第14話 10月2日 ②
色がすえて、まだらに薄まったアール・デコ調の茶色いビードロのソファーに座りテーブルを挟んで向かい側には、元厚生労働大臣が経営する児童養護施設の定期検査控除の資料をマジマジと読み込む田中がいた。
昼を過ぎたこの時間オフィス街にあるこの喫茶店には私と田中以外に客はおらず店内の天井の隅にあるブラウン管テレビには昼ワイドショーが写っていた。
机の上に置かれた二つのアイスコーヒーの私のグラスは空になっていてカランッと氷の山の一画が崩れる音が店内に響いた。
田中は足を組みながらソファーの端に斜めに座り、資料を読み始めてから30分ほどずっと同じ姿勢で、ただホッチキスで端を止められた資料を定期的にめくる行為を数回していた。
私は無くなったコーヒーのお代わりを頼もうとウェートレスに向かって手を挙げようとしたとき田中の方から何枚も紙をめくる音が聞こえてきたので目を向けると丁度読み終えたようで、テーブルにパッと資料を置きその上にかけていた眼鏡を置いて眉間を指でもんだあと、手をつけていなかったアイスコーヒーを半分ほど飲んだ。
「どうだ?」と田中に聞くと。
「確かにいい線いってると思う。」
「じゃあ。」
「でも何でこんなデカイ話をこっちに寄越す?」といった後少しテレビの方を見て考えてから再び口を開き「そうか分かったぞ、何隠してる雲村。」
「バレたか。」といって毛のない頭をコリコリ掻きながら。「前に調べてたのがやっと記事になりそうなんだけどな、社主に止められるかも知れないから。」
「で、社会部を巻き込もうって訳か。」
「恨むな、お前の所の種を育ててやったんだ水まくぐらいしてくれてもいいじゃねえか。それにそっちにもメリットはあるだろう、今井俊樹は大友政権で厚労大臣になったが今の橋爪内閣でも内閣改造前まで留任してた。もし俺達のが駄目になっても、そっちの記事だけで首相の任命責任は十分追求できる筈だ。」と聞いた田中は腕を組みじっとコーヒーを見つめ少しの間考え、こちらを見て口を開いた。
「この資料を作ったのは東山か?」と田中は静かに聴いた?
「ああ。」
「いつから?」
「俺たちと一緒にやりはじめたのは前にお前とあった2、3日前からだ。お前原口さんって覚えてるか?」
「原口って、警視庁に居た?」
「ああ、あの時は定年間際で八王子にいて、丁度東山と知り合いだったからかくまって貰ってたらしい。」
「東山は無事なのか。」と自分で理解するように呟いた。
「よく、東山が書いたって分かったな。」
「目を掛けてたからな。」
「過保護になり過ぎて嫌われたか。」と聞くと田中はふっと笑って何も言わなかった。
そこに私のジャケットの内ポケットから黒電話の音がなったので取りだしてみると緒方と表示されていたので田中にことわって店の外で電話に出た。
「おう、どうした?」
「キャップ、東山が見つけました。」
「犯人をか?」
「すいません、犯人かもしれない子を見つけたんですけど逃げられました。」
「逃げられた?」
「はい、何があったのかはいきなりのことだったんでよく分かんないんですど、何故か何メートルか吹っ飛ばされてさっきまで気絶してました。」
「気絶ってお前は大丈夫かよ?」
「怪我は無いんで大丈夫です、それよりも東山の方で、鍵になりそうな子を見つけて新幹線で東京に向かってるそうなんでキャップ東京駅まで迎えにいってもらえませんか。」
「おお、分かった何とかする。」
「後原口さんと池谷さんにも連絡して貰っていいですか、車の中に鍵と携帯を閉じ込められちゃって、電話番号分からなかったんで。」
「それは良いんだけどお前の方は大丈夫か?」
「はい、今JAF呼んでるんで解決したらボクも東京に戻ります。」
「おう、分かった、気をつけろよ。」といって電話を切って、原口さんに掛けようとしたとき店の中から、田中が慌てたように出て来て。
「おい、テレビを見てみろ。」と言うので急いで店内に駆け込みテレビを見ると、画面には東京駅の煉瓦造の丸の内口をヘリから撮影した映像が写っていたが、その駅舎は私が知っている形ではなく、正面から見て左側の駅舎の屋根が吹き飛んで灰色の煙や土埃が舞っていて横にある高層ビルの低層階の窓ガラスが割れ、破片が地面に散らばっていた。
駅では所々から何本もの煙が立ち昇っていて駅内部での火災が想像できた
映像に呆気にとられたわたしは「何だこれ。」と呟いてしまった。
テレビのスピーカーからははワイドショーの司会者が何が起こったかは分からなく警察がテロや事故などの理由を含め捜査をしてるといった事を反復して話すばかりだったが、次の瞬間ピロピロピロと字幕速報の音が鳴り大阪駅で爆発が起きたという情報が流れワイドショーの司会者は数秒間言葉をなくしていた。
「田中。」と声を掛け、会社に帰ろうとした時にスマホから音がした。画面には原口さんと表 示され電話に出ようとすると、テレビから再び字幕速報が流れ福岡駅で駅舎が火事になったと表示され、田中の方を見ると手帳を見ながら誰かと連絡をとっていて、私は原口さんからの電話にでる。
「雲村、ニュース見てるか?」
「はい、原口さんは大丈夫ですか?」
「ああ、今は池谷のとこにいる。」
「良かった。ちょっと頼みたいことがあるんですけど東山がこっちに向かってるんで迎えにいってくれませんか、誰か連れて来るみたいなんで。」
「おう分かった、どこの駅だ?」
「まだ連絡取ってないんで、直接おねがいします。」
「分かった。お前は今から東京駅か?」
「はいちょっと忙しくなりそうなんでそっちの方任せることになりそうです。」
「わかった、こっちは何とかするからお前もきいつけろよ。」
「はい。」といって通話を切った。
テレビ画面には再び字幕速報が流れ名古屋、福岡でも同様の爆発や駅舎の倒壊が起きていると映し出された。
***
同時多発的に起きたターミナル駅の爆破事件のため東京駅が4時から封鎖されたので、北陸新幹線はくたかは上野までで止まってしまったため仕方なく新宿経由で東山と原口さんとの合流場所である品川駅に着いたのは5時前だった。
無数に並ぶ改札口を出ると人混みの中三角柱の時計の根本に原口さんと東山その横に具合悪そうにしゃがんでいる電話で名前を聞いた市川美香がいて、2人はその横で何かにのぞきこんでいたので小走りで近づき「お待たせしました。」というとこちらに振り向いた東山は心配そうな顔で。
「緒方さん。」
「すいません、時間かかって。」
「いえ私達も、結構新幹線の中で待たされたから今来たとこです。」
「良かった。俺も上野で降りられたから新宿経由で来ようとしたら電車は遅れるし人で混んでて結局1時間半ぐらいかかりましたよ。」
「それより緒方これ見たか。」と原口さんが差し出したスマホの画面にはツイッターに投稿された動画だった。
動画は東京駅でカップルが撮ったもののようで女性がカメラを撮っている男性に話かけている映像が数秒間つづきいきなりバックで火柱が起こる映像だった。
私は二人の方を向き「これは。」と聞く?
「ツイッターで今大量にリツイートされてました。」と言われもう一度映像をみると、最後のところで火柱にズームするするところで録画が切れていた。
「あ、ちょっと最後の所コマ送りで再生してもらえませんか。」と東山が言うので少し前にもどしコマ送りで動かすとズームされた火柱の根本に中心に逆光の人の影が一瞬写って映像が止まった。
「これは。」と聴くと東山は座っている具合の悪そうな女の子の方をちらりと見て小さな声で。
「わかりませんけどなんかありそうじゃ無いですか。」
「この子具合悪そうだけど大丈夫?」
「なんか東京に近づくにつれて、ひどくなってきてたんですよ。」と聴くと東山は市川美香の前でしゃがみ込み「どこに居るかわかるの?」と聴くと彼女はおもむろにみどりの窓口を指差し「あっち側」と言った。
「緑の窓口か?」と原口さんが言う
「違いますよ、大体北西の方です。」と東山がスマホの画面を見ながら言った。
「向こうにあるっていやあ田町に新橋、有楽町って繁華街ばっかだな。」
「何言ってるんですかその先には東京駅ですよ。」と東山は私の持っているスマホを見詰める。
「多分東京駅だと思う。」と市川美香はポツリと言うと。
「じゃあこの事件っはこれまでの事件の続き?」とふっと頭に浮かんだことを呟くと原口さんが。「でもよう、規模が違うだろ?」と言うと東山が「もしかしてこれまでは練習で今回が本番だったんじゃ。」と、一つの仮説を話した。
「今回って大阪、名古屋、福岡も?」と東山に聞き返すと彼女は市原美香に「一度に何人も操れると思う?」と聞きく。
「私は出来ないけど野上くんならできるかも。」
「まあ、ここで話するのもあれだしそろそろ車に行こうぜ。この話はそこで。」と原口さんが言うと市原美香はゆっくりと立ち上がり歩き出した。
「おい、嬢ちゃんどこ行くんだ?」と聞かれると彼女はポツリと「くるま。」と言って。出口の方へヨタヨタと歩き出した。
「車って、誰の?」と自分と東山さんを見渡した。
「「さあ?」」
「あの嬢ちゃんに車の置き場教えたか?」
「いいえ、私も知らないですから。」といってみんなで彼女を追いかけた。
「ったく最近の若い奴は。」と原口さんは小さく呟いた。
***
8階建ての毎朝新聞社屋の8階に社主の執務室があった。
室内には壁掛けのテレビから流れて来る全国で起こった爆発事件の報道特番のキャスターの声が流れていて、どの局も情報がまだ少ない為、東京駅から半径2キロ圏内に居る人は指定の待避エリアに移動してくださいと、同じ原稿を繰り返し読むだけだった。
さっきまでは映像に各社報道ヘリからの中継映像が流れていたが警察からの要請でヘリでの飛行を止めるように通告され午後3時を過ぎるとどこのチャンネルでもそのような映像は無くなり封鎖エリア外の街の様子を流すようになっていた。
執務室の一番奥にある大きく威圧感のあるデスクの前の皮張り椅子に座りながら、夕刊の締め切りギリギリに起きた事件のため内容が浅くなった夕刊を読んでいると、重厚な雰囲気の家具が集められたこの部屋の中で一番チープな感じを覚えるプラスチックの白い電話機の呼び出し音がなったので受話器を取ると秘書の竹下美智子だった。
「社主、大友幹事長からお電話です。」
「うん、繋げてくれ。」と言うとすぐに通話が切り替わった。
「忙しい所すまんね。」大きく凄みの効いた声がした。
「いえ、幹事長こそあんな事件の後で。」
「ああ、それなんだがな毎度で悪いんだが頼みがあるんだ。」
「頼みですか。何でしょう?」
「単刀直入に言うと今回の事件についてあまり詮索せんで欲しいんだ。」とバツが悪そうに言うので少し呆れたように。
「あのですね幹事長、20年ぶりに起きた同時多発テロなんですよ。今だってどのテレビ局も特番を組んでるあのテレビ東京だってやってるんです。」
「それはわかってる、ちゃんと記者会見もやるし政府見解もしっかり出す。だが衆議院の選挙が来年の春だということもある。君も知っている様に首相は平時の国政運営には強いがこう言った緊急時のやり方を知らない。それに我が国民のいい所はすぐ忘れてくれる事だ。」
「国民をばかにしてるんですか。」
「それを君が言えるのか?」
「しかし!」
「くどい。君は私が思っている以上に自分の立場がわかっていない様だな。文屋は新聞に私たちの言う事を書くだけでいいんだ。社会正義なんて迷惑なもん振りかざすな。自分だってそれで甘い蜜を吸って来なかったなんて言えんだろ。」
「・・・・。」と答えに詰まっていると相手は再び落ち着いた声で「よろしく頼む。」と言った後プツっと通話が切れたので投げる様に受話器を置いた。
***
原口さんが雲村さんに頼まれ、皆んなを迎えに行き私は一人になってから、雲村さんに東京駅など全国で起こってる事件の情報を集めるように電話で頼まれた為ディスプレイの横に置いてある無線機で警察無線を傍受したり携帯のハッキング、ツイッターのなどで東京駅の情報収集をして居ると、パソコンのスピーカーからチャランっという音と共にスパイケータイの暗号解読が完了したとウィンドが画面出てきたので、キーボードを別のパソコンに合うように接続を切り替え、暗号化されているデータをいくつかのフィルターにかけるとプログレスバーが表示された。
無線機からは定期的に通信が流れてくる音を聞きながら、壁にかかっている時計を見るともう5時40分をこえていた。
原口さんが私のグレーのランドクルザー70に乗って品川に向かってから3時間ぶっとうしで仕事をしていて一息つこうとキッチンに向かい湯を沸かしていると、デスクに置いてあるスマホが鳴った。
火を消してスマホを取りに行くと画面に緒方さんの名前が表示されていたので出て見ると緒方さんが出た。
「緒方さん、怪我大丈夫ですか?」と聴くと忙しそうに早口で「大丈夫です。それより今から東京駅に行くんですけどどこも渋滞してるんでいいルートパソコンで調べられませんか。こっち、なんかネットが遅くて。」
「ああ、丁度よかった雲村さんに全国の爆破事件について頼まれてて調べてたんですよ。政府も警察もいまだに会見してないし全く情報が出て来ていないんで。其れより東京駅に何しに行くんですか?」と言いながらデスクに向かいたったままネットを開く。
「東山が連れてきた子が言うには野上裕太が東京駅に居るみたいなんですよ。」
「本当ですか!て事は今回の事件も?」
「そうかもしらません。まだわかりません。」
「雲村さんは知ってるんですか?」
「それがキャップに何回も掛けてるんですけど出ないんですよ、どこにいるか知ってます?」
「さあ、1時過ぎにかかってきたときは会社にいたみたいですけど。それより東京駅なんですけど事件が起きてすぐ東京駅から6キロ圏内は緊急配備になって2キロ圏内は封鎖されたみたいです。多分車では近付けないと思うんで歩いて行ったほうがいいかもしれないですよ。多分一般人は2キロ圏内には入れないと思います。テレビの中継もどこもできてないみたいなんで。」と言うとシステムチェアに座りデスクトップに貼ってある連続爆破と書いてあるフォルダからデータをいくつもの画面に素早く表示した。
「封鎖って、どうにか中に入る経路とか見つけれないですか?」
「ちょっと難しそうですねー、軍事衛星がハッキング出来ればいいんですけど。どうも警察はG事案で捜査してるみたいです。」と言いながらキーボードを打ちハッキングした警察関係者のパソコンのデータを漁っていると緒方さんは何かを考えていたのか少ししてからこう言った。
「g事案ってテロとかゲリラですか?」
「同時多発テロを疑ってるみたいです。」と言うと少しの沈黙の後。
「池谷さん、どうにか東京駅に向かうルートって探せますか?」
「いやーちょっと難しいですね今監視カメラとかみてるんですけど、多分地上は厳しいです。」
「ですよね。」
「たださっきから、無線聞いてると地下鉄が止まってから、そこら辺の情報が少ないんで、地下からなら行けるかも。」
「線路をですか?」
「そうです、丸の内線の。でも赤坂見附から淡路町まで封鎖されてるんで距離的に見てお茶の水から忍び込むのがいいんじゃないですかね大体2、3キロぐらい。」
「地上じゃ無理そうですか?」
「いけない事は無いと思いますけど行くなら停電とかで完全に暗くしてからじゃ無いとダメでしょうね。」
「そうですか。」
「もし地上から行くんなら原口さんについてもらったらいいじゃ無いですか。辞めたの最近だからもしかしたら間違えて中に入れてくれるかもしれませんよ。」
「ちょっと考えときます。」
「まあでも、ほんとに行くんならこっちで警官のスマホのGPSを見てサポートしますよ。」
「ありがとうございます。ひとまずこっちでどう行くか考えてみます。」
「すいませんあんまり役に立てなくて。あ、もし地下から行くなら丸の内線は第三軌条でレールの横に電気が通るレールがあるんで触らないように気を付けて下さい。」と言って通を終えた。
***
緊急の編集会議の為、社会部のフロアの端にある会議室へ向かう為エレベーターにに乗っているとチーンと言って扉が開き外に出ると同じタイミングで別のエレベーターから出てきた田中と会う。
「よく会うな。」
「ああ。」田中が答えながら一緒に会議室の方に歩いて行く。
「何か掴んだか?」
「いや、どの道もグリッドロックで東京駅に繋がる鉄道はどこも運行中止だ、しかも東京駅の周りは封鎖されてるから情報を手に入れようにもな。それに警察も政府もまだ会見を開いてない。それにどの情報源もみんな一斉にダンマリかましてるから多分上も情報を出しあぐねて箝口令を敷いてるんだろ。一体あそこで何が起こってるんだか。悲しいのは今の情報源がSNSだけだって事だな。そっちは」
「こっちも似たようなもんさ、うちは少人数だから一人居ないだけでも大変だ。」と話しながら会議室の前に差し掛かると田中のジャケットから黒電話の音が鳴ったのでスマホを取り出すのを見て自分がオフィスにスマホを忘れていたの思い出すが、開けっ放しの扉の中に社主の姿を見つけたので取りに行くのを諦め、社主に一礼して中に入る。
中には小さな部屋のの真ん中長テーブルが並行に二つ繋げられていてその周りに15人ほどの各部署の部長クラスの人間が集められていて、私たちが最後のようだった。
社主の横には黒いスーツに黒縁メガネで30代前半ぐらいの綺麗な社主の秘書が立っていたて席に着くと秘書が会議室の外に出て扉を閉めた。
社主はずんぐり小さな体をムックリ起き上がらせ、いつものようにゆっくりとした話し方で話し始めた。
「みんな、時間がない中私もこんなとこに来てしまってやりにくいだろうから、ちょっと喋ったらすぐに帰ので少し聞いてくれ。皆も知ってる通り私はもともと政治記者で今でも、時の政権とも懇意にしていた。それについては皆にも意見はあると思うが私はそれが報道の一つの側面だと思っていたし、会社や社員の為だとも思っていたがその為に苦労した者もいるだろう。だが皆も知ってるようにここ数時間の間の政府の対応はお粗末だ。東京、名古屋、大阪、福岡で多発テロが起きてるのに会見もしない、関係者に箝口令を敷いてると言う噂もある。しかもいまだに死傷者の報告もなしだ。民衆が不安な時にこの対応は憂慮すべき事だし、私は政府に失望している。そこで皆、我が社は今日この時間から書かれる記事の一文字までを民衆の知る権利の為とする。皆、自分の良心に乗っ取って責任有る記事を書いてくれ、責任は全て私が取る。政府の利益に沿わない事だろうと民衆の為であれば書きなさい。以上。」と熱く熱弁し尽くした社主は全てを出し尽くしたかのように飄々とした感じで扉のほうを向きそのまま直ぐに扉を空けて外に出て行った。
***
社主の秘書として、会議が始まる前にそとへ出た私はエレベーターが来るのを待っていると、背が低いキッシンジャーのようなが見た目の社主がとぼとぼ地面を見ながら何かを考えているかのように歩いて来た。
「社主、早かったんですね。」
「ああ。」と気が抜けたような疲れたようなように社主は答え、エレベーターが来るまで何も話さなかった。
チーンとエレベーターが到着すると社主に先に入ってもらおうと待っていると彼はボタンを押して「どうぞ。」と促した。
社長室がある11階のボタンを押して上に向かっていると彼はいきなり。
「言っちゃった。」
「何がですか?」と聞くと。
「自由に記事を書いていいって。」といったので。
「かっこいいですね。」と言うと少し嬉しそうに。
「本当?」と聞き返して来たので私は「はい。」と答えた。
「これから、忙しくなりそうだ。君にも頑張ってもらうからね。」と自信を取り戻したように言うので、男って幾つになっても単純なのかと思いながら「はい」っと答えると少ししてから。
「じゃあ今度食事に行かない?」
「セクハラですよ。」
「そうか。」と少し落ち込んだように声が小さくなったので「考えておきます。」と答えるとチーンと目の前の扉が開いた。
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