【童話】長い旅路の終着点で ~長い旅路の果ての刹那の出会いと別れ~

※KAC2022 お題:出会いと別れ




 気づけば僕は旅をしていた。たった一人きりで。


 生まれた時の事は覚えていない。


 どうして旅をしているのかも、どこへ向かっているのかもわからない。


 ただ前だけを向いて、先へ先へと進んでいく。


 てつく闇の中、僕の体は、こごえるように冷たくなっていた。


 誰かと温もりを分かち合いたいと思っても、叶わない望みだった。


 遠くに誰かがいるのは見えたけど、近づくことはできなかったんだ。


 僕の進む道は決められていたから。




 長い長い旅を続け、ついに僕は見つけた。


 道の先、煌々こうこうと輝く光を。


 そこに行くために旅を続けて来たんだとわかった。


 ここが旅の終着点だ。


 光の周りには、僕とは違う顔ぶれがいた。


 旅をしない種族なのだとわかった。


「こんにちは。どこから来たの?」


 通りすがりにいきなり話しかけられて、びっくりする。


「わからない。ずっと遠い所から」


 歩みを止められない僕は、すぐに離れてしまった。


「やあ、よく来たね。どこまで行くんだい」

 

 また違う顔に話し掛けられる。


「すぐそこの光の所まで」


 見送られて、光へと近づいていく。


「久しぶりのお客様だ」

「お邪魔します」


 すれ違う面々と、一言ずつ言葉を交わしていく。


 光に近づくにつれて、だんだんと温かくなってきた。


 汗が出てくる。


「ここを通り過ぎるようだが、少し光に近すぎやしないかい?」

「これでいいんだ」

「そうか……」


 温かい。


 切望し続けた、燃えるような熱。


 いっそ飛び込んでしまいたかったけれど、残念ながら、僕にその力は残されていないようだった。


 最期に、みんなと言葉を交わせて、この熱に出会えて、よかった……。


 僕は眠るように旅を終えた。



 * * * * *



「見て、すごく綺麗な彗星すいせい

「ただの氷と岩のかたまりだろ」

「そんなこと言わないで。ずっと遠くから旅をしてきたんだから」

「どうせまた来るんだろ。俺たちが生きてる間かどうか知らないけど」

「ううん、これはもう来ないの。ここで燃え尽きて終わり」

「そう言われると……綺麗な気がしてきた」

「でしょう? ねぇ、願い事、しようよ」

「そうだな」



「「世界が平和でありますように」」

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