第12話 10月1日

10月1日



午後6時50分。俺と東山は長野県にある鉄道の駅近くにある駐車場に止めてあるヴィッツの中である人物が駅近くにある立ち飲み居酒屋に入っていくのを待っていた。


「そっちはどうでした?」


「全然ダメ、女の子なら女同士で何とか話が聞けるかなって思ったんだけど全く聞けないんですよ。そっちこそ如何なんですか?」


「全然、1人になった所で会いにいくんだけど、警戒して全く話してくれなくて。」


「原口さんは如何なんですか?」


「何か5人くらいから話を聞けてるらしいです、前の施設の話とかで能力が発現した子は、とかはまだ話してないそうです。」


「さすが原口さんだな。で、結局今会えたのって何人なぐらいなの?」


「確か9人だったかな。」


「2週間で9人って、先、長いな。」と話していると、見張っていた立ち飲み屋の入り口にひとりのグレーのスーツを着た男が入って行った。


「来ましたね。」


「緒方さん、本当にやるんですか?」


「当たり前だろやらなくちゃ。」


「でもこれ犯罪ですよ。」


「ばれなきゃいいんだよばれなきゃ。それよりもっといい服なかったのかよ。」と言って彼女の服を見る黒いパンツスーツだった。


「ひつれいな、このスーツ結構高かったんですから。」と言ってジャケットの下に来ている白いシャツのボタンを一つはずし、胸元の谷間が少し見えるように形を整え終わった後に「こんなんでどうですか。」とこちらに体を向け聞いてきた。


「いい感じ。」と答えながら胸元を脳裏に焼き付けた。


「早く行方不明の子達の行方を見つけないとな。」と言いながらドアを開け外に出ると反対側から東山が出てきて。

 

 立ち飲み居酒屋正面の上には、高さ2メートルは有りそうな天狗の顔面が私達を見下ろしてるようなの看板がついていた。


 この街は駅の周りが住宅地といった感じだがちょっと離れると田んぼと畑ばっかりで、近くに他の居酒屋もないので研究所の職員が飲みに行くところがここしかない為、周りの景色とは裏腹に中はスーツ姿の客が大入り満員だった。


「2時間だ2時間酒の相手してくれ。」


「分かりました、コレも子供達のため。」と東山は自分に言い聞かせていた。


 アルミサッシのガラス戸をスライドすると、大入りの客の奥でカウンターの中に何人もいる店員のいらっしゃいませーと言う大きな声が聞こえてきた。


「なん名様ですか?」と黒いシャツにタオルのバンダナを巻いた店員がいうので。指を一本立てると一緒の客だと思ってたようで「あ、別々ですか?」と聞き返した。


「はい。」


「お好きな席どうぞー」


 中に入ると店は奥が深くカウンターは大きなL字型で壁との間はとても狭く一番奥にあるトイレに行こうとする客はほぼ全員と体が擦れ合って、行ったり来たりおするだけでなん回もすいませんと言わなければならないほどだった。


「顔は覚えてるか?」と小さな声で東山に耳打ちすると下を向いて。


「大丈夫です。」と帰ってきた。


ゆっくり店の廊下を歩き目的の男を探すと奥から 4人目の場所で一人でビールを飲みながら焼き鳥を食べていた。


 男は小太りで眼鏡をかけワックスで髪をきれいに整えており見た目はに不快感は全くなかった。


ちょうど両脇に20センチほどの間があったので東山と両側を陣取ると男は自分の目の前の料理をを詰めて両側のカウンターを少し開けた。


「あ、ありがとうございます。」と愛想良さそうに東山が言うと男「いえいえ。」とオーバー気味に返す。


 店員がカウンターの中では背の低い女の店員が奥の方までやってくると先に自分が。


「生中と枝豆。」と私が先に店員に頼んだ後東山の方を少し見た。


「えーっとどうしよう、じゃあハイボールと、あの、コレってなんですか。」と対象の男に話かけた。


「えっ、ああ、焼き鳥の盛り合わせです。」と驚きながら答える。


「私も同じのを」と店員に頼んだ。


「すみません、ここ初めてなんで何があるのか分からなかったんですよ。」


「そうなんですか、メニューは上の木札に書いてあるんですよ。」と言っていたので見てみると黒く、くすんだ木札がなん枚も飾ってあた。


 いつのまにか男は東山の方を向いてカウンターに肘をついていて私は左肩にかけたリュックを床に置くフリをして男のバックを物色しようと下を見ると東山側に置いてあったので男に触らないように腕を伸ばすが指先しか触れることができなかった。


5秒ほど悪戦苦闘していると東山が気付いたのかヒールの先で少しだけ鞄を押してくれたので一気に引き寄せ、バックの一番外にあるポケットに入っている定期と一緒に入構カードが紐で繋がっていて手持ちに縛り付いていたので慎重にほどき、バックを元の位置に戻した。


 起き上がりカウンターから顔を出すと丁度女性の店員がジョッキを持ってきた所だった。


「おまたせしました、生ビールになります。」


「あっ、あの注文キャンセルできますか?」


「はい?」


「のどっかにスマホ無くしてきちゃったきたみたいなんで。」と言うと隣の男に。


「あのコレ、手をつけてないんで飲んでください。」と渡すと店員に向かって。「お会計お願いします。」と言った。すると男はびっくりしながら「あの、いいんですか?」


「はい、ちょっと携帯無くしちゃって。今から出るんで。」


「あっ、じゃあ、ありがとうございます。」と言われてすぐに会計をすませ外へ出て駅前のコインパーキングに停めてあったレンタカーのヴィッツに乗って研究所に向かって猛スピードで走り出した。


 研究所から駅まではバスが結んでいて、研究所の駐車場が少ないためほとんどの職員がそれで移動していた。


 車で田舎の幹線道路を30分ほど進むと車の窓越しに広い田んぼの中に総合病院のような大きな建物が見えてきて、カーナビの画面の目的地はその方向を表示していた。


 研究所から少し離れた幹線道路沿いにあるコインパーキングに車を止める研究所までの、街灯の間隔が長い薄暗い田んぼみちを歩いていると幹線道路の光に慣れた目では全く道が見えなかったが、歩いているうちに次第に目が慣れていった。


 10分ほど歩いて研究所につきくと、研究所は前に潜入した人能研の研究所に比べ警備がそんなに厳し苦なさそうで、外周はフェンスで囲まれていて高さもあまりなかったため街灯がなく暗い場所でフェンスを乗り越え近くのき影にしゃがみ込みリュックからケーブル接続の

インカムを取り出し耳に着け、二つ折りのスパイ御用達ケータイに繋ぎ池谷さんに連絡をした。


「もしもし、池谷さん。」


「もしもしーし。聞こえてますよ。」


「こっちは今フェンスを越えて駐車場の近くに居ます。」


「おお、じゃあ敷地内に居るんですか?」


「はい。」


「緒方さん。」


「何か、メタルギアみたいですね。」


「いやいやミッションインポッシブルでしょ。」


「そっちかー。」


「じゃあサポートお願いします。」


「了解、じゃあ一先ず建物の外にある非常階段のところわかります?」


「ああ、一か所しか外階段がないんで向かいます。」


「気を付けてくださいね、警備員は5人しか居ないんですけど巡回ルートがどうしてもわからなかったんで近付いてないか気を付けてください。一応監視カメラはハッキングしといたんでなんかあったら報告しますけど。」


「はい、お願いします。」


*** 



 目の前にある複数のディスプレイには解像度が荒い廊下と警備員の詰所の映像が映されていて目の前にあるメインディオスプレイにはGoogle マップで研究所と周辺を映し出されその中に研究所の建物に近づく赤いピンが立っていて、そのピンが少しずつ移動して建物の場所に重なると耳につけたインカムから緒方さんの声がした。


「池谷さん。つきましたよ。」


「了解、こっちもgpsで確認出来ました。じゃあ近くに入り口、有りますか。」


「ありますあります。今目の前ですただテンキーがついてるんですけど番号って分かります?」


「ああ、それテンキーの上にカードを重ねてください。」


「カード?あっ!」と言った後、少し間が空いてから小さい音でピーッと遠くから聞こえた後「入れました。」と聞こえてきたので端のほうにあるディスプレイに映し出された建物の3dの見取り図を目の前のディスプレイに持ってきた。


「了解、そこの設計図では地下が3階と地上5階までフロアがあるんですけどどっちに行きます?」


「・・・。」


「緒方さん?」


「何か目の前にカメラが動いてるっぽいんですけど。」


「ああそれなら大丈夫です、こっちで予め取っといた映像をループにして流してるんで。」


「了解じゃ地下から行きます。了解。」


 手元のスマホがブルッとなって見てみると、LINEで東山さんから「後何分?」とメッセージが来ていたので「今潜入したところです。」と送り直ぐに返信が来て「遅い‼️」「あんま話持たないから早く帰ってきて。」と帰ってきた。


「緒方さん。」


「はい?」


「東山さんからメッセージで、早く帰ってきてだそうです。」


「簡単に言ってくれますよ。」


「まあまあ、あっちも結構大変そうなんで、でもこっちも長くて30分位しか無いですから。」


「頑張ります。」




***




 さっき男がトイレに行ってる間に東山さんにラインをしてから20分ほどたち横にいる男(さっきそれとなく名前を聞いたら篠田と名乗っていた)はジョッキに半分ほど残ったビールを一気に飲み切とた。


「篠田さん、お酒強いんですねーすごい。」と小さく手をパタパタすると赤くなった顔でニコッとすると案外可愛く笑い、騙してると思うと胸が痛くなった。


「東山さんは飲まないんですか。」


「え、でも私あんまりお酒飲めないんで、酔っ払っちゃうかも知れないから。」


「えっ。」


「じゃあもし飲めなかったら篠田さん飲んでください。」


「任せてください。」


「僕が飲んであげますから。」と言って篠田さんは店員をよんで「じゃあハイボールと。」と言うと私の方を見て「東山さん何飲みます。」聞いてくるのでメニューを見ながら。


「じゃあこのバクダンってやつお願いします。」と言うと篠田さんは驚いた顔をした。


「かしこまりました。」と元気な声で店員が返事をした。


「大丈夫ですか。結構強いですよコレ。」


「えーっそうなんですか、私あんまりお酒の事分からないから面白い名前で選んじゃって。飲めなかったら飲んでくれます」と上目遣いで頼んでみると篠田さんは漫画のように胸を叩いて。


「任せてください。」と言った。


「おまたせしましたー。ハイボールとバクダンです」と言って店員が持ってきたのはハイボールと、ジョッキに入ったビールとショットグラスに入ったウィスキーだった。


「篠田さん、これってどうするんですか?」


「ああ、そのショットグラスごとビールの中に入れるんですよ。」と言って篠田さんはやってくれたので、一口飲んで。」


「すごい味ですね、甘いと思ってました。」


「飲めそうですか?」


「ちょっときついかも。あ、でもこんな強いお酒もったいないけど無理に飲まなくてもいいですよ。」


「大丈夫ですよ、もったいないし。僕が飲みます。」と言って篠田さんはそれをぐびっと半分ぐらい飲んだ。


「凄ーい。」



***



7時56分


「どうですか?」と緒方さんに聞いた


「地下二階は何も無かったです。」と言ってから、詰所の映像を見るとさっきまで5人歩いたのが今は3人になっていた。


「緒方さん、今警備員が二人、詰所を出ました。」


「どこに行くか分かりますか。」


「ちょっと待ってくださいね。」といいながらディスプレイ群の中から階段の踊り場を探し出すと丁度警備員が上と下に分かれて階段を進んでいった。


「一人は上で一人下です。少し隠れてますか?」


「時間がないんで地下三階に警備員が車で三階を調べてみます。」


「分かりました。そこの階はあまりカメラがないんで状況があまりわかりません。あと当直みたいなのがあっての研究員も居るみたいなんで気を付けてくださいね。」


「了解。」



***




 地下三階にある狭いモニタリングルームの二つの27インチモニターのうちの一つには、小さなウィンドが15個、碁盤の目のように開いていて全て安定した波形を刻んでいてもう一つは5人の子供達の様子がカメラを通して写っていた。


 この研究所では研究員はほぼ残業しないため7時を過ぎると当直の人間と警備員しかおらず無気味な雰囲気になる。


 三年前就職した時には夜勤があるなんて聞いてなかったし、実際今年になるまで無かったのに4月に昏睡状態の女の子が運び込まれてから急に夜勤が始まり、その後4人が相次いで運び込まれた。


 夜勤と言っても俺みたいな下っ端の研究員にはモニターに映されたデータをモニタリングして異常があれば報告と対処するだけだった。


 研究所には夜勤を想定して無かったため当直室がなく仮設のモニタリングルームの壁側に長椅子が一台とキャスターが付いている丸椅子があった。長椅子に寝転びながら、夕方出勤する前に買ってきた週刊モーニングを読んでいたら、子供達を映している画面が一瞬白飛びした。


 起き上がり画面をみていると再び、一瞬白飛びするが横の波形はどれも変わっていなかったので不審に思い懐中電灯を持って治療室に向かった。


 廊下を進むと奥からコツコツと小さな音が聞こえてきたので曲がり角で一旦止まると、何処かからか半自動ドアの引き戸が閉まるドンという音がした。


 曲がり角の影から覗き込み誰もいない事を確認するといゆっくり治療室までの廊下を歩きだし「守衛さんいるんですか。」と何故か小さな声を出したあと今度はもうちょっと大きな声で「守衛さん?」と言うと治療室のドアの細いガラスの部分から一瞬光が見えたので近くにあった扉の横にある機械にカードをかかげて鍵を開け身を隠しながら少し頭を出し治療室を見たらドアがゴロロロと空いて中から懐中電灯のような光を持った人間が現れたが顔は逆光で見えなかった。


 コツコツと次第に近づいてくる光に恐怖を感じていると「先生ですか?」と気の抜けような老人男性の声がしたので「えっ。」と言いながら相手に近づいていくと白髪がボサボサで口髭を蓄えた小柄な老人だった。


「何だ、守衛さんだったんですか。」とほっと胸を撫で下ろす。


「どうかしたんですか?」

「いや、子供達のモニタリングをしてたら映像に光が映り込んで何かあったのかと思ったんですけど、守衛さんだったらいいんですよ。それより守衛さんはなんでこっちに?」


「いやね、ここの部屋から物音がするなって思ったんで入って見たんですよ、どうも子供が寝返りを打っただけみたいですが。」と言われたので治療室の入り口まで行くと寝巻きを着たひとりの男の子の腕が布団から出ていたので近付いてかけ直した。


「大丈夫ですかな?」


「はい、いいみたいです。いやーほんとによかったですよ。誰かが入り込んだかと思いました。」


「今日は1人ですか?」


「そうなんですよ、本当は無かったんですけど友達がどうしても変わってくれって言うんで変わってやりました。」




***




守衛と研究員の話声が遠くに行くのを確認すると小声でマイクに話しかけた。


「池谷さん、どうですか?」


「大丈夫ですよ守衛は帰ったし、もう1人も宿直室の方へ行きました。早くベッドの下から出たほうがいいですよ。」


「え?」


「今確認したんですけど宿直室のモニターにその子たちが映ってるみたいですすいません。」


「了解。」


「外は誰もいないんで直ぐ出れます。」と言われ直ぐに部屋を出て階段に向かった。


「いやーほんと心臓飛び出るかと思いましたよ。カメラのフラッシュ機能の切り忘れてて。」


「ご心配かけました。でも何で2人も来たんですか?」


「ああ、それはどうも子供達の上にあったカメラがそこの防犯設備のネットワークじゃなくて内部で後から作られたネットワークに繋がってたみたいなんですよ。」


「ああ、そうい言う事ですか。」とは返すがなにを言ってるのか全く意味がわからなかった。


「それより、さっきの守衛も詰所に戻ったみたいなんで急いでそこから出ましょう。東山さんからまた催促のラインが来てるんで。」


「了解。」



***




 9時56分、30分前に池谷さんから向かってるって書いたラインが送られてきて30分がたった。


 横にいる男に随分お酒を飲ませてるけど、案外お酒に強くて全然眠そうな気配がないのに、私は付き合って少しだけ飲むだけなのに酔い始めていた。


 赤い顔で少し喋り方が覚束なくなった男がチラッと腕時計を見て。


「ああ、もう9時か、帰らないと。」と言い出した。


「もう帰るんですか?」



「はい、だって明日も仕事があるから。」


「でも私もっと、篠田さんと話したいです。」


「本当ですか?嬉しいな・・・。でもダメです、僕は仕事に生きる男なので。」と下に置いた鞄を取ろうとしゃがみ始めたところで。


「ねえちょっと待って、いっぱいだけあと一杯だけ飲みましょう。」


「でも東山さん、全然飲まないじゃないですか。」と少し悲しそうに男は言った。


「そんな事ないわ。」


「ウソだー。」


「あなたと一緒にゆっくり飲みたいだけ。」


「本当ですか。」と少し考えた後。「でもやっぱり今日は帰ります。僕いつもここで飲んでるんで

また会いましょう。」と言って鞄を取るため屈み数秒そのまま止まってびゅっと立ち上がると

「無い。」と呟きながらカウンターの上にバックを置き中をあさり始め、終いには逆さにして中のものを全部ブチまけた。


「無い無い無い無い。」と呟きながらからのバックを覗いていた。


「どうしたの?」と聞くと泣きそうな声で。


「カードがないんですよ。」と血相をかえながら行った。


「カード?」


「職場に入るカードです。あれがないと無茶苦茶怒られるんです。」


「どこまであったんですか?」


「確かバスに乗るときに定期を使ったんでこの駅のバス停に来た時には有りました。」


「じゃあここからバス停の間を見て来た方が良いんじゃない。」と言うと私は荷物はそのままに、店の入り口に走って行ったのを見送り、店員の女の子に。


「すいませんお冷ください。後お会計。」と注文したあと少ししてから、伝票を持って来て。


「1662円です。」と言った。


「結構安いんですね。」と言いながら二千円を渡すと「ありがとうございます。」と言った後店員は耳元まで顔を近付け「隣のひとがほとんど飲んだのはそっちの伝票にしときました。」と小声で言った。


「ありがと。」と言いながらお金を渡すと。入り口の方から気の抜けた様子でゆっくり篠田さんが歩いて来た。


「有りました?」


「はい、お陰さまで。」


「何処にあったんですか?」


「何か店の看板に掛かってました。入る時に引っ掛かったみたいです。」と言うと店員の方を見

て「お会計お願いします。」と話した。

 

 携帯を開いてラインを見てみると緒方さんから「今外の看板に掛けた。」と書いてあった。しばらくして女の店員が紙とレシートを持ってきて。


「お釣りとレシートです。」と差し出そうとしたので「お釣りは貴方にあげる。」といいレシートだけを受けとり入り口の方に歩きながら後ろ歩いて行くと後ろから「3806円になります。」と言う店員の声と、「結構高いですね。」と言う篠田君の声が聞こえて来た。

 

 店の出入り口の扉を開けると「「ありがとうございました。」」と店員たちの挨拶が聞こえ、それを背に店を出た。


 駅の前のロータリーを見回すと来るときに乗って来たヴィッツが一台止まっていて中には緒方さんが乗っていたのでゆっくり歩いていき、助手席に座った。


「時間内dったでしょ。」


「遅いです。」


「怒った?」


「あのひと案外お酒にけ強かったんです。」


「確かに体デカかったしね。」


「私、あんまり得意じゃないんです。」


「あんまり顔に出ないんだ、全然普通に見えるよ。」


「今凄い気持ち悪くって吐きそうです。」


「えっ?」

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