昼食

 トマトの風味と牛酪バターの香りが鼻腔を擽る。スプーンを差しこむと、先端が抵抗なく入っていく。そこから覗く橙色に染まった米。口に入れると、まずは柔らかな卵が舌の上で蕩ける。卵の甘みとバターのコクに絡まり、味を引き立てるケチャップの酸味。

 その下の米はこれまたケチャップで甘酸っぱく味付けされた上、柔らかい鶏の旨味と微塵切りにされた玉葱の甘さを吸い込んでいる。卵のまろやかさとチキンライスの甘酸っぱさが口の中で混ざり合っていく。

 美味しそうにオムライスを頬張る恋人に、業者に扮した刺客の頭をゴルフクラブでカチ割っておいて、よくこんな真っ赤な料理が食えるなとリンドウは内心呆れた。しかし彼も別の日に暗殺を企んだ人間の内臓を引きずりだして口に突っ込んだ後、黒胡椒をたっぷりかけたナポリタンを平らげたのでお相子であろう。

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