第2話学園に通う少女

「あら、そういえば、リーナは第何寮に入寮することになったのかしら?」

「はい、ちょっと待ってください。確かカバンのポケットに…」


カバンのポケットから入寮案内の手紙を開く。


「案内によると、……第8寮ですね。」

「あら、偶然ね。私と同じ寮じゃない。」

「ほ、本当ですか!!お、お姉さまと同じ寮だなんて。」


同じ寮に住みたいと思ってはいたものの、決定権があるのは学校側。

お母様にお願いしたものの希望の寮が定員オーバーだとどうしようもないとのこと。

もしかしたら、学校側がひそかにお願いを聞いてくれていたのかもしれません。

結果的にはお姉様と同じ寮に住む事が出来るようになったので幸せの限りです。


「そんなに喜んでもらえてうれしいわ。」

「当り前です。お姉様とのお泊り会は楽しかったので、もう1度同じ機会が無いかと思っていたのです。」


お姉様とは昔から一緒にいる事は多かったけれど、一緒に夜を過ごす時間はありませんでした。

親同士が仲がいいとはいえ、そこまでは許してはもらえていなかった。

でも、お父様は上目遣いに弱いらしく、数回頼んでみると許してもらえた。


「懐かしいわね。あなたが一緒に居たいと駄々をこねる姿は微笑ましかったわ。」

「あ、あの時のは演技です。お父様から許可を得るための演技だったんです。」

「そうだったの。涙目になってたから本当に離れたくなかったのかと思ったわ。」

「そ、それは、否定しませんが……。」


そう、決してすべてが演技ではない。本当にお姉さまと居たかった。

そのために少しだけ演技をしただけだもの。


「ここで立ち話をするのはいいけれど、そろそろ寮の場所を案内した方がいいわね。」

「案内してもらっていいんですか?」

「当り前だわ。ここで待っていてもらったのに置いていくのも変でしょ?それに同じ寮だもの。」

「ありがとうございます。」


お姉様に案内されて、学校から500メートルぐらい歩いたところその建物に目が入った。


「あの建物が第1寮よ。」

「大きな建物ですね。それに隅々まで清掃が行われています。」

「ええ、綺麗で大きいでしょ。」


目の前の建物は、王宮とまではいかないがそれなりに大きく、広々としていた。


「そして、ここをまっすぐに行くと第2寮、3寮、4寮‥…と進んでいくの。」

「という事は、この道の一番奥にあるのが第8寮ですね。」

「ええ。そして、私たちの自慢の寮よ。」


そう言って、寮の敷地内へと入っていく。

しっかりと草木の手入れもされていて誰が見ても美しいと感じさせられる。


「さあ、中に入りましょう。驚くのはこれからよ。」


ここだけがすごいのではないのよ、と言わんばかりに自信を持っている。

流石お姉さまが住んでいる寮。

それに見合った素晴らしさがある様子。


「まぁ!ロビーがこんなに綺麗なんて一流のホテルみたいですね。」


室内に入ればどこもかしこも輝いている。

しっかりと手入れがされていて、色んな所から光沢が出ていた。


「この寮の設備は、どの寮の中でも1番なの。ただし、どの寮の中でも1番規則が厳しいの。」


お姉様によると、この寮ではすべてが自分たちでしなくてはならないらしい。また、色々な規則やルールがあるらしい。規則やルールに関しては今後寮にて説明する時があるそうなので今は簡単な事だけをとのこと。


説明によると、自分の事だけでなく、寮内外の清掃は全て自分たちでやっているとのこと。

代わりに、清掃に行う機械だけでなく設備のすべてが最新のものらしい。

ただし、寮食については別らしい。

さすがに寮生全員のご飯を用意するのは負担が多いためスタッフさんを雇っているらしい。

これに関しては、自分たちのご褒美としているらしい。


「なるほど。つまり、自分たちが自主的に取り組むからこそ自由が得られるということですね。さすがお姉さまの住んでいる寮です。」

「まあ、それだけではないんだけどね。ただ、8割型はそうね。この寮のみんなが、協力して規則を守っているからこそ学園側からも信頼してもらっているのは確かなことだしね。」


ロビーで話していると、1人の女性が近寄ってきた。

お姉様とは違った雰囲気を醸し出していた。


「あら、サナちゃん、おかえりなさい。」

「ただいま帰りました、会長。」

「マ、マリア会長!?マリア会長もこの寮にいらしていたのですか!?」


どこかで見たことがあると思っていたけど、この学院の生徒会長さんだった。

今日も入学式で壇上に立って挨拶をしていた。


「あら、そちらの方は?見ない顔ね?‥‥そのリボンの色もしかして1年生の方?」

「は、はい。今日から入寮させてもらいます、リーナ・アインベルトです。」

「もしかして、レイン王国の王女様!?どうしましょう。」

「会長、慌てなくても大丈夫ですよ?ね、リーナ?」

「は、はい。どちらかというと、入寮させてもらう立場ですから。」

「そ、そう?それにしてもいきなり恥ずかしいところを見せてしまいました。そういえば、名前も名乗っていなかったわ!ゴホン。それじゃあ改めて、寮長であり、生徒会長のマリア・リーゼリットです。以後お見知りおきよ。」

「こちらこそよろしくお願いします。」


会長さんは面白い方で今後もいい関係を築けそうだった。


「会長、リーナの部屋に案内したいのですけど、部屋の確認をしてもらってもいいかしら?」

「え、えーっと、ちょっと待ってね。」


フロントに戻り、モニターの画面を見ながら手元で何かを操作していた。

そして捜査を終えると、掛けてある鍵のうちの一つをもってこちらに戻って来る。


「リーナちゃんは302号室ね。‥‥そう言えば、サナちゃんの隣じゃない?」

「ほ、本当ですか!」

「リーナったら、そんなにうれしいの?喜んでもらえるのはうれしいわ。」


お姉様と同じ寮というだけでなく、隣の部屋とは。

もしかしたら、運命の赤い糸が本当に存在しているのかもしれません。


「これから部屋に案内しようと思っているけれど、サナちゃんに頼もうかしら。」

「分かりました。私が案内しますね。送られた荷物はもう運んでありますか?」

「業者の方が運んでいるわ。今年は10名程度だったから確認もしているわよ。」

「そうですか。‥…それにしても今年も去年と変わらない感じですか。そろそろこの寮も危ないですね。」

「ええ、設備はいいのだけれど、もったいないわ。」

「お姉さま、何か悪いことでもあるのですか?」

「それがね、人数が少なくてね…。でも、この話は部屋の片づけをしてからにしましょう。」

「はい!そうですね。」



そうしてお姉さまの案内の元自室になる部屋へ向かうことに。




―――――――――――――――――――――――――――――――――――――



部屋の中は、実家ほどではなくてもそれなりに大きな部屋だった。

そして、設備されているものはそこらのホテルと同じほど。


中に入ってみると、数個のダンボールが置いてあった。

といっても、必要最低限のものしか持ってきていなかった。

そのためお姉さまに手伝ってもらうのは気が引けたため自分でやることにした。

静かに着々と進めていくと、あっという間に瀬谷の中は自分好みのものへと完成しきっていた。


その後は一息つくことにした。


トントントン


ドアのノックする音が聞こえた。

そして、私の事を呼ぶ声も聞こえてきた。


「リーナ。少しいいかしら。」

「少し待ってください。」


動やらお姉さまが来ている様子だった。すぐさまドアの前に向かい扉を開く。


「はい、どうしましたか?」

「この後、新入生歓迎会があるの。」

「そんな催しがあるんですね。」

「ええ。毎年の行事らしいわ。」

「それならすぐに準備をしますね」


そう言って、部屋に中へ戻っていく。

するとお姉さまが私の部屋に入ってきた。


「綺麗に片付いているようね。それでどうかしら。」

「はい、とても素晴らしいです。トイレにシャワー室が付いていて、その場所を除いても16畳以上あって、自分の部屋ぐらい使いやすいです。」

「気にいってもらってよかったわ。それじゃあ、303号室の子も呼ぶように言われているから、ついてきて。」

「はい、喜んで!!」


と、隣の部屋に移動した。


トントントン


「レオナさん。少しいいですか。」

「ひっ。ちょ、ちょっと待ってください。」


今朝の私のように驚いた返事が返った来た。

そして、少しして扉から彼女が出てきた。


「す、すみません。最後の片づけだったのでって、ラインハルト先輩にアインベルトさん!?」

「驚かなくていいわよ?それより、私の事を知っているようだけれど自己紹介をするわね。私はサナ・ラインハルトよ。」

「私はリーナ・アインベルトです。教室でもお会いしましたね。」


彼女は私と同じ教室にいた生徒。名前ももちろん知っていた。


「私はレオナ・クライアットです。ラインハルト先輩は初めましてで、アインベルトさんはお昼ぶりです。」

「よろしくね。それでこれから新入生歓迎会があるの。一緒に食堂に行きましょう。」

「そ、そうなんですか。あたしなんかがお二人となんて。」

「レオナちゃん、そんなことないよ。それより、『アインベルトさん』なんて他人行儀な呼び方ではなくてリーナと呼んでください。折角、教室だけでなく部屋が隣同士なのでお友達になりましょう。」

「私もラインハルト先輩より、サナ先輩がいいわね。」

「で、ですが私なんかが、いいのでしょうか?」

「大丈夫。この学園及び寮では、身分の違いなんてないわ。それにね、規則でも同じようなものがあるの。だから安心して。それに、リーナにお友達ができるのは私としてもうれしいの。」

「そ、それなら、これからもよろしくお願いします。」

「はい、ぜひとも。」


一人目の友達ができた。

そして、その友達と共に食堂に向かうことに。


「あら、サナちゃんたちも来たわね。」

「すみません。もしかして最後でしたか?」

「大丈夫よ。みんなもついさっき来たとこだから。それより、始めましょうか。リーナちゃん、レオナちゃんはこっちに来て。」


マリア会長に連れられ、他の一年生と同じ場所に行った。


「これから新入生の歓迎会を始めます。まずは私、この寮の寮長から話があります。この寮の使い方からです。」


と、この寮について大方説明してもらった。


「それでは、寮の説明は終わりとして、今日は、新入生歓迎会ということで、この寮の寮生のみなさんが協力してくれたおかげで、こんな素晴らしい場を作ることができました。なので、上級生、下級生関係なく、はめを外してもいいので楽しみましょう。」


と、声とともにクラッカーが鳴った。


「これから楽しい生活が始まりますね、会長。」

「そうね。サナちゃんと同じ年齢だったらもう1年楽しめたのに。」

「そんなんことないですよ。私からすれば、会長が上級生としていてくれたから楽しめたんですけどね。」

「そうかしら。」


お姉さまは楽しくお話していた。


(何を話しているのでしょう。しかもお姉さまが笑っています。マリア会長も少し妬いてしまいます。)


「リーナちゃん、あっちにおいしそうなケーキがあるよ!?」

「ほんとですか。それなら貰いに行きましょう。」

「うん。」


ケーキに取りに行くことにした。


(お姉さまの分もとってきた方がいいですよね。)

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