、何かから逃れるような様子で走っていた。


『残存数七、前方に異界からの転移確認』


突然、彼らの目の前に褐色の男が現れる。

しかし表情は未だ変わらない。


「随分とおかしなものに追われているね……良ければ手伝おうか?」


男は一瞬驚くが、穏やかな表情で二人に話しかける。

少年はこくりと頷き、少女を先に歩かせる。


『残存数五、渡り歩くものに協力を要請』


「彼女の保護を依頼する」

「喜んで」


少年のどこか無機質な言葉に、男はにこりと微笑み自身の手を噛む。


『残存数三、継承者の安全を確保した』


少年がなにかに答えるように頷くと、その体は粒子のように散り、少女の体へと吸い込まれていく。


「さぁ、いこうか」


男は血が滲む手で少女の手をとる。

少女は表情を変えず頷く。


『残存数一、我々の存在を継承者に託す』


「あぁそうだ、僕のことは――ビヨンドとでも呼んでくれ」


そして二人の姿は吸い込まれていくかのように虚空へと消えていった。


後に残った空間は、瞬く間に蠢く闇に侵食されていく。


そうして、この世界は閉ざされた。










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