月の消えた空
ユラカモマ
月の消えた空
今日も明日も明後日も太陽が昇って沈むように月も昇って沈むのだと思っていた。けれど月は失くなってしまった。ある日地球を離れて太陽の方へと飛んでいってしまった。そして二度と帰っては来なかった。月がなくなった後の夜空は月が隠れていた新月の夜よりも暗くてつまらなかった。それにせっかくたくさん集めた宇宙関連のグッズもなんだか色あせていくようだった。机の上のスペースシャトルをつついても何もおもしろくない。僕の部屋の天井に貼ってある引き伸ばした月の写真が僕を見下すように笑っていた。
いつか月に行ってみたいと思っていた。月に行ってあの優しい光に触れてみたかった。それができなくとも月を眺めることぐらいいつまでもしていたかった。けれど月は遠く遠く文字通り手の届かないところまで行ってしまった。今夜空で一際大きく輝いているのは僕が作ったシルバームーン、月の軌道に乗せた人工の月。その大きさは元の月と同じく直径3474.8km、自転周期も元の月と同じく約27.32日、けれど中は空洞になっていてたくさんの人が地球から移住している。それに地球から定期船も出ていて一度は行ってみたい観光地ランキングでは常に上位にランクインしている。そしてそんなすごいものを造った僕はもちろん今や大金持ち! プール付きの豪邸に世界中の別荘を持ち毎日毎日贅沢三昧! 食べたいものが食べれるし行きたいとこにはどこへだって行ける。だけどね、僕の部屋の天井の月は未だに僕の上で笑っている。
ーーー手が届かなくなってなお"月"への憧れは止むことがない。
月の消えた空 ユラカモマ @yura8812
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます