神になりたい男
トースター
第1話 彼は生きる意味を失った。
この物語の主人公、セントルグランは20歳4か月にして生きる意味を失った。
とはいえ、悲観的な話ではない。彼はこれまで一介の冒険者として細々とその日暮らし程度の収入である銀貨3枚ほどを稼いでいた。しかしその日、潜ったダンジョンにてその3百万倍以上にあたる金貨1万枚のシロモノを手に入れたのだ。
超高額商品を買ってくれるようなコネを持たない彼は、冒険者組合に無理やり頼み込み、「譲渡する代わりに1週間で金貨1枚支給し続ける」という契約を交わすことに成功した。
この騒動は広く知られるほどに大きな出来事だったものの、実際に彼が持っている金銭はちょっとした小金持ち程度のもので、すぐに収まりトラブルを呼ぶようなこともなかっだ。
村農家の三男坊だった彼は生きるために冒険者となり、冒険者として大成することには挫折し、「冒険すること」の危険性を経験していた。
彼は「生きること」が生きる目的になっていたのだ。
彼がシロモノを手に入れたときに得た感情は人生への達成感だけであり、冒険者としての達成感はおろか優越感すらなかった。
そして今、彼は「」に生きている。
神になりたい男 トースター @araisemihito
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