第5話 プテロートの街②
ひたすらに街道を歩いて行くと、スラム街と思しき通りに出た。
日本に住んでいたからお目にかかることはなかったけど……こういう街は本当に存在するのだな?
街の影とも言える部分であるスラム街。
なんらかの理由で職を失った人とかが多く住んでいる。
ゴミ箱を漁る住人。
道端に座り、何かよくわからない物体を売っているホームレス。
かなり奥までスラムが広がっているのを見てもこの街?なのか、国?なのか?は福祉制度がまだあまり整備されてないと見える。
まさに中世頃の絶対王政時代の感じを見ているようだな。
ちなみに現在はここの世界の暦である大陸暦でいうところの1908年らしい。
女神エリスが地上に初めて降臨した年?を大陸暦1年としてそこから数えてるみたい。
なんでこんなこと知ってるんだろう?
ところどころ?中途半端にこの世界の知識がインプットされてるようだ。
どうせなら、初めから全部まとめて本にでもするかなんかしてくれればいいのに。
歩いていると僕の袖が引っ張られた。
「お兄さん……」
「なんだ?!」
ひっ……と驚いて後ずさりするその子はまだ10歳にもなってないように見える少女だった。
「用がないなら、僕は先に行かせてもらうよ?」
「え……あ、あの!!お花、いりませんか!!!!
というか、買っていただけませんか?!」
彼女の手元を見ると、その辺の草むらで摘んできたような小さな白い花がいくつかあった。
お世辞にも買いたいと思えるような花じゃない。
しかし、その少女は見るからに貧相だ。
服もボロボロである。
慈善ということで少し買ってやるか。
幸い金は女神様から貰ったのがたくさんある。
「いくら???」
「銅貨、10枚……です」
そのくらいなら買うさ。優しい笑顔を作る。表情で相手の警戒心を解くのも大事なスキルだ。
「花はいくらあるかい?」
「10……」
「ふむ?なら花は全部で銀貨1枚だな?
銀貨5枚あげよう。代わりにお願いがあるんだが」
「お願い……何ですか……?!」
恐る恐るといったように僕の方を見てくる。
年下の子にこんな顔させるようじゃダメだな。僕もまだまだだ。
「ん、あぁ……僕はこの街に来たばっかりなんだよ。この王国のこと、君が知ってる範囲でいいから何か教えてくれないか?君自身の話でもいい」
ふふっつまりだな、
「銀貨4枚分は情報料ってことだ」
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病で親を亡くしてから何年経っただろうか。
大陸暦という暦はあるにはあるのだが、幼少の、しかも教育をきちんと受けているわけではない平民の私がそんなものを知る由もなかった。
うちはもともと貧乏な家庭であった。
父親は炭鉱で働く鉱夫。
母親は生まれつき足が不自由で内職をして日々を暮らしていた。
他の国民と同様、王国の重税に苦しんでいた我が家に蓄えなどする余裕があるはずもない。
薬はとても高価だ。
回復魔法のようなものがあればいいが、魔法なんてこの世に存在しないと言われている。
結局、薬も買えないまま、親は2人とも流行病にかかって死んでしまった。
親を亡くしてしまった子供は通常、孤児院に入れられてしまう。
私も最初、孤児院へと預けられた。
孤児院では満足いくほどの食事、というわけではないがきちんと三食の食事は取れ、寝る場所も確保されていた。
このまま大人になるまでここで過ごせば、なんとか生き延びれる!!!
そう思っていた。
孤児院では多くの年上の孤児たちもいた。
彼らからいろんな噂を聞いた。
王国が重い税金を取り立てているのは、王家の贅沢のためだ。
それに加えて、貴族たちもその恩恵を受けている。
王国を勝手に出ることはできない。
ここに住むとステータスのどこかにその証が記されて、国外に出られなくなってしまう。
そして極めつきは……
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極めつきは……
目の前の少女が語る話に耳を傾けていた。
本人はよくわからないが、ステータスには12歳とあるから12歳なのだろう。
栄養状態があまり満足いくものではない生活を続けていたから日本人の同年代の子よりも小柄で幼く見えたのだろう。
「極めつきは……
孤児院の子供が売られていく……みたいなんです」
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