キャラメリゼ

 テラスで支援先の児童保護施設に贈るハンカチに刺繍を入れていると、ドロップは焦がしキャラメルの匂いを嗅ぎとった。

 確か他の屋敷から異動してきたメイドが、おやつ当番の際には十八番のタルトタタンを作ると言っていた事を思い出す。正直フルーツ入りのスイーツは得意ではないのだけど、水を差すのも申し訳ないと口を噤んだ。

 庭と廊下を繋ぐ扉が開かれ、現れたのはメイドではなく#婚約者__リンドウ__#だった。


「食べる?」

「はい、ありがとうございます」


 持ってきてくれたのは、カタラーナだった。


「ガキどもに渡すブツの刺繍なんてメイドの仕事でしょ?」

「お裁縫担当のメイドさん達、彼氏寝取られたとかでナイフ片手に大暴れした子が出てそれどころじゃないんです」


 小休止だと、パリパリに焦げたカラメルと滑らかなカスタードを美味しそうに頬張るドロップは、毒入りタルトを口に詰め込まれた新参メイドが地下の下水道から回収されていく事を知らない。

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