　ケーキもフルーツも好きだけど、融合（フュージョン）したのは嫌い寄りの苦手分野。そんなシチ面倒な注文は、叶えられた。スポンジをシンプルにクリームとベリージャムでデコレーションした、小さなホールケーキ。フッと蝋燭を吹き消すと、すぐ灯りが点いて顰め面と目が合う。にこりと笑えば帰宅してからずっとこちらの反応を窺っていた緊張が解れたようだ。

　ぶっきらぼうな隣人に監禁されて一年。誕生日を祝ってくれるなんて、ちょっと意外だった。