第5話 9月14日

9月14日


 月間アトランティスは大学館という大手の出版社が発行していた。


 電話で連絡をすると思いの外、早く次の日には大丈夫だと言う事だったので次の日に編集部に向かった。


 大学館のビルは千代田区一橋にある10階建てのビルで受付で待っていると身長が高くて体重も100キロは超えてそうな巨漢の男性が迎えにきた男はサスペンダーでベージュのチノパンを止めて、クリーム色のシャツに蝶ネクタイをしていた。


「いやいや、遅くなってすいませね。」と言いながらその人物は持っていたハンカチタオルで汗を拭っていた。


「いえいえ、こっちの方こそ昨日いきなり連絡したのに予定を空けてもらってすいません。」


「いや〜、毎朝新聞みたいな真面目なマスメディアに取材されるなんて初めてだからお役に立てればいいんですけどね。」と言われ4階の編集部に向かった。

 

 編集部の机はどこも汚く通路にもアフリカや南米のお面や楽器、何に使うか分からない棒や置物が所狭しと置いてあり、その沖にあるオフィスの端の小さな会議室に案内されるとその中にも何かの動物の骨や壺や置物が置いてあり、ここも半分物置みたいになっていた。置いてある机の周りにある椅子に座り太った男は正面に座った。


「改めて、私は月刊アトランティスの岡部鉄夫と言います。」と言いながら渡された名刺には副編集長とかいてあり、岡部鉄夫はこちらから渡した名刺を見田あと机に丁寧においた。


「それで今日はどういった事を話せばいいでしょう?」


「あの、まず見てもらいたいものがあるんですけどよ。」


「見てもらいたいものですか?」と言われながら私はバックからパソコンを取り出し、池谷さんに処理して貰った映像をモニターに映し、映像を一通り見せた後私は岡部さんに尋ねた。


「この映像どう思いますか?」


「どうって言われもすち。この映像って本物ですか?」


「一応。この吹き飛んだ車は近くにあった交番の2階に突っ込んでいました。」と言いながらスマホの中に入っている事故現場の写真を岡部に見せた。


「うわ本当だ、ニュースとかになりました?」


「いえ。事故現場が鹿児島の川内で起こったんですけど、地方紙が小さく取り上げただけで大した記事にはならなかったんですよ。」


「警察のはどう言ってたんですか?」

「ちょうど山で雨が降って下水管の圧力が急に上がった所でタイミングよくマンホールの上に丁度いた車に当たって飛んだとか言ってました。」


「でもこれマンホール飛んで無いですよね。」


「はい。」


「マンホールが当たって2階まで飛ぶ事なんて有るんですか?」


「どうなんでしょう。この原因を調べるためにここに来たんですよ。」


「ということは、超常現象関係?」と言った岡部は目を丸くして、身を乗り出した。


「そういった可能性も含めて自由な視野でいろいろ調べてるんですけど。そもそもこう言った現象起こり得るんですか?」と聞くと岡部さんは饒舌に話しはじめた。


「車が2階まで飛び上がるのにはいろんな原因が考えられると思います。例えば旋風や竜巻などの風による自然災害が有りますけ。でもこの映像を見る限りそんな気配はない、次に警察が言ったように下水管の圧力が上がるってのもそもそもマンホールには穴が空いてますからねえ、相当の圧力がないと飛ばないと思います。あと珍しいんですけど車とマンホールの間が極端に気圧が下がるとマンホールが空いたりしますけど、そんな状況を作り出せる車は現時点でF1カー位しか有りません。で、ここからが僕らの専門分野なんですけど。」と含むように言ったあと語気が強まり。


「超能力があるんじゃないかと思います。」


「超能力?」


「はいその中でも、サイコキネシスとか念力とか言われたりするものです。」


「念力ですか。」


「そうです、緒方さんはポルターガイストって知ってますか?」


「まあ、聞いたことはあります、確か子供が起こすとかでしたよね。」


「はい特殊な磁場が思春期の子供たちの脳に作用し無意識的に起こると言われています。」


「子供ですか?」


「いやいや、大人でも十分に考えられますけどね。でも子供の方が多いんですよ。どうも不安定

な思春期の精神に地球の磁場が作用するとかで。」


「はあ。」あまりにも突飛で突っ込みどころはあるが一応聞く。


「緒方さんあれ覚えてます?政府が人体実験をしてたって言う事件。」


「はい。」あれ俺が書いた記事だけどと思いながら聞く。


「あれ当時は政治的な問題と倫理的な問題が論点になってネットとか週刊誌では超能力じゃないかとか言われてましたよね。」


「そうでしたね。」


「でも海外の記事を見ると結構この説って真面目に語られたりしたこともあったんですよ。どうしてかわかります?」


「どうしてですか?」


「アメリカもロシアもずっと研究してたからですよ。」


「噂では。」


「特に盛んだったのが冷戦の時です。まあその頃は、サイコキネシスじゃなくてテレキネシスの方が研究っされてたみたいですけど。」


「テレキネシス?」


「ああ、テレキネシスって言うのは例えば〜。ああ緒方さんサイコメトラーエイジって知ってますか。」


「だいぶ前にやってたドラマですよね、少し見たことなら。。」


「アレですよアレ、触った物の残留思念を読み取るやつ。あとテレパシーとか。当時は冷戦だったでしょ、だから超能力スパイを造ろうとしたみたいなんですよ。僕は専門外だからそんなに詳しく知らないけど。」


「こんなに話して専門外なんですか。」


「いや〜そうなんですよ、僕の専門は未確認飛行物体、UFOです。なんなら超能力の研究者紹介しましょうか?」


「専門家ですか?」


「はい、僕らよりずっと真面目にやってる人が居るんですよ。」


「その方はどこにいらっしゃるんですか?」


「えっと何処だったかな、ちょっと待っててもらえますか。」と言って岡部さんは会議室から出て行ったので出されていたコーヒーを一口飲むとすぐに戻ってきて手には名刺を入れて置くた為の物か掌サイズのファイルを持ってきてパラパラめくっていた。


「えーっと、あったあったこれだ。」と言って手渡された名刺には『超能力研究所所長芹沢四朗』と書かれていた。


「冗談みたいな名前ですね。」


「そうなんですよ、本物の芹沢博士です。怪獣でも殺せる兵器作っちゃいそうですよね。」と言われた後名刺の裏を見ると、北海道の聞いた事のない地名が書かれていた。


「遠いですね。」


「はい、本人も滅多にそこから出てこないので、ほとんど会ったことがある人もいないと思いますよ。」


「岡部さんは何処で?」


「全日本PSI学会ってのがありましてね。その取材の時にたまたま会ったんですよ。年に一回開かれてるんですけど、芹沢博士はその時だけは自分の研究所から東京から出てくるみたいなんですよ。」


「その学会って今年はいつですか?」


「えっと、確か先月に終わったんじゃないかな。」と宙を見上げた岡部はさらっと言った。


「行くしかないですかね、北海道に。」

「じゃないですかね。行って損は無いと思いますよ。こちらから、連絡を入れておきましょうか?」


「それは助かります、お願いしていいですか。」


「分かりました。」


「じゃあ一応こちらからも連絡させて貰います。」


「多分連絡とれないと思いますよ。電話に出ないみたいですから。」


「じゃあどうやって連絡するんですか?」と聞くとニコニコして「手紙です。」と言った。

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